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わたしは真面目な子供

子供扱いされることが、ずっと嫌いだった
真面目ちゃん扱いされることが、ずっと嫌いだった
それを親は望んでいると思っていた
ある日
私と親との間に、ある矛盾が生まれた
わたしの内面は腐り始めてきたのに
まだ親はわたしに子供でいて欲しいと思っているのだ
わたしがネギを食べれることを
最近まで気づいていなかったという
わたしがヴィトンという言葉を知っていることを
最近まで知らなかったという
わいせつな行為のニュースが流れると
こんなの見ちゃダメだよと言われる
わたしは笑った
そして誤魔化した
その度に悲しくなった
わたしがどれだけ全力で生きようが
親には何も伝わっていなかった
いや、わたしがずっと隠していたのかもしれない
わたしが大人になることを
きっと親は望んでいないんだ
それをずっと昔に
言葉にする前に感じ取って
ずっとずっと偽っていたんだ
わたしは自分が成長することが怖かった
親に失望されるのではないかと思った
わたしは自分の時が止まって欲しいことだけを願った
極限までそれを隠し続けた
だが結局バレた
わたしはもうその地獄から抜け出そうが抜け出さまいが
もうきっとこの心に打ち付けられた釘を抜くことはできない
わたしは本当に子供扱いされることが嫌いだ
いいや、違う
わたしは失望されることが
なによりも、なによりも、怖いのだ
わたしを置いていかないで欲しい
わたしを捨てないで欲しい
わたしはいつだって全力でみんなに接してきた
それの何がいけなかったの
わたしの全力で生きた全ては
みんなを失望させてしまうようなことだったの?
ごめんなさい、ごめんなさい
そして、許さない

わたしにはもうひとつ抜けない釘がある
わたしはずっと真面目だった
真面目であることが取り柄だった
最初はそれで良かった
なぜ周りの奴らはこんなに馬鹿なんだろうと思った
平均という言葉が信じられなかった
平均以下という人生の奴らが信じられなかった
わたしは生まれたときから
みんなより上であることが、当たり前だと思って生きてきた
それなのに
ある頃からそれは変わった
わたしはみんなの話についていけなくなったのだ
みんなのノリが分からない
冗談が分からない
わたしがそれを理解できていないことを知ったとき
その場の空気がサッと冷めるのだ
真面目であることは親から褒められた
親にも、勉強しないやつはロクな人生を歩まないんだぞと言われてきた
だからわたしは信じた
でも、なぜかどんどん苦しくなった
気づいたら、「どうしてわたしだけ?」という言葉が、ずっとずっとわたしが子供だった頃から
この言葉は染み付いていた
わたしにもゲームをしたい要求はあった
わたしだってスマホを持ちたい要求はあった
わたしだってみんなが次の日話している夜22時までやっているテレビ番組を見たかった
親には下品に見えたかもしれないお笑い番組も
本当は心の底から見たかった
アニメだって、マンガだって見たかった
きっと露出や、過激な戦闘が
教育に悪いと、親は思っていたのだろう
わたしが何かを好きになることを恐れた
わたしは、アイドルや、キャラクター、芸能人を、親に好きだと言えなかった
それを言うと、「えっ?こういうのが好きなの?ませてるねぇ、、、」
と、言われるからだ
わたしが成長することは、親には許されない
わたしが汚れることは、親には許さない
わたしが子供を産める身体になることは
親には許さない
ああ、それなのに
それなのに
どうしてみんなはあんなに自由に生きているんだろう
わたしは熱が出た日も宿題をやった
先生に失望されるのが怖かった
わたしに失望する親みたいに
「できない子だね」
と、思われるのが、嫌だった
わたしはちゃんと、みんなの思う、都合のいいわたしでいなければならないんだ
だから、失望は許されない
ずっとずっと昔の幼少期から
他人の評価を気にしていた
本当に怖いのだ、嫌なのだ、失望されるのが
普通にしていたら、わたしは大抵褒められる
なぜなら真面目だから
そうやって育ってきたから
いつもみんなより上のわたしでなくてはならない
そしていつも親の理想である純粋なわたしでなくてはならない
ただわたしは辛かった
先生、親の、信頼は勝ち取ることは出来たが
私は友達に適応することは出来なかった
友達たちの間で流行ることは、だいたいわたしが禁止されている夜遅くまでやっている大型企画テレビ番組の内容か
わたしがどう頑張ってもみることのできない
SNSでの、話題の話だ
ただでさえ分からなかったのに
高学年になって行けば行くほど
みんなの言葉が分からなくなった
わたしはここにいるのに
みんなはヒソヒソ話をする
わたしは最初から「わからない子なんだ」
「通じない子なんだ」
と、いつの間にかレッテルをみんなに貼られた
辛かった
どうすればいいのか分からなかった
わたしもみんなと分かり合いたかった
なんで、わたしは真面目な優等生なのに
いいや、ちがう、ちがうのか、、、
わたしが真面目な優等生だから
みんなはわたしと対等に接してくれないんだ

人と対等に話せたことが本当に少なかった
いつも誰かに失望されない為にわたしを偽った
それは、仲間外れにされるから
それは、完璧なわたしの概念を崩されるから
それは、理想なわたしでなくなるから
だんだんと親もわたしを分かってきた
わたしは手に入れた一筋の希望を最大限利用してやろうと思った
親はわたしに純粋であることを望み
みんなはわたしにもっと汚れることを望むのだ
わたしはどうすれば良かったんだろうか
必死に手に入れた希望も、時が過ぎればみんなは飽きてしまう
わたしは適応できない
わたしは適応できない
どうしてわたしだけ?どうしてわたしだけ?
どうして同じ人間なのに、わたしには何も伝わらないようなフリをするの?
そうだよね
無知なわたしが
全部悪いんだもんね

自分の知らないことがあるだけで気が狂いそうだった
でもだんだんこの世界が分かってきた
わたしは反論することをやめた
わたしは、自分が平均以上であると思うことをやめた
そして親よりもみんなに適当することが大事だと悟った
1つ
2つ
3つ
わたしは、わたしは誰からも失望されないように
常に色々なことにアンテナを張るようになった
そして色々なことを分析するようになった
まずは人を分析するようになった
どのようにこの人に合わせれば
わたしは失望されることがないのか常に考えた
だが
人間の数は多く
人間の人生は嫌になるほど多い
もちろん全員と話を合わせることなど夢物語だ
だけど嫌なのだ
「子供扱いされることが」
「真面目と思われることが」
「空気を読めないと思われることが」
「何も知らないと思われることが」
「下に見下されることが」
「侮られることが」
わたしは、わたしの昔な真面目なわたしを
わたしは、わたしの全力で生きていたわたしを
殺した奴らを許さない
わたしは
わたしは全てに適応するのだ
わたしは、幼少期の頃のわたしの仇を
この手で打つ
そしてまだ、わたしは
そう、そして今でもまだ
わたしはその釘を打ち付けられる
わたしは笑った
しかしもう悩まない
情報を手に入れるツールと、わたしを束縛するカゴからの一時的な解放で
わたしは
わたしは
変人になることができる
良いのだ
わたしは変人でほんとうに構わないのだ
もう二度と、わたしのことを
子供扱いさせない
真面目扱いさせない
空気の読めないやつだと言わせない
いや、空気など読めなくても良いのかもしれない
わたしは
いつまでもみんなの下で
ヘコヘコと笑っていたわたしを
もう蔑ろにする訳にはいかない
わたしは変人となり
いつまでもわたしのことを格下だとと思っていたお前らに
「変人」という名の恐怖を
上からねじ伏せるのだ
もう二度と
もう二度とお前らの思考の下にわたしを敷かせない
わたしはお前らより遥かにアタマのおかしい変人だということを
思い知らせてやる
笑えよ、わたしのことを笑えよ
アタマのおかしいやつだと思って
怖がれよ
近寄りたくないって、少しでもうろたえろよ
無駄だよ
全部お前たちのことは
私の中にある
たくさんたくさんわたしのことを
軽視して、下に見て、目の前でコソコソ話を見せつけて
そう、お前らはそんなわたし自身に
お前達は踏みつけられるのだ
まだ足りない、まだ足りない、まだ足りない
変人が足りない、変人が足りない、変人が足りない
わたしは「ありきたり」、「平凡」という言葉が大嫌いだ
それは絶対に「蔑む」意味が含まれているからだ
二度とわたしのことを「普通の人間」と言わせないぞ
わたしはなんだって抱擁できる
できるんだ
してみせるんだ
お前の心の気づいていないところまでわたしは分かる
お前のその発した言葉の意味で
お前がどういう人間か
私はわかる
ああ、当然だ
あれだけ人に適応しようとしたわたしは
まず人を分析するということを
怠らなかったからな
そして、話題を合わせるには
たくさんの人間を見て
分析して
与えられたルーレットの数字に
わたしは答えが10になるよう
わたしの人格を変えてお前に適応させるのだ
わたしは何度だってわたしを殺すことができる
ああ、わたしは適応するためならなんだってできるんだ
でも、最近、適応についてよく分からなくなった
きっと、真面目だった頃のわたしは
まだわたしの中で生きていることが分かったのだ
だから、どれだけわたしが変人になろうとしようが
わたしの心の奥深くで
その真面目は声を発しているのだ
それなら
もう答えは簡単だ
わたしはもう0という数字を手に入れている
それならあとはただ数字を大きくしていけばいいだけ
あとは、私がこうやって自分を殺せば殺すほど
0より下の数字は
あの頃の幼少期からどくどくどくどくと増え続けているのだ
まだ足りないんだ
ほんとうにまだ足りない
この世にはわたしより変人な奴らがたくさんいる
きっとわたしの真面目という人格は
殺しても殺しても
また生き返ってしまうのだろう
というか、きっとこいつは死なないのだ
たくさんの変人を抱擁したい
吸収したい
わたしの養分としたい
わたしに必要でない人間
そして、体験などないのだ
全てはわたしの適応するための材料となり
わたしの思考を通して脳に染み渡る
もっと欲しいもっと欲しいもっと欲しい
わたしの人格とは
まさにテレビのダイヤルだ
君たちの思うように
わたしはいくらでも人格を変えて見せよう
ただ、別にわたしは多重人格ではないのだ
そう、多重人格でなくて良かったと思う
そもそもそんなものになったら、自分以外の自分が出来てしまうからだ
そう
わたしも自分の人格こそ
わたしが抱擁していたいのだ
全てを客観視する
全てを吸収し、また修復する
そして言われた番号をサッと出すのだ
ただ、わたしは俳優という訳では無い
わたしは俳優よりももっと上の生身の人間との適応を試みているのだ
ただ中身のない空想の世界とは訳が違う
こちらの世界では、相手も演技してくれるなんてそんなことは無いから
全てを網羅したい
網羅しないと気が済まない
あたまがおかしくなりそうだ
割り切れない
捨てられない
どうでもいいと思えない
それは、刺さった釘が抜けないから
「失望」が「切り離される」のが「捨てられる」のが
怖くて怖くてたまらない
わたしはその恐怖を幼い頃から浴びすぎてしまった
そして自分を殺しすぎてしまった
これはギャンブルみたいだ
殺してしまったわたしの自我の分
わたしは多くの人に適応し
多くの人をわたしが全て抱擁し食べ尽くす
そう
人を食べたい
わたしは
食らいつきたい
人に
そうだ
そうだ
きっとそうだ
人を食べたい
私の中の胃酸で溶かしたい
私の中に抱擁したい
そしてらわたしの養分になり
血となり肉となり、思考となれよ
ああ
楽しいね
楽しいね
今までわたしのこと踏み潰してきたやつはどこいるの?
たぶん
お前らくらいなら
いくらでも抱擁できる
はい、
あーーん

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