柔らかいベッドの上で気が付くと、彼は必死に自らの記憶をたどる。

「あっちの子はバンジージャンプ、そっちの子はジェットコースター」

肝試し美人化じゃないんだからと、この言葉を聞いた後輩が呆れていた。彼の趣味はナンパである。

路上で初対面の女性に声をかけてはホテルに連れ込んでいた。連絡先の交換はSNSのアカウントだけ。事が済んで面倒になった時、すぐにブロックするためだった。

いま彼は、手足を縛られ、猿ぐつわを噛んでいる。

どうしてこうなった？

清楚でうぶそうな女を見つけ、バーに連れて行った事までは覚えている。

「あ、目が覚めたんですね」

優しく彼の髪の毛を撫でるのは、今日、ナンパした女の手。そして不快なモーター音が鳴り始めた。彼女のもう一方の手には、卑猥な玩具が握られている。

「怖がらなくても大丈夫ですよ。他の男の子たちも皆、すっかり私の虜になりましたから」

いまさら後悔したところで、彼にできるのは、体を捩らせて唸ることだけだった。

（４１０字）

たらはかに様の企画に参加させて頂きました。

主人公である“彼”のモデルは、瀧波ユカリ先生の漫画『わたしたちは無痛恋愛がしたい 〜鍵垢女子と星屑男子とフェミおじさん〜』の星屑男子です。この漫画の12話（2022年12月31日時点では単行本未収録）には、ナンパ男の問題の根深さがさらに掘り下げて描写されています。

(2022年12月31日 追記)
他の方の no+e では「今年はありがとうございました」と挨拶が投稿される大晦日に何を書いているのだと思いながら、執筆いたしました。

この記事が2022年、私の最後の投稿になります。

私にとって今年は良い一年ではありませんでしたが、11月末にこの no+e を始め、フォロワー様たちのスキやコメントに励まされながら、次第に元気を取り戻すことができました。この場を借りて感謝を申し上げます。

来年も no+e の執筆と、この "no+e" という note の愛称の使用を続けていくつもりですので、よろしくお願いいたします。