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ポケモンコロシアムというゲームについて

 ポケットモンスター、縮めてポケモン。この世界にはポケモンと呼ばれる不思議な生き物達が至る所に住んでいる……。


 ポケットモンスターシリーズは、今や世界で知らない人はいない日本が誇るゲームとなった。人生で初めて触れたゲームがポケモンだった、という人も多いだろう。もちろんぼくもその一人だ。しかし、初めて触れたポケモンシリーズがなにか、というのは千差万別だろう。はじまりの赤緑か、そのマイナーチェンジ版であるピカチュウ版か、それとも新たな地方が冒険の舞台となった金銀か。RSEか、DPtか、BWシリーズか、SMか、はたまた最新シリーズである剣盾か。あなたはどのシリーズが「初ポケモン」だっただろうか? ぼくは「ポケモンコロシアム」だった。

「ポケモンコロシアムって?」「ああ!」

 ポケモンコロシアム、という名前を聞いたことがない人もいるかもしれない。では、「ポケモンスタジアム」というタイトルはどうだろうか。NINTENDO64で展開された「GBと連動し、手塩にかけて育て上げたポケモンたちを使ってバトルする」対戦特化ツールで、白黒が主流だった当時のポケモンシリーズの中にあって3Ⅾを駆使したダイナミックなグラフィックが世界中のポケモントレーナーたちの心をがっちりと掴んだ。第一作目こそ使用可能ポケモンが少なかった(総数151体に対し40体だった。さすがに少なすぎる)せいでやや黒歴史気味ではあるが、その後発売されたポケスタ2、ポケスタ金銀は文句なしの名作として名高い。実況としてバトルを盛り上げる長谷部浩一氏・大西健晴氏の熱演も見逃せないポイントだ。現在に至るまで多くのポケ廃を生み出し続ける「対戦ツールとしてのポケモン」に焦点を当てたこのシリーズの流れを汲むのが、ぼくの初ポケモンであるジニアス・ソノリティ開発・ゲームキューブ専用ソフト「ポケモンコロシアム」(以下ポケコロと略させていただく)なのだ。

1/1追記:堀内賢雄氏が実況ボイスを務められるのはバトレボでした。誤りを訂正しておきました。本当に申し訳ない(メタルマン)


 しかし流れを汲む、とはいってもポケコロは対戦ツールとしての性格は薄い。せいぜい3Ⅾグラフィックである点くらいしか共通点は見当たらない。「対戦ツールとして購入するのはお勧めできない」とまで評されるほどだ。ぼくもそう思う。というより、ポケコロ本編のストーリーをある程度こなし、なおかつGBAを複数用意してRSEもしくはFRLGのカセットを人数分揃え、更にはポケモンたちの育成も済ませておかなければならない……と、そもそも対戦に至るまでのハードルが高すぎてお話にならない。子どもは間違いなくそんなに根気が続かないだろうし、ここまでしてポケコロで対戦するくらいなら手元のGBAを使えという話である。そっちのほうが何倍も手軽だ。え、友達がいない? アハハ。ハハ……ハ……。


 しかしながら、それはあくまでもポケコロを「ポケスタの系譜」としてみた場合の話である。ポケモンは何も対戦することだけがすべてではない。魅力的なポケモンたちと一緒に広大な土地を旅し、ジムリーダーやNPCトレーナーたちと交流し、悪の組織や世界を脅かす脅威に立ち向かうなど、RPGとしての性格も併せ持っている。そしてポケコロは、その「RPG」部分に大きく力を入れた作品であるとぼくは考えている。


スナッチとリライブ、その魅力

 本作には大きな特徴がある。主人公がシリーズ唯一のハイティーンかつ男性オンリーであったり、全体的に雰囲気が厨二かつスチームパンクだったり、いろいろあるが今重要なのはそれではない。「野生ポケモンが一切存在しない」という点だ。これは比喩ではない。主人公が冒険を繰り広げるオーレ地方には、本当に野生ポケモンが影も形も見当たらないのだ。ポッポすらいない。一応OPにエアームドの姿を確認できるが、後々戦うことになるとあるトレーナーの手持ちにエアームドがいることを考えると野生かどうかは疑わしい部分がある。続編である「XD」ではこの点はやや改善されたが、普通に考えてありえないことであろう。ある意味でハクスラ要素も持つ(とぼくは思っている)ポケモンシリーズとは思えない。当然ポケモンを入手する手段は別個に存在しているわけだが、それが何なのかというと……他人のポケモンを奪うことである。


 他人のポケモンを奪うことである。


 ひとのものを とったら どろぼう! ……と怒られそうだが、ポケコロにおいては他人のポケモンを「奪う」ことでしかポケモンを増やすことができない。なにせ野生ポケモンがいないのだから。ストーリーを進めるにあたってどうしても必要になる行為なので後ろめたく思う必要はまったくない。でもだからって……と良心の呵責に苦しむトレーナー諸兄は安心してほしい。ポケコロにおいて、ポケモンを奪う――「スナッチ」することは決して悪ではない。


 物語の舞台となるオーレ地方では、二つの組織が暗躍している。秘密結社「シャドー」と、その下請けともいえる「スナッチ団」だ。スナッチ団のほうはなんと主人公の古巣でもある。スナッチ団はその名の通りトレーナーたちからスナッチマシンを用いてポケモンを強奪し、それらをシャドーに受け渡すことで金銭を得ていた……のだと思われる。歯切れが悪い言い方になってしまうのは、このスナッチ団、本編開始時点で既に組織としての拠点を失ってしまっているので、詳しいことがなんもわからんのである。なお件のアジトだが、OPで個人用スナッチマシンを強奪していった主人公くんに爆破された。ええ……? 


 古巣を汚ねえ花火に変えた主人公くんは、総出で追っかけてくる組織のメンバーを尻目に相棒のブラッキーエーフィと共に八気筒の一輪バイクで華麗に逃走。濃厚に漂うスチームパンクのかほりが実に心地よい。そして行きがけの駄賃とばかりにもう一度アジトを爆破し、砂漠の彼方へ消えていく。どこから仕入れてきたんだよその爆弾。


 OP中の主人公くんは始終めちゃくちゃワルそうな笑顔で、見ているとどちらが悪役かわからなくなる。

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 こんな感じ。いやほんとに。ところでゲッターロボはいいぞ。虚無るけど。今度アニメ化する「ゲッターロボアーク」、ぜひ見てね。

 で、なぜスナッチ団がそんなことをしていたかというと、雇用主であるところのシャドーがポケモンを「兵器」として運用するための実験をしていて、そのサンプルが必要だったからだ。人工的にポケモンのココロを閉ざすことでもともとポケモンが持つ優しさや思いやりを排除し、命令に従順で強大な力を発揮する兵士を作り上げていたのだ。彼らは一般のポケモンのみならず、ジョウト地方に伝わる伝説のポケモン――エンテイ、ライコウ、スイクンすらも支配下に置き、オーレ地方を裏から牛耳っている。


 ポケモンの中にはギャラドスやバンギラスをはじめとする凶悪無比な破壊力を秘めたものが多く存在する。それらがもし、悪意や敵意のブレーキを外された状態で襲い掛かってきたとしたら……。全く清々しいほどの「悪」だと思う。ロケット団も尻尾を巻いて逃げ出す勢いだ。先述したが、主人公はスタート時点でブラッキーとエーフィを手持ちとしている。この二体はなつき度マックス状態でしか進化しない。言い換えれば、それほどに愛情を注がなければ進化しないともいえる。ポケモンを心から愛する青年にとって、シャドーの所業は許しがたいことだったことは想像に難くない。……まあでも、スナッチ団のアジトをめちゃくちゃ楽しそうに爆破していたあたり、彼もたいがい悪寄りではある。まあ根っからの悪人ではないだろうことは、直後のヒロインとの出会いや道中での行動を見るに察せられるのだけれども……


 勘のいいトレーナーはもうお気づきであろう。そう、本作におけるポケモンゲット――スナッチとは即ち、「巨悪の手でココロを閉ざされてしまったポケモンたちを解放していく行為」なのだ。「奪われた」ポケモンたちを奪い返し、ココロを取り戻した彼らと共に巨悪に叛逆する。なんと痛快な物語だろうか。


 ココロを閉ざされてしまったポケモンたちを作中では「ダークポケモン」と呼称する(ヘルガーのことではない。ところで剣盾での解禁まだですか)。彼らのココロを開き、元の豊かな感情を取り戻させてやるのは容易なことではない。ともに旅をし、バトルをし、時にマッサージなんかもしてあげる必要がある。こうした行為を総称して「リライブ」といい、リライブを完遂することができれば晴れてポケモンたちを悪意の鎖から解放してやることができるのだ。この達成感は得難いものがある。


 総括するとこの物語は、「奪われたら奪い返す。倍返しだ」ということになる(実質半沢直樹。流行ったよね)。また退廃的でアングラな世界観は好きな人にはたまらない。その中でブラッキーとエーフィを引き連れスタイリッシュに悪を蹴散らす主人公のダークヒーローっぷりも見逃せない。ポケモン伝統の無口系主人公の系譜も、ことこの作品にとっては世界観やキャラ造形に一役買う。過去のことも今の目的も黙して語らぬ主人公の姿は、実に実にカッコいい。そんなポケモンとしては攻め攻めな世界観の中で、物語の軸そのものは王道ドストレートであることも見逃せないポイントだ。ボーイミーツガール、勧善懲悪、伝説のポケモンとの出会いなど、抑えるべきポイントはきっちり抑えている。え、アングラやらスチームパンクやらがメインターゲットの子どもにわかるかって? さあ。


「いいことばかりじゃないんだなぁこれが!」

 ここまでこのゲームの良い点を書き連ねてきたわけだが、当然良くない点だってある。というかそのほうが多い。以下にこのゲームの問題点や欠点を記していこうと思う。


 まず一つ目にして最大の問題は、ストーリーの難易度がめちゃくちゃに高いことだ。ぬしポケモンのオーラがどうとかいう次元の話ではない。攻略に必要な捕獲の段階でもう既に難しい。


 本作は基本的にトレーナー戦オンリーで進行していく。野生ポケモンが出現しないからだ(2回目)。ここまではいい。問題なのはポケモンたちの平均レベルがやけに高いことと、敵のAIがやたらと賢く、実践レベルのコンボをほいほい使ってくることだ(例:ケッキングに対しスキルスワップ等)。ポケモンの特性すらも戦略に組み込んでくるのでバトルの歯ごたえは抜群だが、少なくとも子ども向けの難易度ではないし、バトルのテンポそのものも悪くなる。「バトルに時間がかかる」というのは、地味だが着実に疲労を積み重ねてくるものだ。


 「でもシングルバトルでしょ? なら相性や状態異常を駆使すれば……」と思ったそこのあなた、甘々です。本作におけるバトルとはダブルバトルのことを指す。右も左もダブルバトル。あっちもこっちもダブルバトル。シングルバトルなどその痕跡すら残さず消えてしまっている。捕獲のためにミリ残ししておいた体力を敵自身の手によって削られることなど日常茶飯事だ(後述するがこのせいでエンテイが「唯一神」などという不名誉なあだ名をつけられることになった。発祥はポケコロなんですよ)。状態異常を使おうにも、それが使えるポケモンはヨルノズクかポポッコくらいしかいないという事実。幸いにも捕獲できるのは序盤だが、ここでダークポケモンが持つ性質に悩まされることとなる(詳細は後述)。


 ダークポケモンとはココロを閉ざされたポケモンだ。ココロを閉ざしているという事は、トレーナーとの交流に不備が生じることを意味する。アニメや漫画ならばトレーナーへの攻撃や命令無視、といった形で描写されるであろうこれを、ジニアス・ソノリティ社は「リライブしない限りわざ欄一番上のわざがダークラッシュというわざに置き換えられる」「ダークラッシュを使い続けるとポケモンが暴走する」そして「ダークポケモンはリライブしない限りレベルが上がらない」という形であらわした。


 ひとつずつ見ていこう。まずダークポケモンは兵器運用を目的として製造されたものであるので、当然破壊力が求められる。自らの体が傷つくことも意に介さず、ありったけの力で敵を粉砕するパワーが。これをゲーム内に落とし込んだのが上述した「ダークラッシュ」というわざだ。ダークラッシュは特殊なわざで、「タイプなし・威力100・命中90・与えたダメージの1/4反動」と、わりと壊れに片足突っ込んでいる性能だ。一部のポケモンはリライブせずダークラッシュ撃っとけと言われるほどには強い。しかし当然強いばかりではなくデメリットもある。このわざは使い続けるとポケモンの興奮を誘発し、「ハイパー状態」という一種の状態異常を発生させる。この状態になるとポケモンは命令を無視するようになる……だけではない。フレンドリーファイア、トレーナーへのダイレクトアタック、果てはバッグの中のどうぐを勝手に使用する……など、とてもではないが悠長にバトルしている余裕はなくなる。この状態のダークポケモンに「よびかける」コマンドを使用するとリライブが進むというメリットもあるにはあるが、正直バトル中に1ターン消費してまで得られる効果としてはしょっぱい。しかしもともとの個体値が低いポケモンにとってはメインウェポンたりえる技だけに、ついつい使ってしまいがちだ。いや、使わざるを得ないといったほうが正しいかもしれないが。なお敵が使用するダークポケモンはハイパー状態にならない。ズルだろそれ。


 昨今のポケモンシリーズでは手持ちにいるだけで経験値がもらえる親切仕様になっているが、第三世代にそんな仕様は当然なく、経験値を得るためにはバトルに出さなければならない。しかしダブルバトルというのは厄介なもので、経験値が分散するのだ。1匹を集中的に育てる、という事が難しいバトル形態であると言える。ストーリー序盤では相棒であるブラッキーとエーフィが強いので大した問題ではないのだが、中盤になると途端に厳しい戦いを強いられる。というのも、この2匹はサブウェポンに乏しいのだ。ブラッキーはそもそも攻撃が得意ではなく、エーフィはエスパー以外の特殊わざをあまり覚えない(当時はタイプごとに物理か特殊かが分けられていた)。幸いにもエーフィは最初から「恩返し」を覚えている。攻撃種族値65から繰り出されるタイプ一致ですらない物理技の威力などお察しだが、正直これがなかったらもっときつかったと思う。まあそれも岩・鋼タイプが増えてくる中盤以降はお役御免となるが。


 バトルを優位に進めるためには幅広いタイプのポケモンを育てる必要があるのだが、ここでダークポケモン第3の特性、「リライブするまでレベルが上がらない」ことが盛大に足を引っ張る。具体的な例を挙げよう。ストーリー中最初に捕まえることができるダークポケモンはマクノシタなのだが、彼のレベルは30。ここから序盤の壁であるミラーボまでに戦う事のできるトレーナーの数は40人。そのほとんどが未進化ポケモンか、進化していたとしてもこちらと似たり寄ったりなレベルのポケモンしか連れていないので、ダブルバトルの性質も併せて思った以上にレベルが上がりにくい。コロシアムに参加せず、タイプ相性なども考慮しながらリライブ重視で進めていた場合、ブラッキーとエーフィはこの時点でおおよそレベル36前後にまで上がっているだろう。ではマクノシタは? はい、レベル30のままです。こんなんじゃ勝負になんないんだよ(目の前が真っ暗になった)。


 もうお分かりだろう。いくらダークラッシュが強かろうが――情熱、思想、理念、頭脳、気品、優雅さ、勤勉さ、そしてなによりレベルが足りないとどうしようもない。リライブが可能になるのが件のミラーボを倒した後というのも痛い。ミラーボはトンチキな見た目と軽快なBGMとは裏腹に相当な実力者で、ルンパッパ×4で耐久ゲーを仕掛けてくる。このルンパッパたちはレベルこそ29~30前後だが特性すいすいあめうけざらあまごいを備え、更には雨補正で威力の上がったなみのりやみずのはどうで苛烈な攻めを展開してくる強敵だ。やどりぎのタネもきっちり搭載しバランスがいい。生半可な攻め方では容易に崩せないので弱点で押し切りたいところだが、飛行タイプのわざを備えていてなおかつそのわざが解禁されているのはこの時点ではヨルノズク(レベル30・攻撃種族値50)くらいだ。絶望的に火力が足りない。何せメインウェポンが「そらをとぶ」しかないのだ。さいみんじゅつがあるとはいえこのゲームの1ターンは本当に大事なので、空高く舞い上がっている暇は全くない。直前にマンタインを捕まえることもできるが、ダークラッシュに置き換わっているのがよりによって「つばさでうつ」なので……。というわけで多くの主人公くんがミラーボによって洗い流され、ブラッキーとエーフィの経験値稼ぎに勤しむことを余儀なくされる。


 どうにかこうにかミラーボを撃破したとて、苦難はまだまだ続く。続いて訪れることができるのはヒロインの故郷アゲトビレッジ。ここでようやくダークポケモンのリライブを行うことができるようになり、今までの戦闘で入手していた経験値を纏めて得ることができる。こう書くと一気に10くらいレベルが上がりそうに聞こえるが、先述したようにそもそも戦闘に出していないと経験値は入らないし、レベルが上がらない関係で強敵との戦いになるほどダークポケモンは選出されにくい。そもそもミラーボ戦時点でブラエフィコンビがレベル36前後であったことを鑑みれば、リライブ後のダークポケモンたちのレベルはおのずとその範囲内に収まるということになる。

先ほど例に出したマクノシタくんであればハリテヤマに進化するくらいなので、戦力増強という意味では申し分ない。デンリュウやワタッコといった面子は終盤まで一線で活躍してくれる。

 リライブも終え意気揚々、いざ鎌倉と新マップであるバトル山に向かってみると、敵のポケモンがレベル40を超えるようになってくる。バトル山以降のステージはもっと辛い。こちらはただでさえ火力不足だというのに、敵はダークポケモンも織り交ぜながら火力で押しつぶしてくる。結果としてそれらに耐えることができるブラッキーハリテヤマが選出されることになり、ますます均等なレベルアップができなくなる。ここにエースアタッカーエーフィ、捕獲要員ワタッコ、高い特攻から10万ボルトを繰り出すことができるデンリュウ、この時点ではなかなかの耐久力と優秀なタイプを持つヌオー。立派な旅パの完成だ。この面子が入れ替わることは(恐らく)終盤までない。いろいろなポケモンたちでパーティを組む面白さもポケモンシリーズの魅力のひとつだが、その点においてポケコロは明確に劣っていると言える。

なおこのバトル山で戦うことになるシャドー幹部のダキムだが、見た目がアデクに似ているのでメガアデクと呼ばれているとかなんとか。そして彼が繰り出すダークポケモンこそがかのエンテイであり、隣のバクーダやメタングの地震であっさりお亡くなりになることから哀れみを込めて「唯一神」と呼ばれるようになった。かなしいね。

 そんなこんなでひいこら言いながらストーリーを進め、いよいよ最終ステージ。ラストバトルは驚異の6連戦となり、最後の一戦以外は負けてしまえば最初からやり直しという血も涙もない仕様となっている。ここが「レベルが上がり辛い」仕様の弊害を最も強く受けている場所であり、初戦のトレーナーが繰り出すポケモンはレベル4~50代前半なのに、ラスボスのポケモンは軒並みレベル60代。しかもその面子はカイリキー、ケッキング、ハッサム、ヤドキング、ボーマンダ、バンギラス種族値の暴力。スキルスワップでなまけを捨て去り毎ターン殴ってくるケッキング、弱点が炎しかないハッサム、ゲーム通してまともな氷ポケモンがニューラとデリバードしかいない中颯爽登場のボーマンダなど、勝たせる気がないとしか思えない。これでどうやって戦えばいいんだ……!


 それからこのゲーム、当時出たばかりのカードe+に対応しているのだがこれもまた曲者だ。やさしい・ふつう・てごわいの三種類の難易度があり、それぞれトゲピー・メリープ・ハッサムをスナッチすることができる。しかしトゲピーとメリープは進化系をストーリー中でスナッチ可能なのでわざわざスナッチする意味は薄い。だがハッサムは優秀なポケモンだし……と思っている貴方に悪い知らせだ。この三匹、なんと個体値が逆6Vで固定されている。対戦では使い物にならない。もっと言うならハッサムが刺さる相手などほとんど出てこないし覚えているわざも貧弱極まりないので、いよいよもってコレクション以外の意味を見出せない。誰が造ってくれと願った……!


 セーブ周りにも欠点が多い。ポケコロではポケモンセンターが少なく、ダンジョン中に回復マシンがあったりするのだが、マシンの横には必ずパソコンが併設されている。このパソコンはポケモンと道具の整理のほかにめちゃくちゃ重要な機能を有しているのだが、それこそがセーブである。そう、このゲーム、ポケモンシリーズで唯一セーブポイントにアクセスしないとセーブができない作品なのだ。もともとRPG好きだったぼくはFFシリーズを思わせるセーブポイント方式に特に何も思うことなくプレイしていたのだが、どこでもセーブに慣れてしまった今となってはなかなかどうして煩わしい。この煩わしさもRPGの魅力の一つだが、ポケモンシリーズとしては異端だろう。今の子どもたちにはあまりウケそうにない。

しかしパソコンの機能自体は「あずける」「連れていく」が統合されていて非常に扱いやすい。剣盾ではもっと便利になっていて、時代の流れを感じる今日この頃である。

 その他にも、二世代までのポケモンのグラフィックがポケスタからの使いまわしだとか、人間キャラのグラフィックが荒いだとか、モンスターボールが町外れのスタンドにしか売ってないせいでボールの補充がクソめんどくさいだとか、叩けばいっぱい埃が出てくる。このゲームに限らずジニアス社のゲームはどこかしら抜けているところがあるので、それも個性と割り切ることができれば気にならないかもしれないが。総じて、「雰囲気やストーリーはバッチリ、だけどシステム回りがちょっと良くない」ゲームだと言えるだろう。

 しかしそれでも、ぼくは「ポケモンコロシアム」が好きだ。


好きに理由はいらないというけれど

 先述したようにこのゲームはストーリー部分に力を入れている。これまでのシリーズとは違い、どこか退廃的な雰囲気はポケモンというよりもむしろ女神転生シリーズに近いような気もする。それでいてポケモンの基本はしっかり押さえているので、「RPGとしてのポケモン」を楽しみたいならポケコロは間違いなく候補に挙がるだろう。そして忘れられがちだがこのゲーム、ストーリー中で三犬とホウオウを揃えることができる唯一のソフトだったりする。拡張ディスクがあればセレビィすらも入手可能と、金銀世代のポケモンを集めようとする当時のトレーナーたちにとっては重要なツールでもあったのだ。

 

 ストーリーを彩るBGMも忘れてはいけない。この作品、とにかくBGMがいい。ジャジーだったりヒーリングっぽかったり……ぼくはあまり音楽に詳しくないのでこの表現があっているかはわからないが、全体的にテンポが遅いゲーム進行を気にならなくさせる力がある。なんなら街中でBGMを聞くために立ち止まってしまう事すらもあるくらいだ。バトル用のBGMはBWのジムリーダー戦に勝るとも劣らない名曲揃いだし、パイラタウンのBGMは今でも口ずさめる。惜しむらくはサントラが出ていないことだろうか。今からでも出せませんかゲーフリさん。

なお作曲を担当したのは「イーハトーヴォ物語」で有名な多和田吏氏である。ポケコロにおいては内臓音源だけで全曲作ったというから驚きだ。

 

最後に

 以上、ぼくが全力で推したいゲームこと「ポケモンコロシアム」の紹介だった。もう17年前のゲームだという事に驚きを隠せないが、十分に現代でも通用するゲームだと思っている。リメイクまだかな。


 ぼくが紹介できたのはこのゲームのほんの一部でしかない。もしもこの記事を読んでくださった方が、ポケモンコロシアムに少しでも興味を抱いてくれたのなら幸いだ。GCのゲームはWiiでもできるので、ぜひ今からでもプレイしてみてほしい。


 ここまで読んでいただきありがとうございました。剣盾のレートバトルでお会いしましょう。

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