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『最高値』という言葉が意味するもの

 小田玄紀です

 2024年2月22日に日経平均が1989年12月に記録した3万8915円を更新し、3万9098円となり最高値をつけました。”実感のない株価”という意見や”国民に恩恵がない”などという意見もありますが、それでも株価は企業の将来性を反映したものですので、今後の日本がよりよくなる可能性を感じられる良い事象だと思います。

 日経新聞のこのグラフが非常に分かりやすく示していますが、1989年12月の日経平均最高値時はPERが61.7倍でしたが、現在は16.5倍です。PERは何倍が適正かというと一概には言い難いですが、一般的には20~30倍を超えると割高という目線があるとすれば(業種にもよりますが)、1989年のPERはやはり割高という印象はありますが、現在のPERは適正だという捉え方がされると思います。

 PBRも以前は5.6倍だったのが1.4倍ですので、この点でも過剰感は感じさせません。「企業が内部留保を貯めこみすぎているのは問題だ」という指摘もありましたが、それでも内部留保があってこその適正PBRですので、その観点でも現在は多くの企業が健全な財務基盤を構築できていると考えればよいことなのではないでしょうか。

34年振りの株価最高値更新について|神田潤一 (note.com)

 今回の株価最高値更新については、神田潤一金融庁政務官が非常に分かりやすい考察をまとめているため、こちらに詳細は委ねたいと思います。私も神田先生の考えと共通するところは多く、特に「実感に乏しい」という意見は大いなる伸び代だと考えています。今後、All Time Highが続くのかが期待されます。

 なお、株価が最高値を更新すると、「これからは下がるリスクが高い」と考える人も一定数いると思います。ここで大事なのが最高値をどう捉えるかということです。

 多くの人が過去との比較で現在、そして未来を捉えようとします。そこに意味がある時もあれば、意味がない時もあります。仮に、未来が過去と相関関係があり、歴史が繰り返すものだとした場合には、最高値を更新したら後は下がることになります。ただし、時にはそれが養老孟司先生のいうところの『バカの壁』ということもあります。つまり、本当はそこに壁なんてないのに、勝手に壁があると思ってしまう現象です。

 これはアメリカのダウ平均株価の推移です。1989年12月から14倍に上昇しています。リーマンショックなど不況があり株価が下落する局面もありましたが、それでも安定的に米国株価は上昇しています。これを見ると、少なくとも過去の株価最高値と現在そして将来の株価最高値には相関関係が低いということは分かります。

 また、これは日本円建てのビットコインのチャートになります。2021年に一度最高値として776万円となりましたが、今年2月になりこれを超えました。チャートを見るとこれが確認できます。また、これまでの傾向を鑑みると「ここから下がるのではないか」と考える人が一定数いるかもしれません。

 ただ、同じビットコインのチャートを米ドル建てでみたものが上記になります。米ドル建てだとビットコイン最高値は69000ドルであり、現在はまだ51000ドル程度です。つまり18000ドル程度の上昇余地がまだあることになります。

 2021年12月は1ドル115円程度でしたが、現在は1ドル150円程度です。この差分が現れており、つまり日本円建てのビットコイン価格が上昇しているのは、ビットコインの価格が上昇したことだけでなく円安になっていることが大きく寄与していることが分かります。

 そしてこれがビットコインの取引ペアとなる通貨ですが、多くがUSDまたはUSDに連動した通貨であり、日本円取引はごく僅か(1%未満)のため、ビットコインチャートで日本円建てのチャートはあまり影響がないことが分かります。

 つまり「最高値」といっても、何に基づいたチャートなのかによって見え方や意味が変わってきますし、あくまでも過去との対比の1つの指標に過ぎないということになります。

 なお、アメリカの株価がここまで大きな増進を遂げた理由は、間違いなく産業変革を大胆に実現したことだと思います。特に直近ではNVIDIAが注目されています。

 NVIDIAの2023年11月~2024年1月期の四半期決算は売上221億300万ドルで純利益が122億8500万ドル(約1兆8400億円)でした。時価総額は1兆8300億ドル(約275兆円)となり世界4位の時価総額になりました。

 NVIDIAは生成AI等に使われるGPU半導体が非常に好調であり、これからの産業で半導体が持つ役割・価値は極めて大きなものになります。これまではアプリが担ってきたサービスを半導体が担うことになり、このことで処理速度やネットワーク環境が大幅に変わってきます(たとえば翻訳などもこれまではアプリで処理していたものが半導体が処理することで、ネットに繋がらない環境でも翻訳がされ、また、端末で処理されるためスピードがさらに向上されます)。

 日本政府も半導体産業の育成に力を入れているのは、まさに半導体が様々な産業発展のキードライバーになるからであり、株価が好調な中で成長産業を育成することが中長期的な産業発展に繋がるためです。

 日経平均がこれからどうなるかを正確に見通すことは困難ですが、大事なことは『最高値』という言葉の意味を多角的に捉え、この状況を踏まえてどのように将来の成長のために動いていくかであると思います。

 2024年2月23日 小田玄紀

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