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現物ビットコインETF承認へ

 小田玄紀です

 アメリカ時間の2024年1月10日に米国SECは現物ビットコインETFを承認しました。ブラックロックやフィデリティなど申請していた11社のETFについて全て承認される形になりました。

 これまで何回か承認可能性が示されては却下されており、また、昨日にはSECのX(旧Twitter)アカウントがハッキングされて現物ビットコインETF承認されたという投稿がされた(これはハッキングではなく予約投稿だったという意見もあります)こともあり、ビットコイン価格が上下しましたが、今回は正式の承認となりました。

SEC.gov | Statement on the Approval of Spot Bitcoin Exchange-Traded Products

 なお、ビットコインをはじめとする暗号資産全般に対して否定的なポジションを持つSECのゲンスラー委員長は現物ビットコインETF承認については認めたものの、引き続き暗号資産についてはリスクがあるということをコメントでも表明しています。

 コメントの内容を見ると、ゲンスラー委員長が気にしている点がよく理解できますが(また、これは多くの暗号資産に対して懐疑的な人たちの見解を集約しています)、この大半が既に解決しているまたは解決に向けた動きを確実に歩んでいるものであると感じました。以下にいくつかピックアップしていきます。

1.暗号資産は犯罪資金に使われるリスクがあるということ
 これは以前から言われていることです。匿名性が高い暗号資産の場合はテロリストや反社会的勢力が活用することがあるとされています。また、ハッキングにより北朝鮮やロシアなどに暗号資産が流出し、これがミサイル開発資金に回されているという見解もあります。

 この点については、少なくとも日本で金融庁登録の暗号資産交換業者においては大きな改善及び対応がされています。

 マネーローンダリングについては暗号資産業界においては最重要対策事項であり、特に昨年6月1日に改正犯罪収益移転防止法の施行を受け、FATFトラベルルールに基づく対応を主要先進国で先駆けて日本では実施しています。

 暗号資産の移転を行う際には、送付人・受取人の確認が義務付けられており、この確認を受けて初めて暗号資産の移転が出来るというものです。

 また、暗号資産というとハッキングのイメージがつきまといますが、実は日本では2020年以降は国内暗号資産交換業者からのハッキングは1件も発生していません。これは2019年以降に顧客預かり暗号資産は実質100%コールドウォレットでの管理が義務付けられており、ハッキング対策が徹底されています。

2.流動性が減少することで大きな価格変動リスクが生じること
 暗号資産の価格変動リスクについては以前より指摘がされていますが、ボラティリティに最も影響をするのは流動性です。

 上の図は流動性の重要性をイメージ図にしたものですが、流動性が低いとまとまった量の暗号資産を売買した場合に、価格が暴騰・暴落してしまうリスクがあります。今でも一部の暗号資産については数千万円または数億円単位の発注をすると大きく価格が崩れる暗号資産も存在することは事実です。そのため、流動性が高いことは価格安定性において極めて重要な意味をもちます。
 
 それでは今、暗号資産の流動性はどうなっているのでしょうか。

暗号資産価格、チャート、時価総額 | CoinMarketCap

 CoinMarketCapより抜粋したものになりますが、2024年1月11日9時45分現在のビットコインの1日あたり取引高は7.3兆円になります。イーサリアムは4.2兆円です。

 これがどれだけの数値かというと、平均的な東京証券取引所の1日あたり出来高は3.8兆円です。つまり、ビットコインとイーサリアムの1日あたり出来高は東証上場企業の全企業の取引量よりも高いという事実があります。

 現物ビットコインETFの取引開始は明日からなので、明日以降により取引高が増えていく可能性がありますが、現物ETFの取引開始前の段階で、既に東証上場企業の全企業の取引量を超えています。もちろん将来的にどうなるかは定かではありませんが、少なくともここ数年のトレンドでみると流動性については懸念しなくても良い状態にあることが分かります。

 暗号資産業界の課題への対応はここ数年で急速に行われたものであり、この認識が正しくされていないこと、また、暗号資産の性質を鑑みた場合にノンカストディアルウォレットなどでの送受金が出来てしまい、ここには監視の目が行き届かないことなどの課題があることは事実です。

 ただ、業界関係者の多くが1つ1つ課題に対して向き合っていることは事実であり、その成果の1つが今回の現物ビットコインETFの承認に繋がったと考えています。

 なお、今朝も多くのメディアから問い合わせがありましたが、「日本ではどうなるのか?」という点を多くの方が注視しています。
 
 こちらはまだ確定的なところはありませんが、仮に今回アメリカで承認された現物ビットコインETFについて、日本でも届け出がされた場合には日本でも当該ETFの売買が可能になってくるかもしれません。

 また、その際には海外発行のETFを日本の投資家が購入することになると、日本から海外に資産が流出してしまうことに繋がりますので、それであれば国内発行型ETFを求める声も様々なところから出てくる可能性があります。

 さらに、ETFの場合は金融商品のため、個人の税金については金融所得すなわち申告分離課税になる蓋然性が高く、その場合は個人の暗号資産取引の税制についても現状のままでよいのかという意見が出てくることも考えられます。

 まだ不確定な要素は多々ありますが、今回の米国での現物ビットコインETF承認について、他山の石としてみるのではなく、暗号資産業界に関わる当事者として、多くの方の意見を聞きながら、これを踏まえてどのような行動をしていくかを考え、そして、形にしていきます。

 2024年1月11日 小田玄紀



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