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[詩]怖いのはいつだって、高い所にいると気づいた瞬間だ

高所恐怖症のわたしは、 高いところへ登れない 卒業文集に書いた将来の夢は高いところにあって、 見上げるだけで足がすくんでしまう それでも 一段先だけを見つめて 一歩踏み出すことだけに全力をのせて 着実に踏みしめる 夜になると考える 落ちたら死んでしまいそうな所に家を建てて 朗らかな朝を迎えるわたしを 浴室の鏡にシャワーのしぶきが当たって 未来の幻想をみせる 幾度の夜も越えて、 わたしはここに立っている

    • [詩]海へ還る月

      99%の運命は叶わない 海のさざなみが寄せては足先を蝕み 返っては胎内の安寧をもたらす また寄せて また返り いつのまにか爪の先が波にさらわれ、 第一関節、足、足首が海に還っていった だから海は嫌いだと言ったのに それでも海に立ち続ける 胎内の音を少しでも長くききたくて 脚を海に還すのも厭わないから 安寧の中を自由な心で泳ぎたくて 99%の満月になれなかった月が 脚のない身体を照らして慰める あとの1%の運命なんて、 掴み取ってみせるって かっこつけていたいよな

      • [詩]ベルリオーズの鐘が鳴る

        いつか私を滅ぼすほどに大きくなった火は、 あの頃に取り残してきた くべた薪は湿っていたようで、 上手に火が回らない バラバラとほどけそうな私を 私の両腕で抱きしめる きつく、きつく抱きしめると 身体の内だけが煉られて熱い あの頃に取り残してきたはずの火は、 私を滅ぼすために残っていたようだ ベルリオーズの鐘が待っている バラバラになりはじめた身体を押さえつけて 階段の一段一段を踏み締める しけた薪はもはや生きる意味を失った 私の目も耳も鼻も役目を果たさず ただ真ん中

        • [詩]流れ星

          変わらないものはないと気づいた時から 僕は冷たい奴になった そばにいる大切な人が次の瞬間いなくなっても 夜通し泣いて、泣いて、泣き尽くして 気づくと空が明るくなって平気な顔してる  全部に終わりがあって それが今だっただけなんだって ぽっかりできた日向にはお揃いで片割れのマグカップ1つ 一晩経ってコーヒーはすっかり冷めた そんな自分が強くて好きだった あなたと会って 失うことが怖いと気づかされた時から 僕の心はくもり空を知った お揃いのマグカップは買わなかった あな

        [詩]怖いのはいつだって、高い所にいると気づいた瞬間だ

          [詩]最後の晩餐

          分け与えたるはパンと葡萄酒 乾杯を合図に蝕まれ始める身体 樽の潤沢な血はもはや干からび 絆をつたって脈々と継ぐ 13人のうち、1人はあえぐ パンと葡萄酒には毒が入っていたから 神に逢える毒 人間を殺す毒 ワルツは終盤に差し掛かり 愛、憎しみ、情け、哀しみ すべてが渦を巻いて 三位一体を作り上げるはずじゃなかったの?

          [詩]最後の晩餐