エッセイ : 欧州で食べた朝ごはん 5 / コペンハーゲンで朝ごはんを食べながら知ったデンマークでアンデルセンと言っても通じないということ

1991年の10月、僕の乗った飛行機はコペンハーゲン空港に向かって着陸態勢に入った。
その時僕は少し心配になって来た。それは窓の外に海が迫って見えて来たからだ。
だが飛行機は無事空港に着陸した。僕はその時知らなかったのだが、デンマークの首都コペンハーゲンはデンマークの半島にあるのでなくシェラン島という島にあった。島に向かって着陸したから、海が迫って見えて来たのだった。
シェラン島の隣にはアンデルセンゆかりの街オーデンセのあるフュン島があり、その隣がユトランド半島だ。全部橋でつながっている。

夕方着いてデンマーク出張所の人とは翌朝会うことになっていたので、ホテルにチェックインして少しコペンハーゲンの街を歩こうと思った。
コペンハーゲン空港自体はシェラン島の更に南東部のアマー島にあったので、僕はタクシーでホテルに向かい、部屋に荷物を置いて出かけた。

夕方だったので、アマリエンボー宮殿を見た後、
アンデルセンも18年間暮らしていたという、コペンハーゲンの観光スポットの1つニューハウンに行った。運河沿いにカラフルな店や建物が並んでいた
アンデルセンはこの地区で数々の名作を書いたと言われているが頷けると思った。

夕食はスモーブローと言われるデンマークの伝統料理のオープンサンドイッチを食べることにした。
お皿に薄く切ったパンをのせ、その上にパンが見えなくなるほど沢山具をのせたサンドイッチだった。
僕はスモークサーモンと生野菜がのった物と、鰻の燻製がのった物の2つを食べた。
美味しいサンドイッチたった。鰻の燻製は初めて食べたが、燻製された鰻も美味しいと思った。

デンマークに限らずヨーロッパの国々では、朝食を食べながらのミーティングがよく行われる。
僕は、この習慣は日本でも取り入れた方がいいと思う。
朝、頭がスッキリしている状態で美味しい朝ごはんを食べながらミーティングをすると、良いアイデアがたくさん出て来る。また懸案事項も解決してしまうこともある。
僕の担当のレナートさんは、朝食ミーティングをするため、7時半に僕の滞在していたホテルのロビーに到着した。
そしてホテルのレストランで朝食を食べながらミーティングを始めた。

デンマークでは朝ごはんにシリアルやオートミール粥を食べることもあるが、その時食べたのはジャムやチョコレートがのったパンとスクランブルエッグとチーズと珈琲だった。
僕はいつも思うが、チョコレートとジャムに関しては日本は欧州に敵わないと思う。本当に美味しい。
懸案事項を話し合った後、レナートさんは午後に行く予定だったお客様が1つキャンセルになったと言った。担当者の奥様が昨日ベビーを産んだからだと言った。3時から予定がないから、観光したい所があるなら連れて行ってくれるとレナートさんは言ったので、僕はアンデルセンミュージアムに行きたいと言った。するとレナートさんはこう言った。

「アンデルセンミュージアムなんて知らないよ。
そもそもアンデルセンって何だい?」

レナートさんと10分位話して分かったのだが、
デンマークでアンデルセンと言っても通じない。
こういうことです。

まず、一旦アンデルセンとしておきますが、
アンデルセンという名字はデンマークでは非常によくある名字で、アンデルセンさんという人がいっぱいいます。
だから、ただアンデルセンと言っても、どのアンデルセンさん?  となってしまいます。
たから、ハンス クリスチャン アンデルセン略して 
H·C アンデルセンと言わなればいけなのですが、これでも通じません。
Andersen を日本語読みするとアンデルセンですが、
デンマーク語ではアナスンと発音します。しかも、デンマーク語でHはハー、Cはセーと発音するから、ハー セー アナスンと言わないと通じません。
アンデルセンというのは、日本語の発音でしかありませんからハー セー アナスンのことをアンデルセン
と言っているのは日本人だけかもしれません。

午後、レナートさんは仕事が終わった後、コペンハーゲンの街を車の中からだが、案内してくれた。
コペンハーゲンの街は歴史的建造物と近代的な建物が見事に調和された街で、北欧のパリと呼ばれている通り素敵な街だった。
レナートさんはフュン島に行き、ハーセーアナスンミュージアムに連れて行ってくれた。
僕が、みにくいアヒルの子の資料を見て懐かしがっていると、レナートさんはこう教えてくれた。

「みにくいアヒルの子は、最初の頃、自分が作った童話が全然評価されていなかったハーセーアナスン自身を描いた童話なんだよ。ハーセーアナスンは、みにくいアヒルの子だったんだよ。」

その日の夕方のフライトで、僕は次の目的地、
スイスのチューリッヒに向かった。
僕は3年後、仕事で再びデンマークを訪れ3日間滞在し、デンマークという国をすっかり気に入ってしまった。
ヨーロッパの何処かの国で暮らせ、と言われたら、
僕はデンマークを選ぶと思う。
デンマークに旅行に行く日本人は何故か少ない。
もっと沢山の人たちに行ってもらいたいと思う。
欧州に旅行に行くならデンマークをお勧めします。






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