パックロッドは何に「パック」されるのか1:前提としてのチケット事情と手荷物区分

自己紹介で述べたとおり、私の釣りは電車やフェリーと自転車を組み合わせるか、飛行機を用いた遠征がメインになので、4ピース以上のマルチピースロッド以外は選択肢になりえません。いわゆるパックロッドってやつです。

パックロッドの本懐って何でしょう。それは移動時の性能にあります。いかに負担なく、安く、楽に釣り場まで辿り着けるか。言い換えれば何に「パック」できるのか、という点が最重要です。そのあたりを飛行機移動に焦点を当て、数回にわたって考えていきたいと思います。なぜかというと航空機は公共交通としてもっともルールが厳格で制約が多いからで、したがって飛行機移動で優秀なロッドは鉄道でも船旅でも優秀です。これは保証します。

追加料金だらけの現代フライト事情

さて、かったるいですがこの話は現代の飛行機事情の話から始めなければなりません。世の中には遠征用パックロッドを謳っておきながら、ちょっと真面目に開発したのか疑わしい製品がたくさんあります。それはたぶん、企画者がすごいお金もちか、旅費がぜんぶ他人もちか、もしくは飛行機で移動した経験が乏しく、現代のルールと実情に疎いからじゃないかと想像しています。

LCCの台頭から20年以上が経ち、世界の航空券事情は大きく変化しました。JALやANAはエコノミーでもいまだに1チケットあたり2個まで無料で手荷物が運べ、うち1個は機内に持ち込むことができますが、こういったレガシーを維持しているキャリアは世界でも希少種。航空会社の多くはLCCに近接しつつあります。この現実をまず前提として叩き込む必要があります。

具体的な例として、デルタやアメリカン、ユナイテッドといった米国大手のエコノミーは、機内持ち込み1個のみ無料、預け入れ手荷物はすべて有料というチケット種別がもはや過半数といっていいと思います。これがLCCになると、機内持ち込みも預け入れもすべて有料、さらにはお金を出しても機内持ち込みが許されないチケット種別まで増えてきました。

したがって、かつての海外釣行では2個あった無料枠のひとつをロッドケースに使ったりしていましたが、そんな優雅な旅行は前世紀の思い出、いまはひとつでも個数を減らすよう「パック」する必要があるということです。この現代的な要望を踏まえていないパックロッドは正直、虚しいなーと思わざるを得ません。

手荷物は大きさ別に4カテゴリ

もうひとつかったるい前置きを書かなければならないのが、さっきも触れた手荷物区分のことです。われわれが飛行機に搭乗する際、その荷物はサイズと重さによっていくつかのカテゴリに分類されます。釣具が重さで問題になることは滅多にないので度外視すると、サイズが大きい方から「超過手荷物」「預け入れ手荷物」「機内持ち込み手荷物」「身の回り品」の4カテゴリ。

まず「超過手荷物」は、たとえばANAだと3辺の合計が158cm以上292cm以下の荷物のこと。いわゆるバズーカが該当します。料金は片道2万円くらい。経済的負担も肉体的疲労も厭わず、釣りにおける性能こそが至上命題という方はどうぞこんな文章は読まず、バズーカに2ピース詰めてどこでも行かれたらいいと思います。うらやましいです。

次に「預け入れ手荷物」。チェックイン時にカウンターで預けて、到着後ベルトコンベアに乗って出てくるやつです。これがもっともレンジが広く、「超過手荷物」でも「機内持ち込み手荷物」でも「身の回り品」でもない手荷物はおよそこのカテゴリに入ることになります。釣り人にとってはスーツケースと3辺の合計が158cm以下のロッドケースが該当します。先述のとおりチケット種別によって無料ぶんは0個〜2個、有料の場合だいたい1個35ドルのところが多いと思います。

機内持ち込み手荷物」、文字通り機内に持ち込んで頭上のロッカーに入れるやつです。たとえばANAだと100席以上の機体の場合3辺の和が115cm以内、かつそれぞれの長さが55 × 40 × 25cm以内。これに該当する小型のスーツケースはたいてい機内持ち込み可能とかキャリーオンとか謳われているのでわかります。また棒状のものに関しては別途、長辺が60cm以内というルールがあります。

身の回り品」はポーチやバッグの類で、ほぼすべての航空会社が無料で機内に持ち込むことを許可しています。規定値を持たない航空会社が多かったのですが、近年巨大なバッグを身の回り品だと主張してタダで持ち込もうとする客が出現し、3辺の合計が80cmまでとか、JetBlueだと3辺がそれぞれ43.2 x 33 x 20.32cm以内とか、明文化するキャリアが増えてきました。経験上、前の座席の下に収まるサイズなら怒られないです。中型のバックパックくらいでしょう。

飛行機遠征においては、これらの4つのカテゴリを組み合わせて、なるべく安価に、安全に、そして疲れない最適解を導き出せるタックル選びがキモになります。というか追加料金なんてなるべく払いたくないし、大荷物も避けたい、そのためにはパックロッドしかない、というのが私の本音です。次のエントリでは具体的にロッドを何に「パック」するのか考えます。

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