gentle_daphne389

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こでまりさん

こでまりさんは、いつも土曜の夜8時に牛頭町の家へとやってくる。丁度、いかりや長介が「8時だよ、全員集合!』と元気に叫ぶ顔がTV画面にズーム アップされる頃だ。 ガラガラガラと玄関の戸が開く音がして、 「こんばんは~」というこでまりさんの声に「どうぞあがってちょうだい~」とおばあちゃんが受け玄関へと向かう。 夕飯を終え、TVを囲んでいる牛頭町のメンバー(おじいちゃんや私や弟、時にはぶうわやこうたろうおじちゃんがいたりすることもある)が『8時だよ~』を見ているその横を『どうも、

    • 【おはぎのおばちゃん】

      ガラガラッと、牛頭町の玄関の引き戸を勢いよく開けて、「こんにちは~~」と言うが早いか、靴をバタバタと脱いで台所への暖簾をくぐる。 と、目の前のテーブルにある立派な黒い塗りのお重が目に入った。『あ、これはもしや!』と私はすぐにピンときて「おはぎ?!」と言うと ケタケタケタッとおばあちゃんは嬉しそうに笑い「はなこちゃん、ようお越し。そうやし、よう わかったな、吉本の姉さんにおはぎ沢山いただいたんやして、はなこちゃんも食べ。ここでも食べて、沢山あるから持って帰ってまたお家でも食

      • 【おおばあちゃんの憂い】

        牛頭町のおじいちゃんの母は「くに」さん(以下おくにさんと云う)と言い、私は残念ながら直接あったことは無いのだが、仏壇の遺影の丸顔がおじいちゃんとあまりにそっくりなので、私は見る度に可笑しくてニヤニヤした。 おくにさんが、大工の棟梁だったおおじいちゃん(牛頭町のおじいちゃんの父)の元に嫁いで来た頃の牛頭町の家は、玄関を開けると土間があり、そこには沢山の人工さんが居て、食事をしたり休憩を取ったりと、入れ替わり立ち代わりごった返していた らしい。その人工さん達の食事の世話から事務

        • 【岡谷さんとおじいちゃん】

          牛頭町の家のはす向かいには、『岡谷さんのおばちゃん』が住んでいた。 Mrs.Okayaさんである。岡谷さんだけで良いのだが、私たち子供の間では『岡谷さんのおばちゃん』が通称になっていた。 岡谷さんのおばちゃんはとても細い小柄な人で、白髪混じりの細い毛質の髪を、瓶付け油で撫で後ろで小さくひっつめて、お団子にしていた。 普段から着物や浴衣を着ていることも多く、よく、紺やグレー地に黒の細かいな格子柄の着物を着て、繰った襟には白い手ぬぐいを織り込んでいた。長谷川町子さんのいじわ

        こでまりさん

          【おじいちゃんと蟹】

          例年、みきた市の秋祭りは宵宮と本宮があり9月に開催される。 秋祭り翌日が敬老の日となり、毎年、町の老人会総出で後片付けに追われるため、お じいちゃんはお祭りが終わった翌日はいつも「敬老の日や言うのに、一番老人が働か されるんやから、世話ないで」と言って目をまわしていた。 そんなお祭りが始まったのは、江戸時代。みきた城主の殿様が五穀豊穣を祈願したことが始まりとされている。 お盆を過ぎると、子供達が練習するお囃子が町中に響き、皆がお祭りの準備に追われる。 牛頭町のおばあちゃん

          【おじいちゃんと蟹】

          【母】

          私の母たつ子は、牛頭町の私にとってのおじいちゃんおばあちゃんの末娘として生まれた。 御飯の支度や洗濯等の家事はおばあちゃんがいつもしていたし、上に姉であるぶうわもいたので、あまり家のことをする必要はなく育ったようだが、お手伝いもする良い子だった。 牛頭町では、子供部屋はなかったので、母は学校の宿題や試験勉強はもっぱら、皆が居るリビングでしていた。皆がTVを見ている中にいても気にならずに出来る人で、勉強もよくできた。 母は右目の視力が弱く、右目には少女漫画のキラキラ輝く瞳

          【おじいちゃんの優先順位】

          お昼時のいつもの牛頭町。食卓には切子皿に黒蕎麦が盛られている。今日はざる蕎麦だ。 「おじいちゃ~ん、お蕎麦できたよ」とおじいちゃんを呼ぶと、「よっしゃ行くわ」 とおじいちゃんがリビングの座椅子から腰を上げる。 私は冷蔵庫から麦茶とおばあちゃんの作った常備菜を取り出し、食卓に並べ、リビングからきたおじいちゃんと先に席についた。 おばあちゃんは、台所の棚から、刻みのりが入っている大きな瓶を取り出している。 「おばあちゃん、いける?」「大丈夫やで、はいこれ、タップリかけたら

          【おじいちゃんの優先順位】

          【石切神社の神様】

          ある時、牛頭町で母とおばあちゃんがいて、台所で集まって何かしら話しをしていた私は、 ちょうどおばあちゃんが出してくれたマスカットを房からとってはポンッと口に放り込み、 モグモグモグモグ食べていた。 おばあちゃんはその様子に目を細め 「やぁ、はなこちゃん、まぁ~~よう食べるよう になってなぁ~えぇ~まぁ~~。美味しいか?」と聞くので「うん、美味しい!」と答え、ポンッポンッと続けざまにマスカットを口に頬張った。 おばあちゃんは「ようまぁこんなに大きくなったもんやで、なぁ~た

          【石切神社の神様】

          【おじいちゃん女優さんと出会う】

          いつものように牛頭町のおじいちゃんの家に行く。 いつものように玄関を入り、リビングの座椅子の定位置に座っているおじいちゃんの横に腰を下ろす。 おじいちゃんは 「はなこちゃん、ようお越し、これ食べ」と いつものように、おじいちゃんのお菓子ボックスを出してくれる。 おじいちゃんのお菓子ボックスとは、時に大きな円柱や直方体の大きな缶に、色々なおじいちゃん好みのお菓子が入っていた。 私は「ありがとう、先に手洗ってうがいしてくるわ」と言って、リビング奥にある洗面台で手洗い・う

          【おじいちゃん女優さんと出会う】

          【スーパーダイニチ】

          「はい、あんたら、何にするんや?」とおばあちゃんは私と弟、従姉弟のふーちゃんに声をかける。カウンターの下の方で「僕チョコ」「私バニラ」「私ミックス」と皆口々に言うと、 「はいはい、ほな、黒1つ、白1つ、ミックス1つ、お願いします」とおばあちゃんはオーダーした。 ソフトクリームを、黒、白でオーダーするおばあちゃんにも、フードコートのお姉さんは顔色一つ変えず、慣れた手つきでクリームをコーンに絞りいれてくれる。 夏に牛頭町のおじいちゃん家にいくと、歩いて五分程のところにある『

          【スーパーダイニチ】

          【おじいちゃんと布袋さん】

          物心ついたときから牛頭町のおじいちゃんの家の飾り棚には布袋さんがいた。 約40㎝程の高さのその布袋さんは、瀬戸物の茶色の布袋さんで、大きな袋を後ろ手に、小顔で、口を少し開けて微笑み、ふくよかなお腹とおっぱいが、打ち合わせた衣の間から見えていた。 布袋さんの膨らんだお腹とおっぱいの様子が牛頭町のおじいちゃんとそっくりだったので、私は小さい頃、これはおじいちゃんだ(おじいちゃんを模して造られたものだ)と思っていた。 笑っている布袋さんの口にお金を入れると、お腹に落ちて貯まっ

          【おじいちゃんと布袋さん】

          【氷屋さん】

          「はな子ちゃーん」 「は~い おばあちゃん、何ぃー」と、おばあちゃんの呼ぶ台所にいくと、「ちょっと黒蕎麦買うてきてくれるか?」と、おばあちゃんはお財布から小銭を取り出していた。「うん。わかった、行ってくる!」預かった小銭を握りしめ、私は玄関へと向か う。 玄関には、おじいちゃんの大きな平たい黒革のつっかけと、おばあちゃんの小さなつっかけがあり、私は自分の靴には目もくれず、おばあちゃんのつっかけを履き、ガラガラガラッと勢いよく玄関を開ける。 「牛頭町の高野です言うてな~」

          【ぺぺ】

          おじいちゃんがいつも座っている座椅子の横にはサイドボードとキャビネットが一緒になった棚が置いてあり、そこには、お菓子の缶や記念切手、布袋さんの貯金箱等色々置かれているのだが、 ちょうど取り出しやすい高さのところには、分厚いアルバムが何冊も置かれていた。 おじいちゃんがきちんと整理して、●●年 家族旅行 □□ 等撮影日と撮影場所がきちんと貼られていた。 何冊もあり、おじいちゃんの職場での慰安旅行の写真から、ベトナムや香港等海外旅行に行った際の写真もあった。 おじいちゃんや