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近年わが国は医療の高度発達などにより世界一の長寿国になりました。

同時に高齢者の認知症有症率も上がり、今では65才以上の6人に一人が認知症有症者と言われています。

不動産を売却する依頼を受けた時は売主の意思の確認をします。

まず売却を依頼する仲介会社と媒介契約をする際の記名押印の時、次に買主との売買契約書調印の際の記名押印の時、最後に引渡および所有権移転登記時における司法書士の面談による意思能力確認と登記委任状等の記名押印の時、以上の3段階で売主の売却意思の確認を行います。

認知症者は売却意思の確認が困難になります。

数名の相続人が不動産を処分するために売却する場合に、重度の認知症者がいると意思能力の確認が出来ないので売却することが不可能になります。

この場合には成年後見制度を利用します。

管轄の家庭裁判所に申立をして審判を経て成年後見人を選任してもらいます。

成年後見人は認知症等で判断能力が不十分な方を代理して、金銭等の管理、契約などの法律行為を行います。

通常は親族が成年後見人に選任されます。

また、選任された成年後見人を監督する成年後見監督人が選任される場合もあります。

成年後見監督人は主に司法書士か弁護士が選任されます。

成年被後見人が住んでいるまたは住んでいた家を成年後見人が売却する場合は、家庭裁判所の許可が必要になります。

家庭裁判所は、売却の申立てがあれば売却の必要性、合理性を審判し許可を決定します。

申立てをすればなんでも許可が下りる訳ではありません。

例えば成年後見人が自分の事業資金を捻出するために売却の申立てをしても許可はおりません。

家庭裁判所は、成年被後見者の介護施設入所のための資金など、あくまでも本人の意向に沿う背景、心身の状態及び生活の状況などを鑑み許可の判断をします。

            <不動産売却許可書> 

では賃貸マンションや貸駐車場など成年被後見人の非居住用不動産の売却は?

非居住用不動産の売却は原則的に家庭裁判所の許可は不要です。

但し、成年後見監督人が選任されている場合は監督人の同意が必要になります。

ここから後見制度の弊害を話します。

僕が関与した後見制度による非居住用不動産売却では、監督人の同意を得られたケースは多くありません。殆どは監督人不同意で売却できませんでした。

監督人は同意後の事務手続き、責任等のリスク処理があるためNGすることが多いのです。

まず、不動産を所有している親族に認知症の傾向が出始めたら、相談してください。軽度の認知症であれば任意後見制度、家族信託等のご提案ができます。

任意後見制度、家族信託は次回の記事でご紹介しますね。

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