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バスに乗り遅れたおばあちゃんを送ったらチクワに変わった話

旅先で道を聞かれるゲンヨウです。スーツケース引いてるのに聞かれた時は、なんで?って思いました。結局地図とかで調べて教えるんですけど(笑)

その老婦人は、天を仰いだ。
目線の先には、オレンジ色のバスが無情にも走り去って行った。

僕は娘のバレンタイン行脚に運転手として付き合っていた。たまたま交差点でみた老婦人。
前日からの雪で歩道は埋まり、彼女の行く手を雪が遮っていたようだ。間に合わなかったのかな?

いつもなら、気に留めないんだろうけど、何となく気になって、同乗してた家族に
「バスに乗れなかったおばあちゃん、拾って良い?」
と聞いた。雪で特に用事もない一日だったので、家族も快諾。車を引き返し先ほどのバス停へ向かった。

その時老婦人はバス停とは反対側を歩いていて、雪のない側を東に向かって歩いているようだった。

「お母さん、バスに乗り遅れました?」
「そうなのよ、次のバス停まで歩こうかと思って」
「バスもしばらく来ないから送りましょうか?乗ってください」

少し遠慮しながら老婦人が助手席に乗る、両手にいっぱいの荷物。
間に合うように出たけど、雪で歩道が埋まってて、うまく歩けなかったこと。
土日はバスの本数が少ないから助かったこと。
家の人は雪だから行きは送ってくれたけど、休みでお酒飲んじゃったから迎えには来れなかったこと。
僕もたまたま、空を見上げた瞬間を見ちゃったこと、何となく気になって引き返した事などを話した。

小さな峠を越えた隣町、老婦人の家の近くの、バス停で降ろすことになった。時間にして、10分くらいの距離。
降りるときに
「これ、お礼にあげるわ、もらったものだから食べて」
と、たくさんのちくわ。

ありがたくいただいて帰路につく。
「ちくわもらっちゃったね」
「そうだね〜嬉しいね」
なんて話を子供とする。

お互い、名も名乗らず
謎の10分ドライブ

ご縁というか、何というか
ちくわを味わいながら、日々面白いことが起こるもんだなぁと思っていた。

「そういえば何年か前に、コンビニでおばあちゃん拾ってたよね」
と妻が言った。

そういえば。そんなこともあったなぁ。


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