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何度も聴きたいロック名盤をご紹介 ⑫

アーティスト:U2
名盤:ヨシュア・トゥリー

1987年リリースのU2の5thアルバムTHE JOSHUA TREE(ヨシュア・トゥリー)は前作と同じくブライアン・イーノにプロデュースされ、アルバムは世界中で大ヒットを記録しました。
ビルボード誌アルバムチャートでの9週連続No.1、アメリカでの売り上げだけで1000万枚を超えています。
また、他の多くの国々でもNo.1を獲得し、全世界で2500万枚売れた、モンスターアルバムです。
アルバムのタイトルともなっているヨシュア・トゥリーとは、アメリカ南西部の砂漠地帯に生えるユッカの樹です。
ジャケットワークも素晴らしいです。
今回U2は、アメリカをアルバムのテーマとして選びました。
音楽的にも、ブルースやゴスペル、フォークロックなど、いろんな要素のアメリカを取り入れています。
基本的なU2サウンドは変わらないままでアメリカ的要素を取り入れたおかげで、唯一無二のアルバムができあがったと言えるでしょう。
ブライアン・イーノのプロデュースは前作に引き続き、まろやかで聴き易いサウンドに仕上げています。
ジ・エッジは、今作で完全に彼の世界を確立したと言えるでしょう。
彼の切れ味鋭いギタープレイと、ディレイなどを用いた絶妙な音作りは、その後の多くのバンドの指標ともなりました。
加えてボノの熱いヴォーカルはいっそう輝きを増しています。
僕がU2を聴いていたのはこのアルバムまでで、これ以降はまた違った音楽性に変貌していきます。
U2はデビューから疾走するリズム、躍動感が特徴でしたが、アルバムを発表するごとにスローな曲が多くなってこのアルバムでピークを迎えたと思います。

  1. "WHERE THE STREETS HAVE NO NAME"
    イントロの音はブライアン・イーノによる環境音楽がいい感じで全体を包んでいる感じになってます。
    しかし、その後に始まるギタープレイが素晴らしいです。
    この部分だけで、このアルバムは成功するに違いない、と多くの人は感じたのではないでしょうか。
    そしてそこにベース、ドラムが加わっていき、バンドの音の厚みが増していきます。満を持してボノが静かに歌い出します。
    ヴォーカルの後ろでは、ずっとジ・エッジのカミソリギターリフがジャカジャカとリフを刻み続けます。
    まさに芸術の域に達しているといっても過言ではないでしょう。

  2. "I STILL HAVEN’T FOUND WHAT I’M LOOKING FOR"
    スローでゆったりとしたリズムのこの楽曲はアメリカのゴスペルミュージックの影響を受けているようです。
    バックの合唱隊のようなコーラスは、ジ・エッジとブライアン・イーノらによるものです。
    メロディーもアレンジも非常に心地よい楽曲となってます。

  3. "WITH OR WITHOUT YOU"
    シンプルなのになぜこんな名曲が出来るのだ、と驚かされる素晴らしい楽曲です。
    イントロは非常に静かなドラムとシンセの音からゆっくりとスタートし、
    そこにベースが非常に地味に、そしてしっかりとリズムを刻んでいきます。ヴォーカルのボノは低音で、抑えたヴォーカルです。
    しかしサビに入ると、いつもの切れ味鋭いカミソリギターリフが登場します。
    ボノのヴォーカルも次第に熱量を増していき、ラリーのドラムも力強さを増していきます。
    ラストもいったんクールダウンして、それからもう一度伴奏を繰り返して静かに終わっていきます。非常に美しい名曲となっています。

  4. "BULLET THE BLUE SKY"
    これは怒れるロックソングです。
    ギターソロも、いつもの爽やかさは見られません。
    歪んだ音で激しいメロディを奏でています。
    そして、当然ながらボノのヴォーカルにも怒りがあふれているように聞こえます。
    単調に繰り返される、太いベース音やドラムの音からも怒りが読み取れる気がします。

  5. "RUNNING TO STAND STILL"
    一転して、静かで優しい楽曲となります。
    この曲はアメリカのフォーク・ロックやアコースティック・ブルースの影響を大きく受けています。
    イントロのブルージーなギターなんて、これまでのU2にはなかった音ではないでしょうか。とても安らげる楽曲になっています。

  6. "RED HILL MINING TOWN"
    この曲は、イギリスでの鉱山労働者全国組合のストライキにフォーカスを当てた、炭鉱労働者がモチーフとなった楽曲です。
    このようなシリアスな社会問題を、楽曲に含めて提示する、U2らしい曲ですね。
    そして曲としても一定のクオリティを保っているところが彼らのすごいところと思います。

  7. "IN GOD’S COUNTRY"
    イントロからジ・エッジのきらきらしたギターが踊る爽快なイメージの楽曲です。
    ポップでキャッチーなメロディとは裏腹にテーマは砂漠となっています。

  8. "TRIP THROUGH YOUR WIRES"
    この曲は全くこれまでのU2には見られないブルースソングです。
    ボノのハーモニカが、なかなかいい味を出していますね。
    非常にアメリカナイズされてはいますが、ギターの使い方はやはりジ・エッジ独特のものです。
    アメリカンブルースをアイルランドのU2が取り入れるとこうなる、という見本のような楽曲となっています。

  9. "ONE TREE HILL"
    この曲はバイク事故で亡くなった、バンドのローディー、グレッグ・キャロルに捧げられたものです。
    グレッグらが案内してくれた丘に一本立っていた木の思い出を曲にして書き下ろしました。
    そのような背景を思って聴くと、後半と最後のボノの歌声が熱く迫ってきます。

  10. "EXIT"
    非常に静かな前半から、狂気に満ちたような強いサウンドへと変化していきます。アルバム中最も激しい曲となっています。
    後にこの曲に影響を受けた人間によって殺人事件が起こされ、それ以来ほとんどライヴでは演奏されていない、というエピソードがあります。
    アルバムの中では異質とも思えるダークな激しさが、ラストの曲の前に配置されています。

  11. "MOTHERS OF THE DISAPPEARED"
    環境音楽のような壮大な背景音が途中から入ってきて、荘厳にアルバムを閉じていきます。

1stシングル WITH OR WITHOUT YOU ビルボード誌シングルチャート3週連続No.1、
2ndシングル I STILL HAVEN’T FOUND WHAT I’M LOOKING FOR シングルチャートNo.1
3rdシングル WHERE THE STREETS HAVE NO NAME シングルチャート第13位
4thシングル IN GOD’S COUNTRY シングルチャート第44位

以上が今回のアルバム評となります。ロック入門の一助になればと思います。ご参考になればうれしいです。

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