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楽譜のおはなし

皆さんは普段、どのように楽譜を選んでいますか?
安い楽譜、解説が充実している楽譜、見やすい楽譜…
色々な選び方があると思います。


今回は、オーケストラの楽譜についてのお話です。


楽器屋さんの楽譜売り場に行くと、
様々な出版社の楽譜が並んでいます。
国内版では全音、音楽之友、日本楽譜出版社…
海外版ではオイレンブルク、ドーヴァー…
といった出版社が多いかと思います。
色々な楽譜があって迷ってしまいがちですが、
今回は確実な楽譜を選ぶ手順をご紹介します。


①初版の出版元を調べる
作曲家が出版社に手書きの楽譜を持ち込み、
出版社が印刷・出版することで作品が広まります。
最初に作曲家が楽譜を持ち込んだ出版社こそ、
その曲の楽譜の元祖になります。

②改訂の歴史を調べる
次に、初版以降に出版された楽譜の有用性を調べます。
ベートーヴェンがかなり良い例だと思いますが、
初版はブライトコップ社から出版されましたが、
自筆譜に書かれている内容の取りこぼしが多く、
後にベーレンライター社から校訂版が出版され、
ブライトコップ社からも校訂版が出版されました。
この場合、初版よりも改訂版の方が
作曲家の意図をより反映したものと言えます。

③有用な楽譜を比較する
引き続き先述のベートーヴェンを例にすると、
ベーレンライター版とブライトコップ新版の
2つの校訂版が存在するわけですが、
校訂作業を行なった人物が異なり、
校訂の際に用いた史料の優先度もそれぞれ異なるため、
同じ曲であるにも関わらず大小様々な差異があります。
その場合は、音楽学的な観点で優れているか、
実用的な内容になっているかなど、
最終的には演奏家自身の判断に委ねられます。


といった手順を踏めば、使う楽譜が決まると思います。
ベートーヴェンは非常に分かりやすい例でしたが、
初版の出版社が他社に吸収されて社名が変わったり、
初版の出版社が倒産して他社から復刻版が出たり、
ルーツを辿りにくい曲もたくさんあります。
その場合でも、元にした史料に関する情報が
楽譜のどこかに書かれているはずです。

より忠実な楽譜で作曲家の意図を汲んで演奏したい方は
是非、楽譜のルーツを探ってみてください!

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