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2023/11/21 今日の書き散らし

 明日は東京に行く。
 東京には一度だけ行ったことがある。東京駅で新幹線を下り、そのまま羽田空港に向かったので「通過したことがある」と言った方が正確かもしれない。だから、文字通り私が東京の地を踏むのは今回が初めてになるだろう。
 なんとなくどきどき、そわそわしている。道外に出るのは久しぶりで、期待と不安が心の中で浮き沈みしていた。

 比較的田舎で育ったからか、私は人が多い場所が苦手だ。神経が張り詰める感じがする。だから都会への憧れはなかった。わざわざ人混みの中に行きたいとは思わないし、物欲もない。むしろ田舎に憧れがあるタイプだった。
 就職で札幌に住むことになった。神経を尖らせながらも、札幌にはまだ適応できていた。でも東京は札幌の比ではないだろう。私は東京に行ったら一体どうなってしまうんだろう、と少し怖い。

 少し前に高瀬隼子さんの「いい子のあくび」という本を読んで、東京という場所が恐ろしくなった。

東京では、駅に近づけば近づくほど人が人に憎しみを持ち、怪我をさせても不快にさせてもいい、むしろそうしたい、と思うようになる不思議がある。同じ人混みでも、混雑した店の中や祭り会場とは違う。駅の人混みだけが、人の悪意を表出させる。

高瀬隼子「いい子のあくび」 p14

 この本にはぶつかりおじさんや、満員電車で人の肩をスマホ置き場にする不届き者も登場する。そういう人が実在するかもしれなくて、出会ってしまうかもしれなくて怖い。
 私が住んでいる町にはそもそも駅がない。道を歩いていて人とぶつかるなんてありえない。すれ違うことすら珍しい。そういう世界にいるから、見ず知らずの他人が自分に敵意を持っているということがとてつもなく恐ろしい。

 明後日は大学時代の友人と箱根に行く。飛行機の時間が微妙なので、前入りして一人東京に泊まることにしていた。人は怖いが、初めて踏む地のことを考えると心が躍った。
 私には旅が必要だったんだな、と思う。今の暮らしに不満はないけれど、ただこの町にずっといても心は動かない。平らな地面に心が沈み込んでいくのを防ぐために、きっと空気の入れ替えが必要なのだ。
 都会の大きな書店では、この町には置いていない本が買えるだろうか。
 書いているうちに、期待が膨らんで大きくなっていく。どうか、いい旅になりますように。

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