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中国する企業の進出形態別のメリットとデメリット

前回は「中国における現地法人の各形態の特徴」と題して、進出する際にどのような設立携帯があるかについて共有させて頂きました。

独資企業における進出形態のメリットとデメリット

独資企業として中国市場に進出する場合、その形態は次のような利点と欠点があります。

【メリット】

コントロールの全面性
コントロールの全面性とは、ビジネスの全ての意思決定を外国側が行うということを意味します。たとえば、あるアメリカ企業が中国市場に進出すると仮定しましょう。この企業が独資企業として進出した場合、全ての決定権がアメリカ本社にあります。中国市場のビジネス戦略から製品の価格設定、販売チャネルの選択まで、全ての意思決定が自社のビジョンに沿って行われます。

例えば、同社が新製品のローンチを計画しているとします。新製品のデザイン、価格設定、マーケティング戦略などは全てアメリカ本社の手で決定され、中国市場に適応するように微調整されます。これにより、自社のビジネスモデルやブランドイメージを一貫して維持し、市場に最適化した商品やサービスを提供することが可能となります。

この全面的なコントロールは、中国市場でのビジネスを自社のビジョンに合致する形で展開するための重要な要素と言えるでしょう。

投資利益の独占と情報保護
投資利益の独占と情報保護は、独資企業形態の重要なメリットです。これは、全ての利益を自社だけで享受し、重要な知識や技術情報を保護することが可能であるという意味です。

具体的な例としては、例えば、あるドイツの自動車メーカーが中国で独資企業を設立したとします。同社が開発した最新の電気自動車技術を中国市場で展開するといった場合、この技術を用いて生産・販売された車両から得られる全ての利益はドイツ本社に帰属します。

また、この形態の最大の特徴とも言えるのが、情報保護です。例えば、同社が開発した電気自動車技術の詳細情報は、独資企業形態をとることにより、他の中国の自動車メーカーなどから保護されます。これにより、自社の技術情報が競争相手の手に渡るリスクを最小限に抑え、自社の競争力を維持することが可能となります。

【デメリット】

資本と人材の確保
独資企業としての進出には確かに資本と人材の確保が必要で、その負担は大きな課題となることがあります。

例えば、アメリカの高級化粧品ブランドが中国に独資企業として進出する場合を想像してみましょう。最初に必要となるのは事業を始動させるための資金です。店舗の賃貸料、商品の製造費、マーケティング費用など、すべてのコストを自社で負担する必要があります。これは大企業であっても一定の負担となります。

次に、人材の確保です。中国の消費者に合った商品開発やマーケティング戦略を練るためには、現地の市場を理解する人材が必要となります。また、店舗を運営するためのスタッフも必要です。外国からの新規進出であるため、これらの人材を新たに採用する必要があります。

このような資本と人材の確保は、進出初期における最大のハードルとなります。この負担を軽減するためには、進出初期から利益を上げることが重要となりますが、新市場での成功は必ずしも保証されていないため、リスク管理も同時に行う必要があります。

ローカルとの調整
中国政府や地元企業との調整が難しいという点を具体的な事例を挙げて考えてみましょう。

例えば、ある欧州の電子機器製造企業が中国に独資企業として進出したとしましょう。製品の特性上、その製造プロセスでは一部の特定の原材料が必要となります。しかし、その原材料は中国では環境法等の規制により、取り扱いが制限されているものでした。

このような場合、企業は中国の関係機関との交渉や調整を行う必要があります。規制の解釈や適用についての確認、例外的な許可の申請など、ローカルの法律や規制に精通した専門家の助けを借りつつ、繊細かつ複雑な調整作業を進めることになります。

また、地元の企業との関係調整も必要です。製品を市場に広めるためには、地元の販売チャネルやサプライチェーンに組み込まれることが不可欠で、これには地元企業とのパートナーシップが重要となります。しかし、新規進出企業が信頼関係を築くまでには時間と労力が必要となります。

これらの調整作業は、言葉の壁や文化の違い、ビジネス習慣の違いなど、多くの困難を伴う可能性があります。これらの課題を克服するためには、現地のビジネス環境を理解し、適応する能力が求められます。

合弁企業

合弁企業形態には以下のような特徴があります。

【メリット】

中国側のリソース活用
例えば、ある欧米の自動車メーカーが中国市場に進出したときのケースを考えてみましょう。この企業は中国の既存の自動車メーカーと合弁企業を設立することで、中国市場にスムーズに進出しました。

中国側のパートナーはすでに現地での製造施設、供給チェーン、販売ネットワークを持っていました。このため、外国企業は初期投資を大幅に削減することができ、中国市場への迅速な進出が可能になりました。また、中国側のパートナーの人材は、現地の法規制、ビジネス習慣、市場動向に精通しており、これにより外国企業は市場への適応を早め、ビジネス展開を円滑に進めることができました。

さらに、中国側のパートナーが提供する販売ルートやマーケティングのノウハウは、欧米企業が中国市場で製品を効果的に売り出す上で極めて有効でした。このように、中国側のリソースを活用することで、初期の投資負担を軽減し、ビジネスを迅速に立ち上げることが可能となります。

国内市場参入の容易さ
たとえば、アメリカの大手IT企業が中国市場への進出を考えたとき、彼らは中国のローカル企業との合弁を選びました。中国には自国独自のインターネット規制や政策が存在し、海外企業が単独での進出を図ると、これらのハードルが非常に高くなります。

しかし、合弁パートナーとして選んだ中国の企業は、この種の規制に対して独自の対策を持っており、さらには政府との良好な関係も築いていました。その結果、アメリカのIT企業は、中国市場にスムーズに進出し、業務を展開することができました。

また、中国側のパートナーは既に広範な顧客ベースを持っており、そのネットワークを通じて新商品の販売を促進することができました。このように、中国側のパートナーと協力することで、アメリカのIT企業は中国市場へのアクセスを容易にし、ビジネス展開を迅速化することができました。

行政手続きの容易さ
例えば、ドイツの自動車製造企業が中国市場に進出する際には、地元の中国企業との合弁を選びました。この中国企業は、その地域での長い経営履歴と政府との密接な関係を持っていました。

これにより、ドイツの自動車製造企業は、必要なビジネスライセンスや運輸部門からの承認、そして地方政府からの土地使用許可など、様々な行政手続きを円滑に進めることができました。これらの手続きは、中国におけるビジネスの立ち上げには欠かせないもので、特に海外からの企業にとっては大きな障壁となります。

しかし、中国側の合弁パートナーの存在により、これらの行政手続きはスムーズに行われ、ビジネスの開始が大幅に早まりました。また、中国側パートナーの協力により、その後のビジネス運営においても各種規制や法令の遵守に必要な手続きが容易になり、企業の運営に対する大きな支援となりました。

【デメリット】

経営対立の可能性
例として、大手米国の食品メーカーが中国の地元企業と合弁を結んだ事例を挙げてみましょう。初めは順調に事業が進んでいましたが、数年後、経営方針の違いが表面化し始めました。

米国の食品メーカーは、市場の急速な成長に対応するために大規模な設備投資を行い、さらに新製品開発に力を入れる方針を打ち出しました。これに対し、中国側のパートナーは現状維持を望み、慎重な経営を求めました。

また、労務管理についても、米国側が中国の労働法に則った適正な処遇を提唱する一方で、中国側は既存の経営体制を維持したいと考えていました。利益分配についても意見が合わず、これらの違いは徐々にエスカレートし、双方の間に大きな対立を生み出しました。

この事例から、合弁企業を設立する際には、出資する企業間の経営方針や文化の違いを深く理解し、事前に対話を重ねて共通の理解を得ることが重要であることがわかります。

投資利益の非独占
大手欧州の自動車メーカーが中国の企業と合弁企業を設立した事例でお話しします。この自動車メーカーは技術力とブランド力を武器に、中国市場における高いシェアを獲得しました。この成功は、売上高と利益を急増させ、経営を大いに活性化させました。

しかし、それは全ての利益が自社に回るわけではありませんでした。なぜなら、合弁企業を通じての成功であるため、その利益は中国側のパートナーと分け合う必要があったからです。すなわち、投資利益は独占できず、合弁パートナーとの間で分配されました。

このように、合弁企業形態では投資利益を独占することは難しく、そのための戦略やパートナーシップ構築が求められます。ただし、逆に考えれば、リスクも共有できるというメリットもあります。

受け入れるリソースの問題
あるアメリカの製造業者が中国の企業と合弁でビジネスを始めたときの事例があります。このアメリカの企業は、中国企業の提供する施設と人材により、直ちに生産を開始することができました。これは初期投資を大きく抑えることができ、中国市場への早期進出を実現した点で大きなメリットでした。

しかし、一方でこのアメリカ企業は、中国側から提供された施設が老朽化していたこと、人材が余剰で能力にばらつきがあったことに直面しました。老朽化した施設の更新によるコスト増や人材育成の課題が生じ、結果的には運営コストの増大を招いたのです。このような課題に対処するためには、合弁事業を開始する前の事前調査が重要となります。事前調査によって、施設の状態や人材の質を把握し、適切な投資計画や人材戦略を策定することが求められます。

技術流出のリスク
このリスクについての具体的な例として、ある自動車製造企業の経験を挙げましょう。この企業は中国の企業と合弁事業を開始し、高度な技術と製造プロセスを持ち込んだのですが、当初は技術秘密保持契約の重要性を十分に理解していませんでした。

そして、数年後に中国側の企業が同様の製品を独自に製造し始めるという事態が発生します。その製品は、合弁事業で使用していた技術と製造プロセスを基にしていたのです。この企業は、合弁企業の初期段階で技術秘密保持契約を締結していなかったため、技術の流出を防ぐ手段を持たなかったのです。

このような事例から、特に技術を重要な競争力としている企業は、合弁事業を開始する際には技術秘密保持契約の重要性を理解し、適切な契約を結ぶことが重要であると言えます。

現物出資の評価問題
この問題を理解するために、不動産を出資するシチュエーションを考えてみましょう。例えば、中国の企業がビルを現物出資として提供したとします。このビルの価値は、エリア、建築年数、建物の状態、地元の不動産市場など多くの要素によって決まります。

しかし、中国のパートナーが提供する情報に全て依存せざるを得ない外国企業は、そのビルの真の価値を適切に評価することが難しいかもしれません。そして、このビルの価値を過大評価してしまった場合、企業はその差額に相当する金額を損失することになります。

また、他の現物出資、例えば機械や設備の場合も、その状態や性能、メンテナンスの状況などを評価するのは一筋縄ではいきません。これらの理由から、現金での出資が現物出資に比べて評価がしやすく、合弁企業の出資バランスを公正に保つ上で有利とされます。

 合作企業

【メリット】

契約ベースの合作企業では、契約が全ての取り決めを網羅しているため、その内容に忠実に行動するパートナーとの信頼関係が絶対に必要となります。

例えば、ある日本のIT企業が中国に進出する際、地元企業との契約により合作企業を設立したとします。契約では、日本企業が最先端の技術を提供し、中国企業が地域に精通した営業とマーケティングを担当するという役割分担が定められました。

しかし、中国企業の経営陣が交代し、新たな経営陣が契約の内容に納得できなかったとしたらどうでしょう。契約を破棄し、新たな条件を提示する可能性があります。これは、日本企業にとって予期しないリスクとなり、その結果、ビジネスが停滞する可能性があります。

これは、契約に基づく合作企業においては、契約の内容を共有し、その精神を理解し、尊重する中国側との信頼関係が重要であることを示しています。そのため、パートナーとの良好な関係を築くためには、契約の内容だけでなく、ビジネスの目的やビジョン、価値観を共有し、互いの意見を尊重し合うことが重要となります。

【デメリット】

合作企業においては、ビジネスに対する各出資者の責任範囲、特に外国側の優先回収条件などは、紛争が発生したときに大きな影響を及ぼします。また、法的な保証が明確でないことはリスクを高めます。

例えば、仮にある日本の製薬会社が、新薬の研究開発におけるリスクを分散するために中国のバイオテクノロジー企業と合作企業を設立したとします。契約では、双方が等しく出資し、新薬の特許権を共有することが取り決められました。

しかし、ある日、新薬の開発に失敗し、合作企業は大幅な損失を出してしまいました。この時、契約に出資者責任や外国側の優先回収条件が明確に記載されていなかったため、どちらがどの程度の損失を負うべきかについて紛争が発生しました。また、中国の法的保証が不十分だったため、日本側は投資した資金を全額回収することができませんでした。

この事例は、合作企業を設立する際には、紛争が発生したときのために出資者責任や優先回収条件を含む、具体的な取り決めを行うことが重要であることを示しています。また、法的保証があいまいなままビジネスを進めると、予期しないリスクが発生する可能性があることも警戒すべきです。

外商投資会社

中国での株式上場を目指す場合、企業形態として有限会社ではなく、株式会社の設立が必要です。この選択は、事業の拡大や認知度向上、さらなる資金調達といった多くのメリットを生むものです。

設立方式としては発起設立方式と募集設立方式の二通りがあります。発起設立方式では発起人が出資して設立し、募集設立方式では広く出資を募って設立します。既に設立されている有限責任会社があれば、その組織を変更して株式会社にすることも可能です。ただし、直近3年間連続で利益を出していることが必須条件となります。なお、設立時の最低資本金は撤廃されています。

発起人については、中国の会社法に定められた条件を満たすことが求められます。さらに、少なくとも1名の発起人が外国株主であることが必要です。募集設立方式を選択した場合は、少なくとも1名の発起人が必要となります。

例として、ある日本の技術企業が、中国市場における拡大を図るために、中国で株式会社を設立し、上場を目指すとしましょう。彼らは、初期の投資を賄うために、外国株主である複数の発起人とともに発起設立方式を選択しました。また、直近3年間、企業は着実に利益を出していました。その後、企業は成功裏に中国で上場し、更なる資金調達と成長を達成しました。

このような例から、中国で株式会社を設立し、上場を目指すことが、企業の成長戦略の一部としてどのように役立つかが分かります。また、それには具体的な条件と手続きが伴いますが、それらを満たし進行することで、潜在的なビジネスの機会を活用することができます。

駐在員事務所

駐在員事務所の設立と運用は、コストの観点から大きなメリットを提供します。具体的には、その設立費用と運用維持コストが、他の企業形態と比較して低いため、初期投資が少ないという利点があります。

しかし、その一方で、駐在員事務所の活動範囲は限定されています。その主な目的は本社のための連絡や調査活動の実施となります。このため、駐在員事務所では直接的な営業活動を行うことはできません。また、駐在員事務所では直接雇用を行うこともできません。そのため、労働服務公司を利用して人員を確保する必要があります。

例えば、日本のある製薬会社が、中国市場の可能性を探るために駐在員事務所を設立したとします。設立費用と運用維持コストを低く抑えることができたため、初期の投資リスクは最小限に抑えられました。また、中国の医療市場の情報を収集し、本社に連絡する役割を果たすことで、会社の中国戦略を具体化する上で重要な情報を提供しました。

一方で、同社は駐在員事務所では直接の営業活動や雇用を行うことができないという制約に直面しました。そのため、中国での具体的なビジネスを進めるためには、現地の労働服務公司を通じて人員を確保したり、別途法人設立を検討する必要がありました。

このように、駐在員事務所はコストの観点から見れば有効な選択肢ですが、その活動範囲は限定されているため、全体のビジネス戦略と合わせて適切な形態を選択することが重要です。

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