エッセイ : ベルサイユ宮殿にはトイレがない

27歳の時、出張でパリに行った時のこと、
フランス支社のフランス人の課長さんが、鈴原くんに、フランス文化の凄さを見せてやる、と言って
仕事を午前中で終わらせ、ベルサイユ宮殿に連れて行ってくれた。
ベルサイユ宮殿はパリから車で約1時間半で到着した。

観光バス等も何台も停まっていて沢山の観光客の人たちがいた。
ベルサイユ宮殿は確かに凄い建物で圧倒されたのだが、見学している最中のことだった。
フランス人の課長が面白いものを見せてやる、と言って僕をベルサイユ宮殿の壁の所に連れて行ってくれた。

フランス人の課長
「この壁のここを見てみろ、黄色いシミがついているだろう、何だか分かるか?」

「分かりません。」
フランス人の課長
「オシッコのシミだ。」

「えっこんな所でオシッコした人がいるんですか?ベルサイユ宮殿ですよ。」
フランス人の課長
「実はな、ベルサイユ宮殿には国王と一部上級貴族以外の人用のトイレがなかったんだ。だから、みんな大も小も庭でしていたんだ。ここはオシッコし易かったんだろうな、みんなここでオシッコするものだから黄色いシミがついてしまったんだよ。」

「女の人たちはどうしていたんですか?」
フランス人の課長
「女の人たちには専用の容器が2階にあって、そこにしていたんだが、トイレがなかったから、容器がいっぱいになると2階の窓から庭にぶちまけていたんだ。たがら、みんな外に出る時は男ならマント等を着て出たんだ。いつ頭の上から降って来るか分からないからな。
だからベルサイユ宮殿には悪臭が漂っていた。
マリー・アントワネットの頭痛の種だったんだよ。」

「そうでしょうね。」
フランス人の課長
「最初はお香を焚いてごまかしていたんだが、それでは追っつかなくなって、香水を振り撒くようになったんだ。だからフランスでは香水の文化が栄えたんだよ。」

何と、フランスで香水の文化が栄えたのはお洒落のためではなく、糞尿の臭いを消すためだった。
僕はこの事実にベルサイユ宮殿の建物以上の衝撃を受けた。
帰りの車のなかで、日本のベルばらファンの女の人が聞いたらショックだろうなぁ〜、と思った。







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