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ブランド化が難しい卵のブランド価値を再整理したプロジェクトの裏側

はじめてのnoteです。

私たち森山は、福島県の土湯温泉で旅館業を営みながら、卵やプリンなどの製造・販売を行なっています。

今まで外に自分たちの想い・考えを発信する機会が少なかったので、これからnoteを使って旅館経営や食のブランドづくりの観点などを発信していきたいと思っています。

本日のテーマは、「卵のブランド価値の再整理」についてです。

卵の違いを伝えるのは難しい

いきなりですが、皆さんは、卵のブランドと聞いてイメージするものはありますか?

多くの人にとって馴染みはある「卵」

牛であれば、宮崎牛や松坂牛
お米であれば、コシヒカリ、ひとめぼれ

などブランドのイメージがしやすいのではないかと思います。

さて、卵はどうでしょう。

誰もがイメージしやすくブランド化されている商品は少ないと感じています。
低価格の日用品であり、こだわりと目的をもって選んでもらうのは非常に難しさがあります。

卵の売上の伸び悩み…

卵をどのようにブランド化するか…
私たちも同じく悩んでいました…

私たちがつくっているブランド:ガンバ卵ショ

品質は自信をもってオススメできる卵です。

数十年前は地域の人に福島の卵といえばガンバ卵ショ!
と一番に思いだしてもらえていました。

悩み:顧客層の高齢化…

しかし、以前に卵をたくさん買ってもらっていた方々は高齢化が進み、購入数や機会は徐々に落ちてきてしまいました。

また、昔よりも福島県内で卵をお土産として扱う競合ブランドが増え、県内のお土産品を扱う店舗の棚に、商品を置いてもらえなくなってきてもいました。

こういった背景から、卵の売上が数年前から伸び悩んでいるのが課題として悩んでいました…

ブランド価値を整理するプロジェクトをスタート

そんな背景から、昨年からガンバ卵ショのブランド価値を整理するプロジェクトを旅館のメンバーとスタートしました。

現在進行形のプロジェクトではありますが、自分たちが大切に育ててきたブランド「ガンバ卵ショ」の価値とは何か?を見直し、徐々にブランド戦略を定義し直しています。

このnoteでは、ブランド価値を整理するプロセス・私たちの試行錯誤をご紹介できればと思っています。

誇れる商品をもっているけど、ブランド価値をどのように定義して伝えるべきか…
を悩まれている方にも、ぜひ参考にしていただけたら嬉しいです。

1. 自分たちの価値を漢字一文字で表現

最初に行ったのが、自分たちの価値定義です。

時代が経つにつれ、自分たちのブランドにどんな価値があるのか?最も大切にしたいことは何か?が見えなくなってしまっていたのです。

自分たちの価値の構成要素を
A+B+C=ブランドのシンプルな式で表現するとどうなるか?
を考える。

価値定義のためにやったこと
ブランド価値をシンプルな式で整理してみる

みんなでブランドのキーワードを複数出していく中で、独自要素は何かを考えていきました。

ブランドと関係するキーワードをみんなで書き出しました。

価値をシンプルに整理する

いくつか要素を出す中で、私たちはこの3つをブランドの構成要素として大切にし続けたい…という考えに至りました。

ガンバ卵ショのブランド価値をシンプルに定義

漢字で整理した意味の背景をこのようにまとめていきました。

1. 源 自家源泉をもつ旅館だからこその価値は?

源:自家源泉を守り続けてきたからこその価値

68°の源泉でつくる温泉卵だからこそ「黄身の美味しさが違う価値」を最重要だと定義しました。

ガンバ卵ショは黄身の美味しさが違うので、ぜひ食べていただきたいです。

続いて、2つ目の要素です。

2. 素:こだわり続けていることは何か?

愚直にこだわり続けてきたことは、福島県の生産者の卵を使い、その卵の美味しさを源泉を使って引き出すこと
源泉でつくる温泉卵の風景:写真で見てもものすごくシンプルです。でも、このシンプルなつくり方ができる温泉たまごは、他にはないと思います。

私たちは、シンプルな美味しさを守り続けていたのに、価値の定義が複雑になってしまっていたことに反省しました…

最後、3つ目の要素です。

3. 支:自分たちが大切にしてきているポリシーは?

ガンバ卵ショを通じて、多くの人を支えてきたこと、同時に私たちも支えられてきました。

2011年、東日本大震災のときに、多くの方が避難所として旅館を使っていただきました。

あの地震が起こったとき、この旅館の建物は無事でした。
ご自宅、ご家族を失った方々に、この旅館を避難所として使っていただいたのです。

私たちは、どんなに苦しいときも、旅館を運営し続け、旅館の中で卵をつくり続けてきたこと。その中で届けたきたことがあることを思い出しました。

この旅館で卵やプリンを提供し続けてきました。

下記は、ブランド価値を整理する中で、スタッフから出てきた言葉です。

自分だったらと考えると立ち直れないかもしれない。それが、何があったとしても頑張るんだ、生き抜くんだと助けをもとめて、森山、ニュー扇屋にきてくれた人がいて、その人たちを応援するためにガンバ卵ショはあった。

ブランド価値を整理する中で、震災を一緒に乗り越えてきたスタッフから出てきた言葉1

3.11の復興と足並みを揃えて、一緒に乗り越えてきた
・福島とともに乗り越えてきた
・ガンバ卵ショを見るたびに頑張らないとと思う 

ブランド価値を整理する中で、震災を一緒に乗り越えてきたスタッフから出てきた言葉2

日々の忙しさで忘れかけていたけど、自分たちが大切にし続けたいことがまとまってきました。

コロナもあり観光需要が低迷し、土湯温泉の旅館のいくつかは、廃業を余儀なくされるところもありました。

その中でも、私たちが続けてこれたのは、たくさんの人を支え、同時に支えられてきたからなのだと感じています。


だいぶ、私たちのブランドの価値が、シンプルに整理できたと思います。

ガンバ卵ショのブランド価値をシンプルに定義

2. 価値を伝わるフレーズへ

自分たちの価値を整理した後は、伝わるフレーズ(コピー)をまとめていきました。

まず、先ほどに漢字一文字で整理した、ガンバ卵ショの独自価値をフレーズ化していきました。

自家源泉の力、自然の素朴な力、多くの人を支え続けてきた力…
ガンバ卵ショは、大切な人を芯から元気づけるための卵

ガンバ卵ショのブランド価値を定義した文章

この文章を、誰でも覚えやすく、意味を感じてもらいやすいようなキャッチコピーに昇華させていきました。

ブランド価値を反映させてコピーをつくる


価値とセットで整理すると下記のとおりとなります。

ブランドの価値をシンプルに定義した後に、20文字以内の言葉に凝縮してみました。

今までも、ブランドを表現するコピーはたくさん作ってきましたが、どれも価値が明確に定義できていない中で作ってしまっていたな…と反省しています。

改めて、自分たちは土湯温泉の力、福島の自然の素朴な力を使い、元気を届けるための卵なのだ…と自分たちも再認識できました。

3. お客様への伝え方を整理する

最後に、ブランド価値をお客様に伝える形式で整理しました。

ブランドのことを伝える上で大切になるのは、機能価値・情緒価値・社会価値の3点セットで伝えることだと学びました。

ガンバ卵ショのブランド価値はどのように整理できるか?

ビジュアルも含めて、下記のように整理をしてみました。

ブランド価値=機能×情緒×社会

整理すると、
・機能価値は、卵黄の美味しさを伝える
・情緒価値は、パッケージの可愛さを伝える
・社会価値は、地域の人とのつながりを伝える

この3つの価値を定義して、ブランドコミュニケーションを設計していこうと軸をつくっていきました。

ブランド価値整理のまとめ

ここまで整理してきたブランド戦略を1枚でまとめると下記のようになります。

ガンバ卵ショの価値は何か?
何となく関わる人の頭の中にあったことが、整理できました。

ガンバ卵ショのブランド価値とは?

自分たちが大切にしてきていること、大切にしていきたいことを整理する考え方の参考にしていただけたら嬉しいです。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました!

きょうも、土湯温泉から、誰かの背中を押すお手伝いをしていきたいと思います。

noteでは、今後も福島・土湯温泉での仕事の裏側を発信していきたいと考えています。ぜひ感想やコメントなどもいただけたら嬉しいです。


以前に掲載いただいた、いくつかの記事も最後に紹介させてください。

無印良品にも、諸国良品としてご紹介をいただきました。

プリンは、ふくしまスイーツ・プレミアムを受賞しました。プリンのことも、また別のnoteで書いていければと思います。

また、「源泉湯庵森山のネットショップ」もよろしければ、ご覧ください!


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