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行政書士の市場規模、売上高などを統計から見る

ふと気になり、行政書士業の市場規模と売上高について調べました。ネットでは、市場規模300億とか400億とか言われてますが、いずれも根拠不明だったので、政府統計などをあたりました。

・概要

・行政書士の市場規模(取引総額)は、約620億円(2021年)

・行政書士一人あたり売上高は平均約460万円(2021年)

・行政書士の約8割が年間売上高500万円未満(2018年)


・行政書士登録者数は年々増加

まず、行政書士の登録者ですが、日本行政書士会連合会によると、令和5(2023)年10月1日現在の登録者数は、個人法人合わせて、53,248事業者(個人51,973人、法人1,275事業者)です。
平成24(2012)年の行政書士登録者は、42,177事業者ですので、11年で約10,000(19%弱)の増加です。

・経済センサスによる売上推計

令和3(2021)年の経済センサスでは…
行政書士の事業所数は6,717
就業者は13,320人
売上(取引)合計額は約620億円(個人からの売上180億円、個人以外からの売上440億円)
したがって、就業者1人あたりの売上は、約465万円です。

平成28(2016)年の経済センサスでは…
行政書士の事業所数は5,004
就業者は10,125人
売上合計額は約400億円
したがって、就業者1人あたりの売上は、約400万円です。

平成24(2012)年の経済センサスでは…
行政書士の事業所数は3,984
就業者は8,554人
売上合計額は約300億円
したがって行政書士1人あたり売上高は約350万円です。

・行政書士数のバラつきについて

各統計で、行政書士の人数にばらつきがあります。
日本行政書士会連合会発表の数字は、登録者数をそのまま発表してるので嘘はないですが、経済センサスの数字に比べて多すぎます。
登録だけして事業を行わない方が多くいるのか?とも考えましたが、登録するとそれなりの会費(年7-8万円)がかかるので、それは考えにくいです。
おそらく、経済センサスにきちんと協力した人が少ない、ということかと思います。
だとすると、経済センサスの売上合計額は信憑性に乏しく、実態はもっと多いと推測されます。
ただし、1人あたりの売上は、単なる按分なので、信憑性があります。

・行政書士の市場規模推計

では、経済センサスに未回答の行政書士の売上について、経済センサスの数字、つまり1人あたり400万円とか465万円とかを適用して推算できるといえば、個人的感想では、それは無理です。

印象論ですが、経済センサス未回答の行政書士の多くは、回答した行政書士よりも、売上は低いと思います。
とはいえ実態はもちろん未知数です。

したがって、行政書士の市場規模については、経済センサスの数字+αということで推定しておくのが無難と思います。

・問題は一人あたり売上高

また、問題は、市場規模の全体額よりも、事業者あたりの額です。
令和3(2021)年経済センサスによれば、約465万円が行政書士一人あたりの売上高です。
これが平均値として、いわば行政書士一人あたりに割り当てられた金額となります。
この辺の評価は人によりけりです。

・経済センサス比較

平成24年(2012)と令和3年(2021)の経済センサス各データを比較します。

・事業所数
3,984から6,717と、2,733(1.69倍)増加。

・就業者数
8,554から13,320と、4,766(1.56倍)増加。

・売上合計額
約300億円から約620億円と、約320億円(2.07倍)増加。

・1人あたり売上高
約350万円から約460万円と、約110万円(1.31倍)増加。

就業者数の1.56倍増加に対して、売上合計額が2.07倍増加しています。
これは、1人あたり売上高が1.31倍増加したためです。
つまり、1人あたりの稼ぐ力が上がった結果、市場規模が約2倍になったということです。

稼ぐ力が上がったとはいえ、平均売上高約460万円は、高いとは言えません。
というか、平成24年経済センサスの平均売上高約350万円というのは、これでは生活できない気がしますが、統計が嘘をついてるわけではありません。
おそらく、主たる生計手段が他にあり、行政書士はサブ業務である方が多かったのだと思います。
他の説明もできるかもしれませんが、データ不足でなんとも言えません。

・行政書士売上高調査

行政書士の実際の年間売上高については、日本行政書士会連合会が平成30(2018)年にアンケートを実施しています。
約4,300人の行政書士から得た回答をまとめたもので、信頼性があります。
アンケート結果は下記のとおりです。

・行政書士の年間売上高のアンケート結果

①500万円未満
3,415人(78.0%)
②1000万円未満
492人(11.3%)
③2000万円未満
230人(5.3%)
④3000万円未満
80人(1.8%)
⑤4000万円未満
35人(0.8%)
⑥5000万円未満
23人(0.5%)
⑦1億円未満
36人(0.8%)
⑧1億円以上
11人(0.3%)
⑨未回答
16人(0.4%)

約8割が、年間売上高500万円未満です。
500万円未満のゾーンの内訳がわからないので、平均値は出せませんが、経済センサスの結果と矛盾はしないと思います。

・傾向と予想

・行政書士登録者数は増加傾向
この傾向は今後も当面は続くと思います。
学歴要件がなく、法律資格としては比較的容易な行政書士資格は魅力的に見えるのかもしれません。

・市場規模は拡大傾向
行政書士数増加に伴い、需要(顧客)の掘り起こしがされ、市場規模(取引総額)は増加してきたものと思われます。
ただ、この傾向がどこまで続くかは不透明です。
行政書士のメイン業務である許認可業務の量は、対象事業者(例えば建設業者)の数に依存しますが、対象事業者が目立って増加傾向とは思われないので、いずれ需要は頭打ちすると思います。

・行政書士一人あたりの稼ぐ力は増大傾向
これは今後も続いてほしい傾向ですが、需要が頭打ちした場合は、厳しいかもしれません。

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