見出し画像

駆けろ鉄路2千キロ!道東を鉄道で巡る旅 ~3日目②大移動後半戦

2022年8月23日(火) 14:45 塘路駅

ノロッコ号とは反対側のホームで待つこと15分ほどで、網走行きの列車がやってきた。…と思いきや、隣の草むらからエゾシカが数匹線路に出てきた。停車前で徐行していたので影響はなかったが、万が一衝突していたら危ない所だった。シカも、列車も、そして自分の旅程も。

何もなくて本当に良かった。

車内は主に2人掛けのシートが並ぶレイアウトだったが、残念、座席はすべて埋まっていた。覚悟はしていたが、網走まで座れないとさすがにツラいな…大丈夫かな…

釧網本線を往く

塘路駅から先、茅沼駅を過ぎたところで釧路湿原と別れた。列車は農地の中を防風林に囲まれながら走る。

防風林の切れ間にタンチョウを見つけた。

それにしてもこの辺りは線路がひたすらに直線だ。起伏もないので、とにかく真っ直ぐ線路を引くのが一番好都合だったのだろう。

消失点が見えそうなほど真っ直ぐ。
思わずこんな撮り方をしてみたくなる。

次第に屈斜路湖、摩周湖方面に向けてじんわりと登り坂になっていった。ディーゼルの煙を吐きながら力強く登っていく。

靄がかかる森の中を進む。やはり線路は真っ直ぐ。

摩周駅、川湯温泉駅で数名下車し、ようやく席に座ることができた。デッキで後ろを眺めていても良いが、揺られながら立っているのも疲れるし、やはり席で落ち着いて景色を見れるに越したことはない。

川湯温泉駅を過ぎると、線路も比較的曲がりくねった形になり、本格的に山に向かっている雰囲気を漂わせる。トンネルをくぐったところが釧網本線の最高点で、そこからは一気に下り。緑駅、札弦駅を越え、ようやく下りが落ち着くと、周りは右も左も一面のジャガイモ畑に変わった。
この辺り、清里町はジャガイモの一大産地で、特産を活用したジャガイモ焼酎なんかも作られているそうだ。

進めど進めどジャガイモ畑。遠くには斜里岳が雲に隠れている。惜しい。

知床斜里駅で進行方向が90度変わり、オホーツク海沿いを西に走りながら網走に向かう。
冬には流氷が見られるエリアだろう。その景色もまた見てみたいな…

オホーツク海。どん曇りの鈍色の空。
後ろを振り返ると知床半島の山々が見える。
途中の臨時駅、原生花園駅。小高い丘が流氷見物に良さそうだが、冬季は通過。
遠くに網走の能取岬が見えてきた。

しばらく進んで、列車は鱒浦という駅に着いた。その名の通り、駅名の看板の横に木彫りの鱒が飾られていた。
その写真を撮ろうとカメラを構えたところ、駅で降りたおばあちゃんがこちらに手を振ってくれているのが見えた。

ビックリして絵がブレてしまった(言い訳

その姿を見た瞬間、自分の胸に様々な思いが去来した。

釧網本線沿線は釧路湿原や知床、オホーツク海の流氷といった観光資源が多く、道東の観光に大いに貢献することが期待されている。その一方で、利用者は決して多いとは言えず、JR北海道も「単独では維持困難な路線」の一つに釧網本線を挙げている。この路線には常に廃線の話がつきまとっている。

これから先も、釧網本線はおばあちゃんの足として動き続けるだろうか。そして、おばあちゃんは今後も釧網本線に乗って出かけてくれるだろうか。

釧網本線、そしておばあちゃんの健在を祈らずにはいられなかった。
…どうか、どうか元気で。

この旅初めてセンチメンタルな気分になり、少し目を潤ませた自分を乗せて、車両は網走駅へ到着した。

根室から300km。ここまで来ただけでもかなりの達成感。
釧路から4時間の移動をこなしたキハ54。頼もしく見えるね。

石北本線、夜を駆ける

網走まで到着すればあと一息。17:25発の特急オホーツク4号に乗車できれば、本日の旅はほぼ勝ち確定と言っていい。
そして、勝利を告げる車両が入線してきた。

特急オホーツク。キハ183系気動車。
駅名板越しに。

それにしても、キハ183系、塗装の剥がれの凹凸がかなり目立つ。

凹凸はそのままに、上から再塗装されている。
行き先表示の周辺もかなり年季を感じる。

冬の雪や氷で塗装が傷つき、剥がれてしまうことがあるようだ。ダメージを放置しておくわけにもいかないので、その都度補修をしていると、他の地域より車両維持にコストがかかることが容易に想像できる。

JR北海道では、1日目に乗ったH100形気動車や261系特急の新編成など、新しい車両を次々に投入している。そういう車両もやがて183系のようにボロボロ年季が入った見た目になるのだろうか。

発車時間が迫ってきたので、車両に乗り込む。

自由席と指定席が混在という面白い構成。

旭川に着く頃には完全に夜なので、席を左右どちらにするか迷ったが、網走を出てすぐ右側に湖が見えるようなので、せっかくだからと右側に席を取った…つもりだった。しかしなぜか自分の席は左側にあった。
原因はこれである。

後日、券売機で撮影。しっかり赤文字で注意書きが書いてあった。

石北本線は途中の遠軽駅で進行方向が反転する。そのため、網走~遠軽間は座席の左右が逆になるのだ。券売機で表示されていた「進行方向」の矢印は、遠軽から先のものだった。

北陸に住んでいたことがあり、特急しらさぎで進行方向の反転には慣れていたはずなのに、ここに来て痛恨の凡ミス。
ここで湖が夕日で輝いて綺麗だった、なんて状態だったら一生モノの悔いが残ったが、幸い?曇り空で、そこまで心理的なダメージは受けずに済んだ。

石北本線は単線の路線である。遠軽の周辺で雨が降っている影響か、網走に向かってくる普通列車が遅れていた。しかし今の自分は目的の特急に乗車できているので、運休にならない限り何の問題もない。普通列車が駅に着いたのと入れ替わる形で、特急オホーツクは定刻より数分遅れて旭川方面に向けて出発した。

網走から先、網走湖を過ぎると再び左右に農地が見えてくる。今までと違うのは、斜面まで農地が広がっているらしいことだった。「らしい」と書いたのは、日没を迎えていよいよ周囲が暗くなり、何の農場なのか判別できなくなっていたためだ。純粋に地形の起伏だけを見て楽しむことにする。

牧草ロール。ということは畑じゃなくて牧場なのかな?
何か農機のライトが見えるんだけど…

北見に近づくと、既に写真は撮影できないくらいに暗くなっていた。高架を走るが、さすが北海道有数の大都市、周囲の家の並びがかつてなく多い。それがすべて北国特有の形のトタン屋根なので、首都圏等とはまた違った家並みになっているのが興味深い。

北見から先は、しばらくは平坦な線路を西へ向けてひた走る。相内(あいのない)駅、そして留辺蘂(るべしべ)駅を過ぎると、急に進行方向を北に変え、上り坂に挑む。
まっすぐ進むと標高1000m級の石北峠にぶち当たるので、さすがに列車はそこは登れず、北に迂回する形だ。そうすると最高地点は300m程度になり、そこからは下りになるので、だいぶ楽に登れることになる。

雨が降った影響か、行き違い交換で10分くらい待たされつつも、途中駅、遠軽駅に到着。
ここで進行方向が逆になるため、座席を回転する「儀式」が執り行われる。が、そこは北陸本線の特急しらさぎで慣れている自分、スムーズに座席を操作し、発車に備えた。ついでに周りの空席も一緒に回転しておく。楽しい。

遠軽駅のホームにたたずむキハ40。が、座席シートが強烈に映り込む。

遠軽から先は、再び峠越えとなる。今度の最高点は600m近いので、こちらの方が本格的な登りだ。そして、ここでちょっとした「名物」を迎える。

以下に示したのが、遠軽から先、旭川までの地図だ。上川から西、旭川までの駅間に比べ、白滝-上川の駅間がめちゃくちゃ長いことに気づくと思う。

突如現れる空白地帯。

この辺りは峠越えの山中である。昔はいくつかの駅があったようだが、現在はすべて廃駅となり、白滝-上川間は37.3kmという在来線日本一の駅間距離となっている。特急で走っても40分かかる。

さほどカーブも多くない路線を40分、しかも周囲は真っ暗、街灯もない、となるとどうなるか。平衡感覚が狂う。登っているのか、下っているのか、どれくらいの速度で動いているのかがさっぱりわからなくなる。
どこか違う場所に向かっているんじゃないかと心配になるくらいの心細さ。上川駅周辺の街灯が見えてきたときの安堵感と言ったらなかった。

上川から先は密集した駅をすべて通過し、ノンストップで旭川へ向かう。ちなみにここから先の停車駅は上川、旭川、深川、滝川、砂川と「川」が続く。間違えそうで怖いw

やがて遠くに大都市旭川の街の明かりが見え始めた。暗い山中を走り抜けてきたので、とてもまぶしく見える。

そして21:15、いつの間にか出発時の遅れを取り戻し、オホーツク4号は定刻通り旭川へ到着。
540kmの大移動、見事達成である。ようやったな、俺…

この駅名標、どれだけ待ち望んだか。
旭山動物園を意識した?動物の駅員さんがお出迎え。
特急オホーツクはまだ旅の途中。札幌へ向けて出発する。

乗ってきた石北本線と合わせ、4方向に路線が伸びている旭川駅の構内は、一大ターミナルの風格を漂わせる堂々とした佇まいだった。

旭川駅のホーム。でかいなぁ、と、口を開けて見上げてしまう。
駅名板も今までとはちょっと違う雰囲気だ。

21時を過ぎても次々と電車が入ってくる。

稚内から来た、はまなす編成の特急宗谷。札幌行き。
こちらは特急ライラック。旭川と札幌を結ぶ。
木材がふんだんに使われた、駅のコンコース。高級感漂う。
石北本線、90周年おめでとう。全線乗り通してきたぞ。
旭川駅の外装。でかい!

そして…旭川、寒い。気温は20℃を切っているようだ。
体を冷やす前に、急いで駅前のホテルにチェックインする。旭川では2泊するので、これから都合3日間、お世話になる宿だ。

白板アートでお出迎え。上手いなぁ。なにげに字も上手い。

さて、お部屋の方は…

あれ。

…ベッド狭かった。

少しでも安くなるよう、お部屋おまかせで予約したところ、ツインルームがあてがわれたようだ。しかもベッドがかなり狭い。これは完全にアダになった格好だ。落ちないように気を付けないと…

気を取り直して、セコマで食料補充。これが晩飯です。

おつかれさまでした。

今日の成果

  • アクセス駅数: 88

  • 北海道での通算獲得新駅: 118

  • 移動距離(駅メモ!基準): 491km

  • 北海道での通算鉄道乗車距離: 895.0km

次回予告

4日目は休憩日。ちょっと趣向を変えてサイクリングを楽しんでみる。
目的地はアイヌの聖地、神居古潭。でもどちらかと言うと駅メモの聖地巡礼的な目的で向かう自分。
カムイコタン(神の住む場所)に待つものとは…?


この記事が参加している募集

旅のフォトアルバム

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?