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妖狩りの侍と魔剣『斬妖丸』 : 「由井正雪と魔槍『妖滅丸』」(➁弐)" 恐るべき魔槍… "

拙者の見守る前で
由井 正雪ゆい まさゆきと名乗る浪人者と
女中の姿に化身けしんしたあやかしの戦闘が始まった

拙者の腰では愛刀の『斬妖丸ざんようまる』が
相変わらず激しく震えている

これは『斬妖丸』のおそれなのか…
それともよろこびなのか…?
あるいは、あの槍との共鳴作用…?
拙者には…
いずれとも判断がつかなかった

女中の格好をした妖が
着ていた女子おなごものの着物を脱ぎてた
その下から現れいでしは…
体長は尾まで含めれば六尺(約180㎝)を優に超す
いたちの様な姿形をした妖であった

口からは火をポッポッといておる
そして、その妖の最も奇怪なるは
長い前肢まえあし後肢うしろあしとの間に
身体と同じ毛むくじゃらの薄いまくが張られておる
膜は首と前肢の間
後肢と太くて長い尻尾しっぽの間にも張られておった

この姿…
森などに鼯鼠ムササビではないか
だがこの様に大きな鼯鼠がる訳が無い…
やはり正体は妖なるか…?

姿形が鼯鼠に似ておるという事は…

鼯鼠に似た姿の妖は長い手足を伸ばし
膜をぴんと張る事で空中に浮かび始めた
やはり、こ奴は空を飛べる妖か…
これはちと厄介やっかいな相手じゃ…

拙者は由井 正雪ゆい まさゆきと名乗る妖狩りが
他人事ひとごとながらも少々心配になって来た…


********


ようやく正体を現わせしか
妖怪『野衾のぶすま』よ!

大人しくそれがしの手にかかり
貴様のその妖力ようりょくそれがしこすがよい!

油断ゆだん致すな、『妖滅丸ようめつまる』よ!
参るぞっ!


********


やはり同業ゆえ
拙者と同じ様な台詞せりふきおるわ…
拙者は苦笑を浮かべながら
眼前に繰り広げられる闘いを見据みすえた

おおっ!
野衾のぶすま』が自在に宙を飛びながら
口から由井ゆいめがけて
激しい炎を吐き出しおった!
こ奴、炎をもあやつりおるか…

火車かしゃ』の業火ごうかにははるかに及ばぬが
上空からの火炎攻撃…
恐るべし…

しかし…
由井ゆいも負けてはおらぬ
素早い動きで御殿ごてんの屋根を飛び回り
野衾のぶすま』の炎をかわしおる

由井ゆいめ、なかなかの体術…
拙者に引けを取らぬ動きじゃ
彼奴あやつは恐ろしい程の手練てだれよのう…


********


無駄じゃ、無駄じゃあ!
その様な炎ごときっ!
妖滅丸ようめつまる』! 槍車やりぐるまじゃっ!


********


おおっ!
由井ゆいが槍を高速で回し始めた…
野衾のぶすま』の吐き出す炎を
槍の回転で吹き飛ばしておる!

だが、『野衾のぶすま』も高速で滑空かっくう
移動しながら火炎を放射し続けるぞ…
おお…すさまじき熱じゃ…

由井ゆい槍車やりぐるま
この移動しながらの火炎放射を防ぎきれるか…?


********


ふふふ…
なかなかやりおるわい
そうで無くてはその妖の力
うばうにあたいせぬわっ!

だが、長引けばこの屋敷が燃えてしまう…
そろそろ、とどめを刺してくれようぞ!

伸びよ、『妖滅丸』っ!
喰らえいっ! 如意槍にょいそうーっ!


********


な、何とっ!
由井ゆいの叫びと共に
彼奴あやつの『妖滅丸』が伸びた!

有り得ん…
長さ五尺(約150㎝)余りの手槍てやり
五丈(約15m)ほども伸びおった!

それは拙者の錯覚さっかくでは無かった…

事実…
手槍の『妖滅丸』が十倍ほども長さが伸び
由井ゆいの上空を滑空していた『野衾のぶすま』の胴体どうたい
槍の穂先ほさきが根元まで深々とつらぬいておる…

「ぐぎゃおおおーっ!」
野衾のぶすま』の断末魔の叫びがあたり一面にとどろいた

如意槍にょいそうだと…?
意のままに伸縮出来るとうのか…?

妖滅丸ようめつまる』…
何という恐るべき槍よ…

そして、その槍を手足のごとく自在に操る
由井 正雪ゆい まさゆき

この様な恐るべき妖狩りがおったのか…


※【(参)に続く…】

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