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「ネタでは勝てない…」水溜りボンドがYouTubeを始めたきっかけ #2 ふたり。

YouTuberになりたかったんじゃない。ずっとふたりでいたくてYouTuberになったんだ……。チャンネル登録者数400万人超、大人気の水溜りボンドが放つ待望の初エッセイ『ふたり。』。

ガキ大将のトミーと、気にしいのカンタ。それぞれの幼少期から、ふたりが出会った大学での生活、毎日投稿6年間の舞台裏、そしてトミーの活動休止中のことまで、動画では見せられなかったふたりの姿が詰まった本書から、一部を抜粋してお届けします。

*  *  *

ネタでは勝てない(トミー)


「キングオブコント」の出場は、カンタが言い出したと記憶している。

やる以上は決勝に行きたかった。全国にカンタの才能を知ってもらえるチャンスだった。
 
僕らは僕らなりに、真剣にネタを磨き上げ、大会に臨んだ。1回戦は突破したものの、もうひとつ上には進めなかった。残念な結果だったが、仕方ない。すごく悔しかった。
 
でも正直なところ、真剣にやってみて、本気のプロの芸人の皆さんとの実力差を、思い知らされた。悔しい反面、さっぱりした気持ちもあった。
 
どうしたって、埋められる開きではない。僕らの戦えるフィールドではまったくないのだなと学ばされた。
 
横並びで戦って、水溜りボンドが勝てる可能性は皆無だ。「ここで頑張っても、意味がない」。もしも運良く上がれていたとしても、その認識は変わらなかっただろう。

「キングオブコント」の結果が出た直後、カンタから「これからどうする?」という相談を受けた。ふたりの気持ちは、決まっていた。水溜りボンドを解散するつもりは、全然ない。ただ活動を続けていくベースが、コントのネタではないことが歴然となってしまった。
 
では、続けるのに何をすればいいのか?

カンタは「これからYouTubeやるの、どうかな?」と聞いてきた。
 
YouTubeは当時、暇なときに見ているぐらいで、どんな世界なのかはよく知らなかった。
 
とっさに、こう答えた。「カンタ、それいけそう?」と。

カンタと一緒にいられるなら……


「いけそう?」というのは何気ない言葉だったけど、僕たちには重要なものだったかもしれない。

売れるのか、有名になれるのか、という意味もあるが、僕にとって大事なのは、水溜りボンドとして、カンタと一緒にいられるかどうかだ。一緒にやっていけそうもないなら、その選択はできないと思った。
 
カンタは僕の答えの後、「待って。少し調べる」と、自分でいろいろYouTubeについて調べたらしい。カンタも、YouTubeには当時、全然詳しくなかったのだ。
 
そして、あらためて「いけそうだ」という結論を持ってきた。
 
カンタがいけると判断した時点で、僕の気持ちは決まっていた
 
YouTuberとしてのし上がっていこうとか、仕事にするための意欲は、このときは特になかった。そもそもYouTubeの動画をつくる知識が、まったくない。僕にいたっては、YouTubeアプリさえスマホに入っていなかった有様だ。
 
それでも、「やる!」と決めたのは、カンタが、やると言ったから。カンタと一緒にいられるから
 
YouTubeを始めた理由は、他にひとつもなかった。
 
相方もきっと、同じことを思っている。僕たちは、YouTuberになりたくてなったわけじゃない。ふたりで居続けるための決断の先に、たまたまYouTubeがあったのだ。
 
最優先は、僕とカンタが、ずっと面白がれることだ。YouTuberとして成功するための具体的なビジョンはあまりなかった。なぜか自信はあったが。
 
良くも悪くも、完全に無欲で、計算をしていなかった。ほぼ丸腰での無策な参入は、当時のYouTuberのなかでも珍しかっただろう。

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