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#4 平成ネット史 永遠のベータ版

② インターネット黎明期の苦労

つながりたいのにつながれない

「ウィンドウズ95」の登場でインターネットにつなぎやすくなったとはいえ、いろいろな苦労がありました。

光回線もWi-Fiもない時代。パソコンをインターネットにつなぐために使っていたのが「電話回線」です。「ピッポッパッポッ」とパソコンから接続先にダイヤルし、「ピ~~~ヒョロロロ~~~~」と部屋中に鳴り響く接続音を聞く。インターネットという夢の国に入場するためには、必ずこの〝儀式〟を経なければなりませんでした。

ちなみに、パソコンを立ち上げてから接続までにかかる時間は、およそ4分。コーヒーを入れる余裕さえありました。

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ようやくネットにつながっても、気を抜くことはできません。というのもネットの接続には、ある代償を伴ったのです。

視聴者の皆さんからも「3か月で電話代が10万も飛んだ」「12万ほどの請求が来ても払ってくれた親に圧倒的感謝」という声が寄せられました。

インターネットに接続しているあいだ増え続ける、恐怖の電話代。高額請求される人が続出し、社会問題にまで発展しました。

こうした状況に対しNTTは、夜11時から翌朝8時まで、登録した番号への電話代が定額になる「テレホーダイ」を開始。救世主の登場に、ネットユーザーたちは皆歓喜し、テレホーダイが使える時間帯(通称〝テレホタイム〟)を狙って、夜な夜なネットサーフィンを楽しみました。たとえ睡眠時間を削ってでも、つながりたかったのです。

テレホマン「フライングアタック」

しかし、そこに新たな壁が立ちはだかります。
実は、当時のネット用の電話回線は、つなげられる数に限りがありました。そのため、テレホタイムが始まる夜11時になると電話が殺到し、あっという間に回線が埋まってしまう。そうなると、待てど暮らせど一向につながらないのです。

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つながりたいのに、つながれない。そこで、当時のネットユーザーたちは、ある裏技を編み出しました。それが「フライングアタック」です。

「フライングアタック」とは、あえてテレホーダイになる夜11時の数分前から接続し、混雑を回避すること。当時の電話代は3分につき10円ほどでしたが、追加料金を払ってでもつながりたいものだったのです。

ちなみに、この裏技がユーザーたちのあいだで浸透しすぎた結果、数分前からフライングをしてもつながらなくなり、10分前、20分前、30分前……と、接続開始時間がどんどん前倒しになっていったのでした。


③ そもそもインターネットの始まりは?

そもそも、インターネットは、一体どのようにして生まれたのでしょうか?
その起源は、昭和44年(1969年)にアメリカの4つの大学や研究機関をつないだ「ARPANET(アーパネット)」だといわれています。「ARPANET」は、アメリカ国防総省が資金を提供して開発されたネットワークで、当初は「研究成果」などのデータを共有するために使われていました。

堀江貴文(以下、堀江) 「ARPA」というのは、アメリカ国防総省の高等機関で、いまは「DARPA(Defence Advanced Research Projects Agency)アメリカ国防高等研究計画局」というのですが、その頭文字をとった略で、巨額な研究資金を提供する、技術開発者にとっては、いわば「スポンサー」のような存在です。
「ARPA」は、インターネットの原型であるこの「ARPANET」だけじゃなくて、「GPS」を開発したことでも知られていますよね。
 その流れを受けて、いまは自動運転車の開発などにも「DARPA」が資金を出して実験していたりします。「軍事に使えるかどうかはわからないけど、とにかく何かに役立つだろう」という研究に、膨大な資金を提供するアメリカの有力なスポンサーなんです。

落合陽一(以下、落合) アメリカの国防総省の一部の、先端的な研究に割かれる予算があてられていたんです。国防総省直轄の組織で、表向きは軍からは直接的な干渉を受けない組織になっています。
 日本はそういう意味でいうと、先の戦争の反省があって、国防のための予算での応用研究開発を進めてこなかった。現在はある程度解禁されているのですが、「国立大学はダメです」という時代が長かったので、そこには他用途の研究転用可能な防衛予算が少ないんですよ。日本の防衛予算は、基本的に軍事研究に使われることが大半です。

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平成ネット史 NHK『平成ネット史(仮)』取材班

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