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ことばと政治文化に対峙する、9月前半のイベントをまとめました!

みなさんこんにちは!ゲンロンのアルバイトスタッフの青山俊之です。僕の専門は言語人類学と呼ばれる分野で、雑にまとめれば「あらゆることばと社会文化の関係を研究する」、いわば言語を中心とした文化人類学です。そんな僕が言語人類学を専門としている師から引き継いだことばが、「対峙する」です。

研究では「調査する」、「分析する」、「考察する」といったことばがよく使われます。こうしたことばには、客観的に、実証的に、あるいは論理的に「研究する」というスタンスが強調されています。けれども、人類学的な視点で、あるいは「今ここ」で起きるひとつひとつの出来事の現実――偶然と必然の交叉――を捉える人文学的な視点に立つのであれば、その現実で生きる自分や他者との「対峙」が欠かせません。

対峙するとは、複雑な現実やあいまいな関係と丹念に向き合うことを意味します。9月前半のゲンロンカフェでは、「ことばと政治文化」と対峙する気合いやきっかけとなるイベントが開催されます。読書の秋に向けて、知を味わうイベントをまとめてご紹介しましょう!

9月前半のゲンロンカフェ

9月4日 (日) 13:00 - 15:30
川原繁人 × 荘子it × 吉田雅史
フリースタイル言語学ってなんだ?これだ!──ラッパー、言語学者と出会う

本イベント「フリースタイル言語学ってなんだ?これだ!──ラッパー、言語学者と出会う」では、「異端」と噂の言語学者・川原繁人さん、「自由」に音色と声を轟かすラッパーの荘子itさんと吉田雅史さんをゲンロンカフェにお迎えします。学術的な「言語学」からすると一見「異端」に思えるキーワードが川原さんの著作『フリースタイル言語学』に並びます。「日本語ラップ」に、「メイド喫茶」「ヨガの呼吸」「ポケモン」、そして「ドラクエ」。ですが、それは「誰しも」がどこかでは出くわす、馴染みのある話題の数々ではないでしょうか。

学術的に広く知られている「言語学」は自然科学的に「言語」のメカニズムを探究するのが主流です。そんな近代的な言語学を切り開いたソシュールは「社会の中にある記号」としての「言語学」を語っていました。だとすると、川原さんの言論が「異端」だとされることには、奇妙な逆説があるのかもしれません。

本イベントにはラッパーとしてジャンル横断的に言葉や音と向き合ってきた荘子itさんと吉田雅史さんを迎え、ゲンロンカフェお馴染みの「フリースタイル」として異分野の掛け合いを企画しました。身近だけども、捉えがたい、私たちにとっての「言葉」や「音楽」と新しく出会い、音とリズムを味わいにぜひ会場までお越しください。

9月5日 (月) 19:00 - 21:30
磯部涼 × 辻田真佐憲 × パンス(TVOD)
安倍元首相射殺事件はテロなのか──暴力と煽動の日本近現代史

初対談となるライターの磯部涼さんと近現代史研究者の辻田真佐憲さんに加え、テキストユニット「TVOD」のパンスさんをお招きし、安倍元首相射殺事件から暴力と社会の関係について考えるイベント「安倍元首相射殺事件はテロなのか──暴力と煽動の日本近現代史」を緊急開催!

安倍晋三元首相が参議院選挙期間の奈良県での遊説中に射殺されてから約1ヶ月半が過ぎました。事件発生以来、メディアやSNSでは、安倍氏や自民党をはじめとする政治家と統一教会の関係、統一教会が行ってきた霊感商法や高額献金についての問題が取り沙汰されています。

ライターの磯部さんは、昨年刊行された著書『令和元年のテロリズム』で過去の陰惨な事件の系譜をたどられてきました。『新潮』2022年09月号には「安倍元首相射殺事件──令和四年のテロリズム」を緊急寄稿し、本事件が「テロ」として与えた衝撃と影響を磯部さんは考察してきました。一方、近現代史研究者の辻田真佐憲さんは、当時現職だった犬養毅首相が暗殺された五・一五事件の際、実行犯の海軍将校らに同情が集まり減刑嘆願運動が起こったことが、のちの二・二六事件の引き金のひとつになったことを挙げ、暴力による煽動に対して冷静さを保つことを訴えかけています。さらに、『年表・サブカルチャーと社会の50年 1968-2020〈完全版〉』などの年表制作で知られるパンスさんには、戦前から現在にかけてのテロ年表を作成いただき、会場と配信(シラスのみ)で配布予定です。ぜひ会場でプリント版を手に入れてください。

安倍元首相射殺事件を起点に暴力や扇動を引き起こす歴史・社会文化を考える本イベントにどうぞご期待ください!

9月7日 (水) 19:00 - 21:30
川添愛 × 古田徹也 × 山本貴光
なぜあの人と言葉がかみ合わないのか──あやふやさと責任をめぐって

作家で言語学がご専門の川添愛さん、東京大学准教授で哲学者の古田徹也さん、東京工業大学教授で文筆家・ゲーム作家の山本貴光さんにお集まりいただきます。「なぜあの人と言葉がかみ合わないのか」と題した本イベントのテーマは、何気ない日常に溶け込む「ことば」と「倫理」、あるいは「責任」です。

今回のイベントの座組みの面白さは、登壇者の経歴とその相違です。というのも、川添さんは理論言語学や情報科学領域をまたぎながら、さらに日常のことばの不思議を書きおろす、ことばの使い手としての作家でもあります。一方で、古田さんは論理学を駆使して反哲学を展開しつつも日常のことば・遊びから新たな言語哲学を展開したウィトゲンシュタインを専門とされています。昨年刊行したご著書の『いつもの言葉を哲学する』では、私たちが生活で用いる身近な言葉を扱いながら、「言葉を大切にするとは何をすることなのか」を問いかけてきました。おふたりとそれぞれ対談や鼎談をされ、本イベントの司会を務める山本貴光さんは、ゲーム制作から人文書の翻訳・編集・執筆とマルチな活躍をされてきました。

そんなお三方をお迎えし、本イベントでは日常生活から現代社会のあちこちに生じる「あやふや」な「ことば」とその「責任」をテーマに語り散らしていただきます。ぜひ丹念に「ことば」と向き合う時間として本イベントをお楽しみください!

9月12日 (月) 19:00 - 21:30
五百蔵容 × 中村慎太郎 × 速水健朗
文化系のためのシン・サッカー講座──迫るW杯!ジャパンズウェイ深読からスポーツビジネス再考まで

4年に1度の祭典、今年11月20日から12月18日にかけてカタールで実施されるFIFAワールドカップに向け、ゲンロンカフェでもサッカー分析家の五百蔵容さん、ライターの中村慎太郎さん、速水健朗さんによるサッカートークのキックオフが再び鳴り響こうとしています。前回、2022年1月に「ジャパンズウェイを再考する──2022年サッカーW杯日本代表はどうなる!?」でも取り上げられたのが「ジャパンズウェイ(Japan’s Way)」。これは、日本サッカー協会が掲げる指針です。

ジャパンズウェイは、55ページにも及ぶ冊子「ナショナル・フットボール・フィロソフィーとしてのJapan’s Way」として今年7月に日本サッカー協会のホームページ上に公開されています。この冊子には、「文化」としていかに日本サッカーを発展させ、それを取り巻く選手・サポーター・指導者、そして「国民」がいかにして「幸福」になるのか、といった指針が描かれています。果たして、そんな「ジャパンズウェイ」とはなんなのか、どういった経緯で生まれ、いかに読み解けるのか。今回のイベントでは、あらためて本冊子を読み解きながら「日本サッカーとはなにか」について考えていきます。

スポーツを介したナショナル・アイデンティティの構築から、五輪やW杯といった巨大スポーツビジネスのあり方についても議論を深めていくイベントです。サッカーファンはもちろん、普段あまりスポーツに馴染みのない「文化系」にも楽しめるゲンロンカフェのシン・サッカー講座。W杯が迫るいまこそ必見です!

いよいよゲンロン友の会13期の募集開始です!

ゲンロン友の会は、ゲンロンを支援する人々の会であり、ゲンロンがお届けするサービス各種をお得に楽しめる1年間分のパッケージです。お届けするサービスは、年1回刊行する雑誌『ゲンロン』、ゲンロン発行書籍をもらえる「選べる単行本」、ゲンロンカフェのイベントやシラス視聴の優待などです。

現在は、友の会12期から13期への移行期。この期間限定のお得な入会セットとして、特別なパッケージを販売しています。それがゲンロン友の会12期残り1ヶ月+13期割引入会セットです!ざっくり、以下のサービスをまとめてお届けします。総額31,680円相当のサービスが、18,700円で購入できるお得なパッケージです!

12期のサービス
・東浩紀サイン入り『ゲンロン13』&電子書籍版
・『ゲンロンβ66〜77』
・「webゲンロン」読み放題最大1か月分

13期のサービス
・『ゲンロン14』の印刷版&電子書籍版
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ゲンロン友の会の詳細についてはまた別の機会にご案内しますね!
ともかく、大変お得なパッケージなので、ぜひこれを機にゲンロン友の会へのご入会をご検討ください。ではまた!

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