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ジオパーク・オンライン&ガイド勉強会 #010 洞爺湖有珠山GP①の報告

この報告レポートは無料で読めます。
オンラインツアーの動画は最下部にあります(有料)。日本ジオツーリズム協会メンバーの方は無料で見られます(※2022年5月以前にご入会の方のみ)。

第10回 「洞爺湖有珠山GP Part.1」オンラインツアーについての報告をいたします。
ガイド : 荒町美紀 氏  (有限会社 アラマチ)

第一部報告

<期待値を高める導入部分>
ツアータイトルは「噴火が作った奇跡のドーナツとは?」でした。
案内人は、プロで声のお仕事もされている荒町美紀さんです。
ご自分でもおっしゃっていた通り、全ての視聴者が癒しボイスと笑顔に魅了されたことと思います。
 
7月11日のお誕生日を、「7-11(セブンイレブン)」と表現する荒町さん。
今回のツアーでファンになった方からバースデープレゼントが届くかも?と思ってしまうくらい、最初からご自分の存在を上手にアピールし、視聴者を惹きつけていました。
それもそのはず。ラジオのパーソナリティーとして、番組を2本お持ちなのです。なるほど納得です。
 
一方で、旦那様が代表を務める洞爺湖でモーターボート遊覧とスワンボート貸出しの会社、(有)アラマチの役員もされているので、洞爺湖の楽しみ方を熟知されています。
すでに暑くなって来ている本州以南の皆様には、水をたたえる洞爺湖ツアーへの期待が高まったところで本編はスタートしました。
 
<起>
まずは、北海道を日本列島の真ん中に置いてみます。チャット欄に「北海道はデッカイドー!!」と入るほど、本州・四国・九州・沖縄とは違う北海道の大きさと距離感を表現していました。
こんなに大きいのだから、ほぼドライブで終わってしまう「4泊5日で道内一周」などと、無理な計画を立ててはいけないということがよく分かります。
 
その中の洞爺湖有珠山GPの位置を表し、その中の「ココにドーナツがあります!」と洞爺湖まで誘導。
「なになに?」と、視聴者が画面に吸い寄せられる光景が見えるようでした。
そして、洞爺湖の全景が見える展望台からの画像が登場。
全員がその美しさに目を奪われました。
ここまで来ると、「早く始めて〜!!」と期待感絶頂になりました。
 
<承>
ツアー組み立ては次のとおりでした。
1.     洞爺湖誕生物語
[奇跡その1. 湖誕生ストーリー]
その成り立ちは、約11万年前の巨大噴火により始まりました。
噴火によってできた大きな丸い凹みに水が溜まり、洞爺湖が出来ました。
カルデラ湖である洞爺湖の周囲は約43キロ。なんと、山手線がまるっと入ってしまう大きさ。
深さは高層ビル40~42階、初代ウルトラマンが4.5人分に当たる約180mだそうです。
 
[奇跡その2. 中島誕生ストーリー]
洞爺湖ができた後、約5万年前にその洞爺湖の真ん中で何度も噴火をしてできた溶岩ドーム群が中島なのだそうです。
 
ところで、「溶岩ドーム」って何?
ここでは、マグマの粘性の違いによるキラウェア火山の溶岩との比較と、きなことホットケーキミックスで行う実験の動画から「溶岩ドーム」の出来方を丁寧に説明してくれました。
 
[奇跡その3. 湖水水位のストーリー]
ここで、湖底の地形が一定でないことを地図で表しました。
ちょうど、中島が真ん中に位置されるところで水位が止まったのでした。
しかも、大小合わせて40本の川から水が流れてくることで枯れることはなく、流出は1本の川があること、水力発電に利用していることから溢れることはないということもわかりました。
季節によって上下する水位ですが、どの季節でも中島が隠れてしまうことはありません。
また、奇跡的にドーナツ型であるということを、他の8つの代表的なカルデラと比較することで表現していました。ドーナツ型をした湖は、実は世界でも稀だということもわかりました。
 
さあ、それではいよいよ、洞爺湖の真ん中へと出発です!
 
<転>
2.     洞爺湖の真ん中を見に行こう!
青い空、青い湖、そこに浮かぶボート。
視聴者のテンションがさらに上がっているのが分かりました。
遠くから見ると一つに見えた中島が、実は4つの島から出来ていることがわかります。
一番大きい大島、そして、弁天島、観音島、饅頭島。
ここで何やら意味深な投げかけが…。
「中島は5つだったかもしれない」一体どういうことなのか、この後の展開がますます気になります。
 
ここで、お楽しみの動画が入りました。
モーターボート乗船です。
どんどん近づく島々に、ワクワク感も高まります。
途中、富士山にそっくりな羊蹄山や、弁天島の名の由来となった弁財天堂や、観音島の名の由来となった観音堂の紹介もありました。
さらに進んだモーターボートは、中島に近づいてきましたがここの紹介はさらりと。
溶岩ドームの証の風穴群もあるようです。
中島・森と湖の博物館もリニューアルされたそうです。ここは、是非、実際に上陸して歩いていただきたいところです。
ボートの効果音も手伝い、船上からの眺めは「WAOファクターその1」となりました。
 
<転―クライマックス>
3.     中島は5つだった??
[奇跡その4. まぼろしの島のストーリー]
さて、ツアーはいよいよ佳境に入ってきました。
中島に上陸しなかったモーターボートは一体どこへ行くのでしょう?
饅頭島を通過し、ぐるりと中島を巻いて進んだモーターボートは何もないように見えるポイントでぴたりと止まりました。
ここでドローン画像登場です!
段々と上がるドローンに映るのは、3艇のボートと徐々に姿を現したある地形でした。
そして、この地形こそが通称ゼロポイントと呼ばれる「まぼろしの島」、5つ目の中島になっていたかもしれない溶岩ドームだったのです。 
文句なく、視聴者にとっての「WAOファクターその2」でした。
 
次にダイバーになって水中探検です。
むくむくと盛り上がった溶岩ドームが、冷えて固まりながら割れていった様子そのままの山肌が見えてきました。
水深1mあまりのところにあるその山頂には、緑の藻が生えています。
登山が苦手な荒町さんでも満面の笑みで山頂登頂しました。
もちろんここが「WAOファクターその3」で、視聴者の絶頂点でした。
筆者もここに立ちましたが、なんとも言えない不思議な感覚。貴重な体験ができるところです。
 
<結>
夕日と共にモーターボートは桟橋に戻りました。
洞爺湖の美しさが際立ちます。来月のオンラインツアーのスタート地点となる有珠山も見えました。
この有珠山の噴火によって温泉が沸き、洞爺湖温泉街が出来たと言います。
4/28~10/31まで毎日花火大会が行われ、桜と梅が同時に咲き、四季折々に楽しめる、魅力的な画像とともに観光情報も紹介されました。
 
[奇跡その1.~その4.]からも分かる通り、小さな奇跡の積み重ねがドーナツ型の洞爺湖を作ったという物語がよく分かったオンラインツアーでした。
視聴者の皆様がドーナツを見た時、荒町さんの声と笑顔と洞爺湖を思い出すに違いありません。


第二部報告

第1部のオンラインツアーを視聴後、それをもとにガイドにとって大切な4つの要素(TORE)について考える第二部 勉強会について、グループワーク時に参加者から出た意見を中心にまとめて報告をいたします。

1.     このツアーのテーマは何か?

「洞爺湖のドーナツ形は小さな奇跡の積み重ねだった」 これが、荒町さんがオンラインツアーを通して伝えたかったことでした。
これを踏まえて、OREに沿って気づきと意見が交わされました。


2.     O(構成)について

  • 大きいところ=洞爺湖有珠山GP全体から、小さいところ=洞爺湖〜水面〜空から〜水中 へと構成されていていたし、すごく整然としていて分かりやすかった。

  • 洞爺湖とその周辺を離れずまとめられていて、楽しさを散りばめながらも軸に沿っていた。

  • あれも、これもと情報を盛り込みすぎず、情報が整理されており、比喩・比較・たとえがわかりやすかった。

  • ラジオをされているからなのか、ニュースを聞いているようで聴きやすかったし、写真を見せてその解説をするだけでなく、見えない部分も説明してくれたので分かりやすかった。

  • 問いを出して答えていく形でつなげていく構成が素晴らしい。

  • 場面展開がスムーズにいくように順序立ててあった。奇跡の積み重ねがわかりやすかった。

  • イラスト・ドローン・動画・写真など、組み合わせ方も良いので更に分かりやすくしていた。

  • 一貫してきれいな景色を楽しめた。

  • 活舌がとてもよく、スピードも良く、説明が上手なので安心して聞けたし、メモを取りながらも耳で楽しむことができ、バランスがとても良かった。

  • チームワークの良さと次回への誘導が良かった。

*これらの意見をまとめると、対象者が目の前にいない状態で進められるオンラインツアーでは、耳障りの良さ=声のトーン・言葉の選び方・スピードがかなりKEYになるということがわかります。
また、参加者にわかりやすいものであるためには、シンプルであることも大切で、特にリアルへの誘導の場合には、情報を小出しにするテクニックも必要であることがわかります。


3.     R(関連性)について

  • 山手線、という広さのたとえがイメージしやすい。

  • ドーナツ、ウルトラマン、日本地図がイメージしやすくわかりやすかった。

  • 溶岩ドームや風穴に火山を感じたし、自分の地域にもある!と親近感が沸いた。

  • 姫島にある溶岩ドームは標高266mで形は羊蹄山に似ているので親近感が沸いた。

  • 溶岩ドームつながりだったが、島原のドームは登れない。水中のドームに登ってみたいと思った。

  • 水面の画像やモーターボートは身近にあるので親近感が沸いた。

  • ラジオのお仕事が一緒!

  • カルデラが色々出てきたことで過去のツアーを振り返れた。

  • カルデラ繋がりで箱根を紹介してもらったが、箱根もパックマン形だと思った。自分はマヨネーズで溶岩ドームを表現したが、きなこも良いなあと思った。

  • 阿蘇カルデラが近いのでイメージしやすい。

  • 山登ったことある?きついけど、ここは簡単にいける、などの呼びかけに親近感を持った。

*これらの意見をまとめると、参加者はツアーの中で常に親近感を求めていることがわかります。
出てくる場所や言葉に、自分との共通性を見出すことでよりツアーに没入していくということなのでしょう。また、ガイドはそれを狙って様々な工夫をしていることにも気づきます。
KEYはいかにして自分ごとにしてもらい、舞台に興味を持ってもらうかということです。

 
4.     E(楽しさ)について

  • 笑顔が素敵で非言語コミュニケーションが高い魅力的な人だと感じ楽しくなった。

  • とにかく声が良い、語りが上手い、言葉の選び方が良い、声が明るい、抑揚が良い、語りかけられている感じが心地よくラジオ番組みたいで行った気になって楽しかった

  • ガイド自らが楽しそうだったし、上手なイラストでご本人が登場したのが楽しかった。

  • イラスト・モーターボート・実験動画などの入れ方が楽しく没入感があった。全体的に創意工夫を感じた。

  • 楽しそうにゼロポイントに立っていた感じでこちらも楽しくなった。

  • ラジオ番組風なのが楽しめる部分だった。

  • ドローン、水中など、リアルツアーでは味わえないオンラインならではのものが良かった。モーターボートも酔わずに済むし。

  • ガイドがいないとわからない5つ目の溶岩ドームの存在を見せてもらえた。

  • ウルトラマンとウェットスーツは繋がっているのか?何故ここでウルトラマンなのか?と思いながらも、ウルトラマンの登場は面白かった。

  • 噴火実験に子ども達の声が入っていて、楽しんでいるのがわかり良かった。

  • 山手線、マラソンコース、ドーナッツ、ウルトラマンなどガイドの独特な視点が楽しかった。使わせてもらいます!

  • 営業的な感じもなく良かったし、全体的に楽しさのツボをついていた。

*これらの意見をまとめると、不要な小技を削ぎ落とし、必要な情報をより楽しく伝えるための工夫が駆使されていたことに気づきます。ガイドの人となりが分かるように盛り込まれた参加者の面白心をくすぐるテクニックは、まさにツボを抑えていたといえると思います。オンラインツアーの難しさを感じると同時に、オンラインツアーだからこそ出来る構成に参加者も気づいたことでしょう。


5.     全体を通してかんじたことと、ここはこうだったら良かった…という意見と、など

―良い感想―

  • 声がきれいだなー!

  • 参加者の背景や状況に配慮した声掛け(バス出発時)が良かった。

  • ガイドとしての気の使い方が勉強になる。

  • 画面に優しさがある。

  • モーターボードの風切り音が臨場感あった。オンラインでできていたのがすごい!

  • 誰も知らないことをなぞなぞぽく伝えるなど、人の興味を引くのがうまい。

  • え!? あっという間にもう終わり?!というかんじだった。

  • 横山先生と江川さんとのチームワークの良さ!を感じた。

―要工夫を感じたところー

  • 昭和新山と有珠山の登場の仕方が唐突だった。

  • サポート体制が良かった反面、チャットの中で解説があったりするとそちらも気になるのでツアーに集中できなくなって困った。

  • テーマが伝わっていなかったような気がした。

  • 最後に観光情報が多く、メッセージがぼやけた(複数人)「最後にドーナッツが奇跡でできている」というメッセージに戻す一言があると良かったのでは?あるいは夕日で終わるぐらいで良かったかも? 

*ORE+5の意見と気づきをまとめると、大半の意見は、ガイドそのものの魅力に惹き込まれていた様子がよく分かり、様々な工夫から没入感を得てツアーに参加していた様子がわかります。
チャットを見ても「行きたい!」の声が多かったことは、オフラインへの導線としての成功を感じるところです。
TOREを意識してツアー造成をすることはリアルでもオンラインでも共通するものですが、オンラインではそれに加えなければいけないスキルが要ることは毎回参加していて感じます。
ただ、今回はさらに声の質・トーン・スピードというオンラインに重要な要素があることも大きな気づきでした。 
また最後の二つについては、楽しい要素が多いと、伝えたいメッセージがぼやけてしまうことも示唆しています。最後にもう一度、本論に戻るという工夫も必要だったのかもしれません。
サポート隊としてのチャットの内容と分量にもひと工夫必要だということも理解しました。
兎にも角にも毎回学びの多い、オンラインツアーと勉強会です。


日本ジオツーリズム協会メンバーの方は、以下のページで見逃し配信(アーカイブ)が見られます(※2022年4月以前にご入会の方のみ)。

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