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新プラトン主義のピラミッド型階層モデルについて解説

以下の記事の続きになります。
新プラトン主義の基本的な考え方について紹介します。

哲学には三種類のカテゴリが存在します。
新プラトン主義、アリストテレス哲学、カント哲学です。

これら三種類の哲学にはフレームワークに基づいたある一定の構造が存在します。

・新プラトン主義・・・ピラミッド階層型
・アリストテレス哲学・・・8段階の円型モデル
・カント哲学・・・水平方向と垂直方向からなる4段階プロセス
このイメージから哲学者たちの用語や思考過程を追いかけ、思考を組み立てるのが哲学者としての基本的なステップとなります。




下にあるものは上にもある


上にあるものは下にあるものに似ており、下にあるものは上にあるものに似ています。

wikipediaより出典

「上にあるものは下にあるものに似ており、下にあるものは上にあるものに似ています。」は、エメラルドタブレットにおいて記された哲学的な言葉の一部です。エメラルドタブレットは、中世以前のヘルメス主義の伝統において、ヘルメス・トリスメギストス(ヘルメス三度偉大なるもの)に帰せられるとされる一連のテキストや言葉のことを指します。

この具体的な文言は、自然や宇宙の秩序に関する哲学的な原則を表現しています。この文言は「マクロコスモス(大宇宙)とミクロコスモス(小宇宙)」といったアイディアに通じており、以下のような解釈がされることがあります:

  1. 相似性の法則: 「上にあるもの」は宇宙や神聖な領域を指し、「下にあるもの」は物質的な世界や人間の領域を指します。この法則は、宇宙のあらゆるレベルで同じ法則や原則が適用され、相似性が存在するという哲学的な信念を表現しています。

  2. ミクロコスモスとマクロコスモス: ミクロコスモスは個々の存在や人間、マクロコスモスは宇宙全体や神聖な領域を指します。この文言は、小さなスケールの存在と大きなスケールの存在が共通の原則や法則に基づいているとする思想を示唆しています。

  3. 相互連関とバランス: 上下の関係や相似性は、相互に依存し合いながら、バランスを保つとされています。これは、宇宙全体が調和と均衡に基づいているという考え方を表しています。

マクロコスモスとミクロコスモス


マクロコスモスとミクロコスモス(英: Macrocosmos and microcosmos, Macrocosm and microcosm)は、大宇宙(マクロコスモス)と小宇宙(ミクロコスモス)の対概念で、大きな世界(大宇宙)に対応する小さな世界(小宇宙)は、通常は人間を指す。マクロコスモスとミクロコスモスは、このふたつのコスモスが互いに照応するという思想である。

wikipediaより出典

「マクロコスモス(Macrocosm)」と「ミクロコスモス(Microcosm)」は、古代の哲学や宗教の文脈で使われる用語で、それぞれ大宇宙と小宇宙を指します。これらの概念は、宇宙全体と個々の存在(人間など)との間に類似性や対応関係があるとする思想を表現しています。

  1. マクロコスモス(Macrocosm):

    • マクロコスモスは大宇宙を指します。これは宇宙全体や神聖な秩序といった、広範な領域や全体性を表現します。この概念では、星々や天体、自然の法則が一つの統一された体系として捉えられ、全体の秩序が観察されるとされます。

  2. ミクロコスモス(Microcosm):

    • ミクロコスモスは小宇宙を指し、通常は個々の存在や個人を指します。人間が最も一般的なミクロコスモスとされ、個々の人間が宇宙全体を反映しているというアイディアが含まれています。人間の身体や精神が、宇宙の構造や法則と類似性を持っているとされることがあります。

これらの概念は、多くの宗教や哲学体系において見られます。例えば、古代のヘルメス主義や新プラトン主義、アジアの宗教哲学などで、マクロコスモスとミクロコスモスの対応が重要視されています。これらの思想では、個々の存在が宇宙全体と一体化し、自然の法則が小宇宙と大宇宙の両方に共通しているとされます。

ハイパーウラン


ハイパーウラニオンまたはトポス ハイパーウラニオス「天国を超えた場所」。
プラトン領域とも呼ばれます。
すべてが集まる天国の場所です。本物のアイデアが集まります。

wikipediaより出典

プラトンの哲学において、「ハイパーウラン(Hyperuranion)」は、物質界や感覚の世界を超越した、より高次の現実の領域を指す言葉です。この概念は主に『ティマイオス』という対話篇で言及されています。

プラトンは物質的な世界に対抗して、より完璧で永遠な現実が存在すると考えました。物質世界は変化し不完全であり、それに対してハイパーウランと呼ばれる超越的な領域は究極の現実であるとされました。

主に次のような特徴が与えられています

  1. 永遠性: ハイパーウランは時間の影響を受けず、永遠に変わらないとされました。これは物質世界の常に変動する性質と対照的です。

  2. 完璧性: ハイパーウランは絶対的で完璧な現実であり、プラトンはそこにアイデア(イデア)が存在すると考えました。アイデアは物質世界の対象が持つ完璧な形や本質であり、物質世界のものはそれを不完全に模倣しているとされました。

  3. 神聖性: ハイパーウランは神聖で神秘的な領域とされ、知識や理性の境地が到達できるものであると考えられました。


宇宙霊魂(ワールドソウル)


宇宙霊魂(うちゅうれいこん、希: ψυχή κόσμου, 羅: Anima mundi)は、宇宙は全体としてひとつの魂を有する活きものであり、その魂は宇宙に遍在する原理的なものとなっているという考えに基づく概念である。世界霊魂とも。

wikipediaより出典

宇宙霊魂、または「ワールドソウル」は、哲学や宗教の文脈で用いられる概念であり、宇宙全体に普遍的な精神や魂が存在するというアイデアを指します。この概念はさまざまな文化や宗教において異なる形で表現されていますが、共通して宇宙全体が一つの霊的な実体や存在と結びついていると捉える考え方が含まれています。

以下に、宇宙霊魂のいくつかの文脈での解釈を紹介します:

  1. プラトンと新プラトン主義:

    • 古代ギリシャの哲学者プラトンは、「ティマイオス」などの著作で宇宙霊魂のアイデアを提示しました。彼は宇宙全体が霊的な実体であり、この実体がアイデアや形(イデア)の源となっていると考えました。新プラトン主義の哲学者たちもこの概念を受け継ぎ、宇宙全体が神聖な霊魂によって結ばれていると考えました。

  2. ヒンドゥー教のブラフマン:

    • ヒンドゥー教の哲学では、「ブラフマン」と呼ばれる宇宙霊魂の概念があります。ブラフマンは無限・絶対的な存在であり、宇宙全体がこのブラフマンの変化や表現であるとされています。個々の魂(アートマン)もこのブラフマンと一体であると考えられています。

  3. ギリシャのストア主義:

    • 古代ギリシャのストア主義哲学では、宇宙霊魂は神聖な原理であり、宇宙全体がこの霊魂によって統一されているとされました。この霊魂は神聖で理性的な原則であり、人間の魂もこの宇宙霊魂から派生していると考えられていました。

これらの文脈において、宇宙霊魂は宇宙の調和や統一を象徴し、霊的な次元で全てが繋がっているという思想が表れています。

デミウルゴス


ギリシア語では「職人・工匠」というような意味である。プラトンは物質的世界の存在を説明するために、神話的な説話を記した。この言葉と概念はグノーシス主義において援用され、物質世界を創造した者、すなわち「造物主」を指すのにデミウルゴスの呼称を使用した。

wikipediaより引用

「デミウルゴス(Demiurge)」は、古代ギリシャの哲学や宗教において、宇宙や物質の創造者とされる存在を指します。この概念は特にプラトンの著作『ティマイオス』において重要な役割を果たしています。

以下は、デミウルゴスに関連する概念とその解釈についての主なポイントです:

  1. プラトンの『ティマイオス』:

    • プラトンの対話篇『ティマイオス』では、デミウルゴスは神聖な存在であり、物質世界や宇宙の形成者とされています。彼は理念界にあるイデア(アイデア)から物質世界を創り出す役割を果たす存在とされ、理性的で善の原理に従って宇宙を構築する存在とされました。

  2. ギリシャ神話と異教的な視点:

    • プラトンのデミウルゴスの概念は、一般的なギリシャ神話においての造物主とも関連しています。異教的な視点では、デミウルゴスは神々の中でも特に宇宙や世界の形成に携わった神であり、しばしば神話の中でクロノスやプロメテウスとも関連づけられることがあります。

  3. 新プラトン主義とガイウス:

    • 新プラトン主義の哲学では、デミウルゴスは神聖な原理であり、中世の哲学や神秘主義においてもデミウルゴスは神聖な創造者や絶対者のイメージとして再評価されました。例えば、ガイウス(Gaius)などの著作でデミウルゴスは神聖な存在として再評価されました。

テウルギア

テウルギアとは「神的な働き」を意味する。記録の上でのこの言葉の初出は2世紀中葉の新プラトン主義文献『カルデア神託英語版)』にある(断片153 デ・プラス(パリ、1971年):テウールゴスたちは運命に支配された群衆の内に入らぬものなれば)[10]。西洋のテウルギアの源泉は後期ネオプラトニズム哲学、とりわけイアンブリコスに見出すことができる。後期ネオプラトニズムでは、霊的宇宙は〈一者〉からの一連の流出であるとされた。〈一者〉より〈神的精神〉(ヌース)が流出し、次いで〈神的精神〉より〈世界霊魂〉(プシューケー)が流出する。新プラトン主義者は、〈一者〉は絶対的に超越的なものであり、流出においては上位のものは何も損なわれることもなければ下位のレベルに伝達されることもなく、下位の諸流出によって変化することもないと説いた。

古代の新プラトン主義者は多神教徒であったとみなされているが、ある種の一元論を採用した。

プロティノス、そしてイアンブリコスの師であったポルピュリオスにとって、流出とは次のようなものであった。ト・ヘン (τό ἕν) すなわち〈一なるもの〉:無味の〈神性〉。〈善なるもの〉とも呼ばれる。
ヌース (Νοῦς) すなわち〈精神〉:〈普遍的意識〉、これよりプシューケーを生ずる。
プシューケー (Ψυχή) すなわち〈霊魂〉:個の霊魂と世界霊魂の両者を含み、最終的にピュシスに至る。
ピュシス (Φύσις) すなわち〈自然〉。

wikipediaより出典

テウルギアのプロセスは、神聖な力や高次の霊的な存在との結びつきを強化し、神秘的な経験を得るための実践的な手法や儀式から成り立っています。以下は、一般的なテウルギアのプロセスに関する一般的な概要ですが、これは文脈や宗教体系によって異なることに留意してください。

  1. 清めと儀式の準備:

    • テウルギアのプロセスは通常、清めや儀式の準備から始まります。この段階では、物理的な浄化や精神的な集中が行われ、参加者は神聖な状態に入るための準備を整えます。

  2. 神聖な言葉や祈り:

    • テウルギアでは神聖な言葉や祈りが頻繁に使用されます。これによって、霊的な次元や神聖な存在とのコミュニケーションが図られ、神秘的なエネルギーへのアクセスが試みられます。

  3. 象徴的な行動や儀礼:

    • 儀式には象徴的な行動や儀礼が含まれることがあります。これには、神聖なシンボルの使用や神聖な物体への奉納が含まれ、これらを通じて神聖なエネルギーへのアクセスが意識的に促されます。

  4. アルケティプとの結びつき:

    • テウルギアのプロセスでは、参加者がアルケティプ(普遍的なシンボルやパターン)との深い結びつきを意識的に構築しようとします。これは、神聖な存在や霊的な次元へのアクセスを通じて自己の変容や啓示をもたらすことが期待されます。

  5. 神秘的な体験と啓示:

    • テウルギアの最終的な目標は、神聖な力や高次の存在との直接的な結びつきを通じて神秘的な体験や啓示を得ることです。これによって、個人は霊的な進化や理解を深め、神秘的な真理にアクセスするとされます。


まとめ


・新プラトン主義とは「マクロコスモス(大宇宙)とミクロコスモス(小宇宙)」の一致を目指している
・ハイパーウランと呼ばれるアイディアが集まる場所が存在する
・宇宙霊魂(ワールドソウル)によって世界は動いている
・デミウルゴスという創造神によって物理世界が生成される
・新プラトン主義はテウルギアと呼ばれる神聖な力や高次の霊的な存在との結びつきを強化し、神秘的な経験を得るための実践的な手法や儀式を使用する
新プラトン主義は以下のステップで実行される

  1. ト・ヘン (τό ἕν) すなわち〈一なるもの〉:無味の〈神性〉。〈善なるもの〉とも呼ばれる。

  2. ヌース (Νοῦς) すなわち〈精神〉:〈普遍的意識〉、これよりプシューケーを生ずる。

  3. プシューケー (Ψυχή) すなわち〈霊魂〉:個の霊魂と世界霊魂の両者を含み、最終的にピュシスに至る。

  4. ピュシス (Φύσις) すなわち〈自然〉。


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