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ケ (137期山本)

突然ですが、あなたにとって大切なものはなんですか?

高校ボートの経験者だったりしない限り、
「4年間ボートに打ち込むぞ!」と決めて大学に入ってくる人はなかなかいないと思います。
現にただの女子高生だった私も入学当初、全くそんな気はありませんでした。

たまたま訪れた試乗会でボートを担ぐ先輩、揺らめく水面や光、新しい生活に胸をときめかせた日を昨日のように思い出します。

ただそれでも新鮮で楽しかった早起きやトレーニング、門限が一つ一つだんだん苦痛に感じる時期がありました。
続けるって、本当に難しいことです。

先日同志社の遠征に行った際に元オリンピアンの中野紘志さんに伺ったお話があります。
「ボートで日本一になれるなら掃除機の埃を喜んで食べられますか?」

未経験で頷ける人はいないと思います。
だって、
このブログを読んでくださっている方にとって
きっとボートなんて耳慣れない競技でしょう。

ハレとケの日があります。 

早慶戦で何千人に見守られて隅田川を漕ぐ日、
インカレで数々の強豪と腕比べをする日、
日本一になることができるかも知れない、
そんな、ハレの日。

それと対照的な変わり映えのしない日々を
民俗学的にケと表すことがあります。 

練習がなくなれば嬉しい。筋肉がつくご飯より美味しいものを食べたい。夜は遊びたい、朝は寝ていたい。 

そんな日常的な当たり前の欲求を捨てることは「埃」を飲み込むみたいに辛いと思うことが、確かにあります。

苦しい日に練習をやめないこと、遊びたい日も9時までに帰って夜一斉に掃除をすること。

大衆の目につくハレの日だけに
早慶戦に憧れて、日本一に憧れて
そのまま忘れていくことは簡単です。

ただなんの埃も飲まない人に
当然ハレの日は訪れず、
 
目的を見失ってしまいそうな程に
淡々と続くケの日々に
自分のハレの日を思い描いて進める
真っ直ぐな人はどこにでもいるわけではありません。


大事にすることは、大切になる、ことです。

先輩方にとってのボートって、私にとってのそれよりも大切なものなんだろうなと思う時が
いくつもあります。

それはきっと先輩方が、私よりも長い年月
いろいろなものよりも優先して、丁寧に、
なによりもボートを大切にしてきたからです。

そんな先輩方の背中を追って、 
日々を蔑ろにせず
時間と体力をかけて大切にすることが
少なくとも今の私にとっての
「頑張る」ことだって思っています。


ボートなんて知らない競技かもしれません。
埃なんて飲みたくなくて当然なのかも。

でも簡潔に言って、何事にしても
一生懸命やって何も得られないなんてことは
決してないのだと思います。

No pain, No gain
あなたにとって大切なものを
自分の手で増やしてみませんか?


 

137期 山本麻希

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