ムーンライト
この夏、7年ぶりに彼氏ができた。友達には「逃したら次7年後だよ」と背筋が凍る言葉をもらった。今年の夏が暑くて良かったと思う。
おかしかったので別の友人に話すと、「7年前とか7年後とか、銀河系、惑星の周期かよ」と言われた。私は秀逸な言葉を発する人たちに囲まれているんだなぁと思った。
これまでの7年、何をしていたのかと聞かれると何をしていたんだろうと思う。綺麗にぼやかすと、青春の輝きの歌詞にある“約束事は無しに、気軽な関係で”を繰り返していた。
カレンさんが歌うように、報いは高くついた。そんな関係を続けて残るものなんて無かったから。
長い間約束事が無い世界を彷徨っていた私に、ちゃんと約束事をしてくれた彼氏はとても特別な人だ。私にとってはたったのそれだけだとしても、もう十分に愛す理由になる。
だけど、こんな訳の分からない説明は出来ないから伝えられない。とても感謝している気持ちも、だから大切にしたい気持ちも、説明できていない。
それどころか、きちんと人と向き合った経験の無さから、空回りして嫌な気持ちにさせたりもした。落ち込んだ。もう会う勇気も出ないと思った。
ちょうどそんなことがあった頃、スーパームーンを見られることを知った。8月31日のことだった。衛星の話で思い出したが、彼は1年に1回見られるスーパームーンどころの存在では無い。7年に1度のスーパーでスペシャルな衛星なのだった。
合わせる顔は無かったけれど、一緒に月を見に行って欲しいと頼んだ。当日の突然の誘いにも関わらず、彼は仕事終わりに山の上の展望台まで車を出してくれた。
山の中で月を見た。温かい月だった。たぶん、隣に居てくれる人のおかげだったと思う。色々な偶然の重なりを感じながら、こういうのを銀河の奇跡って言うのかしら。こんな奇跡を、人は幸せと呼ぶのかしらなんて思ったりした。
彼は私の失態に触れなかった。その代わり、私の手を握って「色々なことを、乗り越えていこうね」と言ってくれた。とても心強かった。月が太陽に照らされて光るように、私は今この人の光の部分に照らされていると感じた。
久しぶりの人との付き合いで、正直色々なことに迷いが生まれていた。それを1人で抱え込んでいたけれど、これまでの様にもう1人では解決できないことに気づいた。もう1人じゃないから。
2人の間に生まれた迷いは、1人では溶かせないことを知った。彼に迷いを溶かして貰って、初めて知った。だから彼が迷ってしまった日には、私が彼の迷いを溶かせたらいいなと思う。
そんな日が来た時のために、その時に読んでもらうために書いた話だった。私は今も、未来でのその時もきっと、何も望んでないです。ただ側に居てもらえることがとても嬉しいです。
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