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回収したペットボトルキャップの洗浄→チップ化|大学生のアップサイクル物語#2

前回は、学生サークル「Müll(ミュル)」のビジョンとアップサイクルの取組のスタート地点までの道のりを簡単に紹介したが、ここからは実際に試行錯誤の様子を記録していくことになる。

ちなみに、現在も試行錯誤の真っ最中。この連続記事は、サクセスストーリーをお披露目するために書いているわけではない。そもそもうまく行くかわからないから自慢げに話せることなんて何もない。
暗中模索の中、たまに光が見えたような気がする程度の日常を綴っているぐらいのものであるため、あまり期待しないで見ていただきたい。


STEP2:ペットボトルキャップの洗浄

洗浄後のペットボトルキャップ

ペットボトルキャップは、様々な場所に回収ボックスが設置され、様々な方法で回収されている。
スーパーマーケットなどのリサイクル資源回収ボックスは、買い物ついでに各家庭から持参してもらうことを想定しているだろう。学校教育機関や社会福祉協議会などでも同様に、各家庭で分別され、貯められているキャップを持参してもらうような回収方法をとっていることが多い。

それに対しMüllが行っている回収は、ゴミ箱の隣に回収ボックスを設置することで、その場での分別を促すものだ。そのため、その場で消費された飲料のペットボトルキャップをそのまま回収することになる。
つまり、何が言いたいのかというと、洗浄もされず、中身の飲料等が付着したままの状態であるため、”汚い”のだ。

各家庭から持参してもらう場合は、あらかじめキャップが洗浄済みであることが多い(もちろん全てではない)。
それに対し、その場で消費された飲料のキャップを回収する場合は、洗浄済みであることがほとんどない。回収ボックスに貯めたまま長い時間放置された場合はカビが生えてしまう。
だからこそ、まずは「キャップの洗浄」から始める必要がある。

Müllの学生たちは、塩素系の漂白剤を使用し回収したキャップの洗浄を行った。このとき、空気を循環させるなど安全への配慮を欠かしてはならない。学生たちはこの作業を屋外で行っていた。
写真にある容れ物は、たまたまボランティアセンターにあった虫かごなのだが、小さい虫かごで洗浄できるキャップの量には限界があるため、今後大量に集めたキャップの洗浄をどのように行うかも検討していかなければならない。

ひとまず、回収したキャップのほんの一部の量ではあるが、乾燥までしっかりと行い、キャップの洗浄作業は完了した。

これで準備完了!いざ、アップサイクル!

と言っても、すぐ何かのモノに生まれ変わるわけではない。
そもそも、ペットボトルキャップをそのままの形で使うことは考えていなかった

アップサイクルとは、別のモノのとして新たな価値を与えることだが、ペットボトルキャップをそのままの形で使用することには限界を感じていた。

もちろん「キャップ野球」など、ペットボトルキャップの形状を活かした画期的な取組はある。
ただ、その取組みで消費されるペットボトルキャップは非常に少なく、資源として循環させるための一助になるとは言い難い。

ペットボトルキャップを用いたモザイクアート等も、学校の文化祭などで頻見するが、それらの作品はあくまでも、ある限定的な期間、特定のイベントなど、非日常を彩るものになっている。
つまり、それが終われば解体され、ペットボトルキャップに逆戻りしてしまうのだ。

もちろんそこにも価値があるわけだが、この活動ではペットボトルキャップが形を変えながらも、人々の”日常”に入り込み、生活の一部となるようなモノをつくっていきたい。
人々のすぐ近くで環境問題への「問い」を発信するような、そんなモノにペットボトルキャップを生まれ変わらせていきたい。

STEP3:ペットボトルキャップのチップ化

そこで、まずは様々な形状に変化させやすいようにペットボトルキャップを「チップ」にしていくことにした。

熱を加える際に溶けやすくなるよう、小さく切断していけば良いわけだが、そうは言ってもキャップが立体的な形状のため、加工がなかなか難しい。
もちろん専門的な機械があるわけでもなく、特別な備品を購入できるだけの資金があるわけでもない。あくまでも、学生たちが普段もっているもので行える加工方法を検討していった。

また、今後「子どもたちと一緒に取り組めるようなワークショップ」の開催も目標にしていたため、「特別な機械を使わないこと」はその意味でも重要になっていた。そして言わずもがなではあるが、加工工程における「安全性」も重要な検討ポイントだ。

それらを踏まえて、いくつかの方法を試行錯誤してみたので紹介したい。

加工方法①:花形

まず最初に試してみたのが、この方法である。
加工の流れは写真でご確認いただきたい。ちなみにこの加工は、ハサミを使って行った。

ハサミの刃を直角に入れていく
全ての切込みを入れ終わると花びらのように開く
切れ込みの底部にハサミを入れていくとチップになる

この加工方法を試してみて、以下のような課題を確認できた。

  1. スクリューキャップであるため、キャップの内側に凹凸がある。この中で厚みがある(凸)部分は、その上からハサミの刃を入れても切断しにくい

  2. 「1.」の理由から、切断時に強い力を必要とするため、安全性に欠けるとともに、ハサミへのダメージがある

  3. 「1.」の理由から、加工に時間がかかるかなり疲れる

もちろん高品質な道具を使うことで解消される課題もあるが、もう少し楽な方法を探してみたい。

凸部分の切断が大変

加工方法②:渦型

続いて「花形」の加工方法を改良し、「渦型」の加工方法を試してみた。
花形の課題であったキャップ内側の凸部分を交わしながらハサミの刃を入れていくような方法である。

凸部分を避けて直角に切り込みを入れる
ここからが花形との違い。直角に入れた切り込みの途中から、凸部分を避けるように横に刃を入れていく。
1周分の、横に長い素材が切り取れた
2周目も同様に進める
2周分の素材を切り出せた。あとはこれを小さく切っていくだけである。
チップ完成!

「花形」では、凸部分を強引に切断していたため強い力が必要だったが、この「渦型」では、凸部分を避けながら切り込みを入れていくため、強い力を必要としない。その分、時間もかからず、疲れが軽減される。そして安全性も向上する。

さらに、横に長い素材を切り出してからチップ化するため、チップサイズを調整することも簡単になった。より小さいチップを簡単につくっていくことができる。どうやら現時点では「渦型」の方法が良いようだ。

ひとまずチップ化が完了!

チップ化の工程を「花形」から「渦型」に改良することで、作業時の安全性が向上。作業時間も短縮することができ、負担軽減にもつながった。

ちなみに、各メーカーや商品によってペットボトルキャップの構造は微妙に異なる。水のペットボトルのキャップは比較的薄く感じられたが、加温販売可能なペットボトルのキャップは厚みがあり、チップ化が大変だった。
今後キャップ自体の”色”という個性を生かしていくことも重要なポイントになるため、様々な飲料のペットボトルキャップをチップ化していくことになるのだが、可能な限り、厚みのあるキャップは避けて加工していくことをオススメしたい。

ちなみに、キャップの側面だけをチップ化しているのには理由があるのだが、それは次のステップ(別記事)で紹介したい。

おまけ

当初、学生たちが持っている(追加購入の必要がない)もので作業を進めていこうと、ハサミを使ってチップ化の作業を行っていた。
しかしある時、作業負担と時間短縮のため、やはりニッパーを使った方が良いのではないかと思った。

早速、大学近くの100円ショップでニッパーを購入。
実際にキャップを切断してみた。いや、「切断をしようと試みた」が正しい。

キャップには、切断を試みた跡だけ残った…

つまり、切断できなかったのだ。

こうなるかもしれないとは思いつつ、「安さ」を優先し、この製品を信じた。
しかし、その期待は見事に裏切られる。

力を込めても全然切れないじゃないか!

「安かろう悪かろう」
先人が残した言葉は偉大だ。

私は110円という勉強料を支払い、ニッパーに見せかけた金属を手に入れ、その言葉の意味を身をもって体験したのだった。

次回以降は、今回加工したチップに熱を加えて溶かしていく作業について紹介していく。

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