人生は苦しみと絶望の連続である
濁世(じょくせ)には濁世の生き方がある————。コロナ禍で再注目された累計320 万部超の大ロングセラー『大河の一滴』(五木寛之、1998年刊)から試し読みをお届けします。
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こう考えてみると、どんな人にも人生のふっとしたおりに「心が萎(な)える」という状態が必ずあるものなのだ。しかし、考えてみると、そこには人生に対する無意識の甘えがあるような気がしないでもない。そもそも現実の人生は決して楽しいだけのものではない。明るく、健康で、幸せに暮らすことが市民の当然の権