見出し画像

道路大渋滞!! どうする黄土高原の人々 by 前中久行(GEN代表)

======================
 初期の現地ツアーはハプニングが頻発したようです。2010年以後になっても(ここ数年は現地へ行けていないのですが)、予期しないことがしばしば発生しました。交通渋滞や通行止めといった道路に関することが多いのですが、その時の現地の人々の対応はとても興味深いものです。
======================
 初期の現地緑化ツアーでは予期しないことが頻発したことが高見邦雄さんの黄土高原レポートに窺えます。https://blog.goo.ne.jp/takamik316
 
 ハプニングが起きた時の現地の人々の行動は、その地域の社会を理解するヒントになります。

 2010年前後のハプニングの多くは交通渋滞や通行止めなどです。当時は中国の経済が大発展中で道路整備が追いついていない状況でした。盛んに道路の新設や拡幅が行われました。道路片側を交互通行にして工事すればと思うのですが、全線通行止めにして一気にということが多いのです。このため周辺の迂回路に車が集中して大渋滞がおこりました。GENの活動地で影響を受けたのが霊丘県中心部と南天門自然植物園を結ぶ唐河渓谷沿いの一本道です。順調にいけば50分で通過できるところを5時間かかってしまったツアーもありました。

 対向車線を使っての追い越しについては日本と習慣が異なるようです。車は右側通行です。大型貨物車は右側車線から対向車線へはみ出してくることはまずありません(写真)。

いっぽう乗用車は対向車線をつかって大型貨物車の列を追い抜いていきます。対向車線なので前方から車が来ます。その時は右側車線の大型貨物車が隙間をつくって乗用車を本来の車線に入れてくれます。入ることに対して嫌がらせをすることはありません。乗用車は対向車線を向かってきた車が通過した後、再度左側の対向車線を走って、右側車線に並んでいる大型貨物車の列を抜き走ります。大型貨物車の行動はみごとに統制がとれています(現行交通規則では対向車線の通行は禁止されているようです)。

 道路が大渋滞してほぼ車が止まってしまうと、何がおこるか? 周辺の村から即席麵や軽食、お湯ポットを積んだ三輪車が出てきます(写真)。周辺の村が潤うとともに、渋滞に閉じ込められている人々の最低限の飲食は確保されます。即席麵とかお湯の値段きいておけばよかったなぁ。

 渋滞の最前線の車集団に巻き込まれてしまった時に車窓から見ていると、運転手同士が外に出てどの車をどの位置に動かして開通させるか相談しています。身振りであと数センチ寄せろというように示しているようです。「それは無理だよ」とか「やってやるからオレの技をみておけ」とか答えているようです。ともに冷静な態度です。怒声がとんでいるという状態ではありません。原因はなんであれ、同じく渋滞に巻き込まれた以上は運命共同体の一員として相互に協力して早く抜けだそうということです。これをみたツアー参加者が、「これこそ民衆民主主義だ」と感想を述べていましたが、私もまさにそう思いました。

 南天門自然植物園へは山中を通る別ルートが整備されて大規模な渋滞はなくなりました。以下のハプニングはこの道路でおきました。
 南天門自然植物園は、放牧や柴かりの停止で、とくに植樹をしなくても植生が良好に回復した成功例で、大同でのツアーの定番訪問地でした。見学中に激しい夕立に見舞われたことがあります。植物園と国道の間には川があり沈下橋(橋というよりも道路の上を常に川が浅く越流)がかかっています。バスが国道へ戻るためにはこの沈下橋をわたらなければなりません。増水前に大急ぎツアー参加者を集めて退却しました。念のため岸崖下の唐河渓谷道をさけて山越えの道路に経路変更しました。ところが途中の小さな渓流で土砂があふれて道路が塞がっていました。時間とともバスの後ろに車列が延びていきます。その時、道路脇で叫ぶ声が聞こえました。「重機で土砂を除けるから、車1台20元払うことに同意しろ!」と言っています。しばらくすると重機がやってきて土砂を除けて無事開通。ツアーのバスも(喜んで)20元払って通過しました。文句をつけている車はないようでした。人々の自助解決の例として強く記憶に残っています。

 もちろん自助努力ですべてを解決することを良しとするのではありませんが、黄土高原の人々の底力を感じた事例です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?