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SpaceX が全てを支配する? : 現在と近未来の事業ドメインまとめ

この記事は…

◆筆者:宇宙輸送(ロケット)のスタートアップで働いている人
◆対象:宇宙ビジネスの最新状況をキャッチアップしたい方
◆内容:SpaceXの事業ドメインを確認し、多くの領域に進出しようとしていることを確認

※宇宙ビジネスに関するnote記事を毎月投稿する「#まいつき宇宙ビジネス」シリーズ:2024年3月分

はじめに

みなさんご存知 民間宇宙企業の雄・SpaceX
ロケットはもちろん、最近ではStarlinkが世界的にサービス展開が進んでおり、宇宙産業を変革し続ける唯一無二の存在です。

今回はSpaceXの事業ドメインをみていきたいと思います。
最近、彼らが近い将来展開する(かもしれない)領域の新情報が出てきており、個人的には、ほぼ全ての宇宙ビジネス企業がSpaceXと競合になる未来 がやってくると感じています。(業界の中の人間としてはなんとも恐ろしい話です)
事業のイメージを掴めるよう、競合になる日本の会社がある事業にはその会社名も付記していきます。

それでは見ていきましょう!


既存事業

まずは既にサービスインしている事業から。

1. ロケット輸送

祖業でもあるロケットによる衛星の打上げ輸送サービス。
彼らのもつ大型ロケットFalcon 9Falcon Heavy は2024年には約150回の打上げが計画されており、他を寄せ付けない圧倒的高頻度打上げです。
一段目の再使用という技術的なイノベーションで低コスト化にも成功しています。

また、現在 Starship という完全再使用型の新しい宇宙輸送システムを開発中で、これが衛星の打上げサービスにも使われ始めると、より一層の価格破壊が起きそうです。

◆競合する日本企業:三菱重工、IHIエアロスペース、インターステラテクノロジズ 

出典:SpaceX
出典:SpaceX

2. 軌道上貨物輸送

次は軌道上、具体的には国際宇宙ステーションへの貨物輸送サービス。
NASAのプログラムの支援を受けて開発された宇宙船 Dragon によって行われます。

◆競合する日本企業:三菱重工 等(HTV)

出典:SpaceX
出典:SpaceX

3. 有人輸送

運べるのは衛星や貨物だけではありません。有人輸送サービスもすでに展開しています。
Dragon宇宙船の有人版 Crew Dragon を使った国際宇宙ステーションへの人員輸送は既に8回目のミッション(Crew-8)を数える程までに。
また、開発中のStarshipは最終的には火星に人を送る宇宙船として開発されていますが、アメリカ主導のArtemis計画では宇宙飛行士を乗せる月面ランダーとしても使用されることが決まっています。

出典:SpaceX
出典:NASA

4. 衛星通信

そして、今世界を席巻しつつある衛星通信サービス・Starlink。
低軌道コンスレテーションで構築する衛星通信で、事業ポートフォリオの中でもキャッシュカウになる事業です。
既に5,000機以上の衛星を打上げており、自社のロケットとの垂直統合で構築するスピード感に他の通信コンステレーション計画(OnewebやProject Kuiper)は太刀打ちができていないようにみえます。

◆競合する日本企業:スカパーJSAT

出典:SpaceX
出典:SpaceX

今後展開する(かもしれない)事業

そして今後展開する事業について。
※事業化を明確に表明しているものもあれば、報道ベースの情報も含みますのでご注意ください

5. 月面輸送

Artemis計画で使われる月面ランダーとしてのStarshipが、月面への貨物輸送にも使われるということです。
月面の水の存在が確認された後に本格化するであろう月面基地建設には大量の貨物を運べる輸送システムが不可欠になるので、まあ自然な流れですね。

◆競合する日本企業:ispace

6. リモートセンシング

2024/3/17付のロイターの記事によると、アメリカの諜報機関 National Reconnaissance Office (NRO) との機密契約により「地球観測衛星」ネットワークを構築を行うとされています。

SpaceXがリモートセンシング(地球観測、Earth Observationとも)に乗り出すとは個人的には意外でした。リモートセンシングの現状をみると、やはり防衛文脈が一番手堅い市場だと思いますので、防衛大国アメリカにいる以上 やらない選択肢はなかったのでしょう。

◆競合する日本企業:アクセルスペース 等

7. 微小重力R&D

Dragon宇宙船を使った軌道上でのライフサイエンスの研究提案について、3月まで情報提供依頼(RFI)を募集していました。
今はまだ研究募集に過ぎず事業化までには至っていませんが、いずれ事業化してもおかしくはないと個人的には思っています。

◆競合する日本企業:Elevation Space

8. 衛星間光通信

COO Gwynne Shotwell 氏が、Starlinkで使用している衛星間光通信端末を他社にも販売する計画を明らかにしました。(下記記事参照)
いわゆる”コンポーネントの販売”はこれまでの事業と比べると少し異質ですが、それだけこの市場で収益が見込めるとの判断でしょうか。
Starlinkでの使用により宇宙実証済みで、圧倒的な実績があるため、同様に衛星間光通信モジュールを展開する企業にとってはかなりの脅威になると思われます。

◆競合する日本企業:ワープスペース

9. 宇宙ステーション

NASAの Collaborations for Commercial Space Capabilities-2 (CCSC-2) initiative では、Starshipをベースにした宇宙ステーションを開発する計画が提案されています。
こちらはどこまで実現するかまだ不確かではありますが、Starshipを地球周回軌道に乗せたらら確かにそのまま宇宙ステーションとして使えそうですね。

まとめ

う〜〜〜〜ん、強い。
ロケットという宇宙への輸送手段から、”垂直統合”であらゆる領域に手を伸ばし始めましたね。本当に全てをもっていきそうな凄みがあります。

宇宙業界で働く人間としてはこの巨人がいる市場でどうたたかっていくかを日々考えていく必要があると感じますが、1人の宇宙ファンとしてはめちゃめちゃ Cool で Excite させてくれる最高の会社です。Go SpaceX !

以上

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