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世界の森林と日本の森林(その10)by 立花吉茂

地球の砂漠と砂漠化
 地球が砂漠化している、とは最近よく聞く言葉である。少し理屈をこねるようだが、砂漠化とは一体どのような状態を言うのか、またその緑化はなぜ必要なのか、充分議論しておいた方がよいのではないのか、と考える。日本人は、木を植えれば育つと考えがちである。降水量や土壌の不都合で育たないところもあるし、たとえ育っても、一種類の木を植えたために京都の北山のように自然が壊される場合もある。
 京都の北山は、元来、多数の種類が組み合わされた自然林であるのに、たった一種類の木を植えたために自然に反する状態になったのである。
 もし、草原が自然であるところ(極生相)に木を植えたらどうなるだろうか。失敗してしまうのは論外としても、そこに豊かな森林ができて、ユートピアが実現するだろうか? また、昔から砂漠であったところに木を植えて、どの程度成功するだろうか、あるいは成功して、予期したとおりのすばらしい土地になるだろうか? これをはっきりさせておかないと、木を植える、という作業は結果がわかるまで半世紀以上かかるのであるから、50年も100年も後になって、しまった、ということにならないか、慎重でなければならない。百年の計をあまり単純に考え、植えれば良いのだ、理屈を言うな、というのは、昔の日本軍人の口癖であったことを思い出す。

自然の砂漠とは?
 数万年または数十万年以前から、人為がなくて、樹林や草原のできなかった荒れ地を砂漠と呼んでる。そこは砂地の場合もあれば岩石地帯の場合もある。森林や草原でなくても、そこは自然の生態系が存在する。ごくわずかな草やサボテンのような多肉植物などが散在する場所もある。
UNESCO(1973)の発表した世界の植生型によると、荒原と亜荒原地帯を
「疎林帯」低木林、矮小低木林
「草本帯」
「極荒原」岩石極荒原、砂地極荒原に分類している。
吉良(1947)の気候類型と植物社会の類型によると、乾燥気候(B気候)乾湿指数7~5をサバンナ気候、5~3をステップ気候、3~0を砂漠気候としている。
 われわれが緑化協力をしている山西省は乾湿指数5以下である。
 完全な砂漠地帯でも、オアシスがあったり、川や伏流水が存在したりしているから、局部的には緑は存在する。しかし、全体的に眺めて砂漠地帯には森林がない。ただし、暖かい地域の高い山では、垂直分布でわかるように、蒸通発量が減るから、降水量が少なくても、頂上付近を除いて森林ができることがある。
(緑の地球56号1997年7月掲載)

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