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異形者達の備忘録-6

火山葬

バイト先の蕎麦屋に、またあの人が来た、今日は3人連れだ。注文を取りに行くと「ねえ、この間の雑誌読んでくれた?」と聞くのだ。いいえと答えると、ありがたい講釈を始めそうになる。店の奥さんが飛んで来て、「すみません、お客様!ご注文が無いようなら、席をお譲りいただけませんか、大勢お待ちなので」と言った、彼女たちは「じゃあ、ざる蕎麦三つ」と言っていた。バイト先は席が32宅ある。次々に来店する客に忙殺され、気が付いたら、宗教勧誘グループは居なくなっていた。

その日は、来客に切れ目がなくて、1時間の残業となった。ここの麺つゆは本当に美味しくて、それを使ったカツ丼は絶品なのだ。賄いの夕食をいただき、風呂もいただいて部屋に帰った時はもう10時半を回っていた。全く疲れた感覚は無かった。暗い部屋では、すでにノートパソコンが起動しており、ブルーライトの筋が光っていた。買ってきた飲料を一口飲んで、早速開く

いつもの様に地図が映っており、グングンと拡大して行く、そこは、溶岩を噴き上げる活火山のある島のようだ。火口手前にちょとした広場があり、ボロボロの4トントラックが見える。他にマイクロバスもあり、会話が聞こえてくる。

今日は3体か、さっさと済ませようよ、待て待て、まだ観光客がいるからまずいぞ、毎回 嫌だけどね、やるのは夜中だね、熱いコーヒーまだあったら、くれよ、おう! たっぷりあるぜ ほらょ

この風景を見ていたら、突然とんでもない情報が、頭に入って来たのだ。この連中は、ある宗教団体で、そこの教祖と言うのは、お金が大好きな腹黒い人物だった。宗教団体を始めたのも、金になりそうだと考えてのことだ。一応葬儀なども行っていた。そんな中、ある筋の組員が2名ほど入信し、その方から、葬儀は密葬で簡単なもので良いので、ご遺体を人の目に触れずにどこかに埋葬だけしてほしい。という依頼があった。おまけにそのお心付けの金額が八桁だった。後先考えずに引き受けた。その時教組が考えたのか、火山葬であった。海洋散骨などもあることから、将来的には、火葬もしないで直接マグマへ、ご遺体は地球に戻るのみで何も残らない、やることは、お別れの儀式のみ!こんな火山葬もありになるかもしれない、ただ今の時代においては、死体損壊及び遺棄に当たり法律違反となる。従って闇で行う!そして、これが口伝で闇に広がり、凄い儲けをもたらした。宗教団体には、いくらでも金が入ってきたのだ。それを資金に、団体は膨張した。

やがて、時刻は深夜となり、観光客はおろか、あたりは人っ子一人いない暗闇となった。4tトラックのホロが外され、大型のドローンが縦長の袋を持ち上げ、火口の上で静止した。袋はラジコンで外され火口に落とされた。それを3回繰り返し、念入りに帰り支度をしながら、来週は5本もある。堪らんなあ!稼ぎ放題だぜ!ニヤニヤとする彼らの足元がグラグラと揺れた。おい!地震か?急ごうぜ! その時背後で轟音と共に島の火山は噴火した。そして噴火の規模には不釣り合いな大規模な溶岩流。火砕流が起こった。

山頂付近にいた彼等は、悲鳴をあげる暇もなかった。そのまま溶岩の下に飲み込まれたのだ。翌日、噴火の調査をするヘリコプターでは、巻き込まれた観光客もおらず、犠牲者は無し! と報告が出た。

私たちが、この世から消えたことを家族の誰も知らないのです。

気が付いたら、午前4時 窓の外はダークブルーになっていた。あと1時間ほどで日が登るだろう。


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