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国境を超えて愛される、岡崎慎司が「笑顔」を絶やさない理由 #2 鈍足バンザイ!

足が遅い。背が低い。テクニックもない。そんな彼が、いかにして日本を代表するストライカーになりえたのか……。昨シーズン限りでスペインのウエスカを退団し、その去就が注目されている岡崎慎司。著書『鈍足バンザイ! 僕は足が遅かったからこそ、今がある。』は、自信が持てないとき、コンプレックスに悩んでいるとき、あなたの背中をそっと押してくれる一冊です。サッカー好きなら必読の本書、ぜひお楽しみください。

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「屈託なく笑う」は強みになる

最近、すごく嬉しいことがあった。エスパルスにいたときにコーチを務めていた宇野さんに、ほめられたのだ。

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エスパルスに入団したころの僕は、よく「下手クソ!」「なんで今のボールをトラップ出来ないんだ!?」と言われていた。散々な言われよう。それも、当然だろう。下手クソで、足を引っ張ってしまうんだから。

ウォーミングアップをかねて、チーム全体をいくつかにわけて行なう簡単なパス練習では、組み合わせを監督から指定されないこともある。そんなときは近くにいる選手同士で人数を合わせ、パス練習を始める。ただ、そのときに僕はみんなのテンポについていけない。リズムもスピードも合わない。

そんなときには、開き直って、あらかじめ断りを入れた。

「下手なんですが、よろしくお願いします!」

もちろん、笑顔とともに。

今となっては運が良かったとしか言いようがないけれど、厳しいことを言うエスパルスの先輩たちのなかに、いじわるな人は1人もいなかった。笑顔の僕を見て、こう言う。

「しょうがねぇな。入れよ!」

そうやって、みんなの輪に入り込んでいった。卑屈な表情、申し訳なさそうな素振りを見せたら、気を悪くしちゃうんじゃないか。そう思ってビクビクしているからこそ、笑顔で加わっていっただけなんだけど……。

当時、そんな様子を外から見ていたのが、この項の冒頭で触れた宇野さんだ。

「オマエは『下手クソ!』と言われながらも、笑顔を見せて、嬉しそうにみんなのなかに入っていったよな。そのときにオレは、オマエの強さを感じていたんだよ」

卑屈になりすぎてもいけないし、こびへつらうわけにもいかない。笑いの加減って本当に難しいのかもしれないけど、屈託なく笑う。そうすることで、(同情をひき?)よりレベルの高い練習に加わることが出来た。

試合に敗れても笑顔だったのは……

スマイルマスターの僕だけど、実は笑顔を見せて大失敗したことがある。

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南アフリカワールドカップの開幕までおよそ4カ月となった、2010年2月――。最近になって日本代表に興味を持った人にしてみたら想像がつかないかもしれないけれど、当時の日本代表は、人気が下火になっていただけでなく、強い批判にさらされていた。

そんな時期に、韓国、中国、香港を招いて日本で行なわれたのが東アジア選手権だった。その最終戦で韓国に敗れてしまった直後のこと。僕が笑いながらチームメイトと話をしている姿がテレビに映し出された

「試合に負けたのに笑っているとはどういうつもりだ!?」

日本サッカー協会にはもちろん、所属するエスパルスにまで抗議の声が寄せられてしまい、僕は注意を受けた。日本人を代表しているという自覚が足りなかったし、応援しているファンのみなさんの気持ちを十分に想像出来ていなかったと今でも反省している。

ただ――。

あそこで悔しさを顔に出さなかったのには理由がある。もちろん、悔しくなかったはずがないのだけど、ちょっとしたつまらないプライドから笑ってしまった。

あまり悔しそうにしていたら、韓国に「日本はオレたちとの差を感じて悔しがっている」と思われて今後もなめられる気がした。「今日の負けはダメージにはならないよ」と強がりたくて、僕は結果を真摯に捉えずに笑ってしまった。あのときは、素直に悔しがって、もっと練習しようって考えたほうが良かったと思う。

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鈍足バンザイ! 僕は足が遅かったからこそ、今がある。 岡崎慎司

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