よし
読書と、本を読んで感じたことを書くのが好きです。本に関する記事をまとめました。
いらっしゃい。今日は何をお探しで? ……そうだよ。うちは呪い屋。ここにあるのは呪いだけさ。 ……それは『自販機の下に小銭を落とす呪い』だよ。 しょうもないだろう。金で買える呪いには限度があるのさ。 人を呪わば穴二つ。強い呪いを望むなら、もっと大事なものを差し出さなきゃならん。 大事なものは目に見えない。目に見えないもので飯は食えない。だから金で買える呪いしかうちには置いちゃいないよ。 ……もっと強い呪いかい? そこに『公共交通機関にギリギリ間に合わない呪い』があ
年度替わり。職場が変わり生活リズムも変化した。そのおかげで連続テレビ小説が見られるようになった。 そして、この春スタートした「虎に翼」の沼にまんまとハマってしまった。今では毎日の楽しみになっている。 あらすじ 舞台は昭和6年の東京。女学校に通う猪爪寅子(ともこ)は両親にお見合いを勧められる日々を過ごしていた。女学校を出たら結婚し、子供を産み、家庭を守るのが当然という時代だった。しかし、寅子は納得できずにいた。 ある日、下宿人・優三に弁当を届けるため寅子は大学へと向
会社を出るといつも通り外は真っ暗だった。その暗さに、のしかかった疲労がずしりと重みを増す。ああ、疲れた。体を引きずるようにして駅の方向へ向かった。 駅前といえども平日の夜は人の往来が少ない。それは、大抵の人はとうに仕事を終えて帰宅しているということだ。胸にしまい込んだつまらない気持ちが顔を出す。 夜道を店の明かりが照らしている。上半分がガラス張りになった引き戸から居酒屋の店内が見えた。カウンターに定員ぴったりの客が肩を並べて談笑している。歩道側に座った女の人と一瞬目が合
今年見た映画は、覚えている限り以下の通り。 〈ホラー〉 ・真実の穴 ・呪詛 ・リング ・リング2 ・呪怨 ・呪怨2 ・きさらぎ駅 ・返校 〈サスペンス〉 ・ザリガニが鳴くところ ・グッド・ナース ・母性 〈ノンフィクション〉 ・SHE SAID ・マイ・ニューヨーク・ダイアリー 〈ドキュメンタリー〉 ・ミス・アメリカーナ 〈ヒューマンドラマ〉 ・マイ・プライベート・アイダホ ・神は見返りを求める ・メタモルフォーゼの縁側 ・ミッ
最近、アニメ「葬送のフリーレン」を細々と追っている。 私は絵画教室に通っていて、先生が作画を絶賛していたので、なんとなく見てみる気になったのだった。 あらすじ 十年にも及ぶ冒険の末、勇者ヒンメル一行が魔王を倒したところから物語は始まる。勇者たちは役目を果たし、それぞれの人生に戻っていく。 主人公はエルフの魔法使い・フリーレン。エルフは数千年も生きる種族で、十年の冒険は彼女にとってほんの短い間に過ぎなかった。 それから何十年もの歳月が流れ、かつての英雄・ヒンメルは
旅行が終わり、北海道へ戻った。 私は旅行が苦手だった。 小さいころから、道外に出るような旅行はほとんどしたことがなかった。多分、飛行機に乗るのは中学の修学旅行が初めて。それが歳を重ねて、自分で自由にどこにでも行けるようになった。でも、何せ旅行慣れしていないものだからわからないことが多くて、それが不快だった。 私は興味の幅が狭くて、行ってみたい場所を聞かれてもぱっと答えられないくらいには無知だ。どこに何があるか全然わからない。旅行に行くとなれば目的地を決めなければい
今日、飛行機で北海道を発った。行き先は羽田空港。 フライトは約2時間。こんなに長く飛行機に乗っているのは久しぶりで、なんだか落ち着かないまま文庫本をめくっていた。 通路を挟んだ隣の席には本物のギャルがいた。実物を見るのは初めてで、彼女が目を瞑っているのをいいことに、しげしげとその姿を眺めてしまった。 長くボリュームのあるまつ毛。頭頂に近い部分でひとまとめにした、ピンクや水色の混じった長い髪。短いデニムパンツから伸びる生脚は、膝下から黒のロングブーツに包まれていた。
明日は東京に行く。 東京には一度だけ行ったことがある。東京駅で新幹線を下り、そのまま羽田空港に向かったので「通過したことがある」と言った方が正確かもしれない。だから、文字通り私が東京の地を踏むのは今回が初めてになるだろう。 なんとなくどきどき、そわそわしている。道外に出るのは久しぶりで、期待と不安が心の中で浮き沈みしていた。 比較的田舎で育ったからか、私は人が多い場所が苦手だ。神経が張り詰める感じがする。だから都会への憧れはなかった。わざわざ人混みの中に行きたいとは
辻村深月さんの「かがみの孤城(下)」を読んだ。 すごい物語を読んでしまったと思った。 終盤は涙が止まらなかった。本を読んであんなに泣いたのは随分久しぶりだった。 同時に少し落ち込んでもいる。思うところがあるので書いていく。 あらすじ 中学1年生のこころは、ある事件をきっかけに学校に行くのをやめた。光る鏡の中にはこころの他に6人の中学生がいて、彼らもこころと同じように学校に通っていないと思われた。 城の番人である狼面の少女「オオカミさま」は言う。この城のどこかに
誕生日 ごちそう、ケーキ、プレゼント。 君の前では子どもに戻れる 「誕生日」から始まる短歌を詠みました。 ご馳走もケーキもプレゼントも用意して誕生日を祝ってもらうことは、歳をとるにつれて貴重になっていくように思います。
君になりたかった。笑い声を背中で聞いた。 小牧幸助文学賞に応募します。
薄暗いところから君の明るさはよく見える。 誰ともわかり合えない部分が誰にでもあれ。 小牧幸助文学賞に応募します。
辻村深月さんの「かがみの孤城(上)」を読んだ。 しばらく前に、小中学生によく読まれている本として紹介されていた記憶がある。興味はあったものの、子ども向けの作品と思って正直見くびっていて、なかなか手を出せずにいた。 いざ読んでみると、初めは外側から眺めていた自分がいつの間にか物語の中に入り込んでいた。続きが気になって夢中でページを捲っていた。 よくある「美しい」話と思いきや、登場人物の背景、性格、心情など細部までしっかりと作りこまれているので、陳腐な物語にならない。ファ
高瀬隼子さんの「いい子のあくび」を読んだ。やっと読んだ。 読んでいるうちに直子に対する感情がどんどん変化していった。まだ消化しきれていない感じはあるが、この本について書いていきたいと思う。 この作品を構成する要素に「ながらスマホ」と「ぶつかりおじさん」がある。 街にいた頃は歩きスマホの人を見かけることがあった。彼らにイラつくのは、「周りの人がよけてくれるだろう」という確信犯的な考えが透けて見えるからだろう。 ぶつかりおじさんに遭遇したことはまだない。でも、そういう
アマプラを再開したのは最近のことだ。数年間アマプラに登録していたが夏ごろにネトフリに切り替えた。そして今回戻ってきた。 ネトフリに登録したのはホラー映画とアニメが充実していたからだ。でも映画に関して言えばアマプラの方が高質で数も多かったような気がして、映画好きの私は物足りなさを感じていた。 今思えば、ネトフリはアニメやドラマ、センセーショナルなオリジナル作品に注力しているサービスかもしれなかった。私はアニメやドラマはさほど見ないし、作りこまれた作品が好きなのでネトフリ向
私は現代文の授業が好きだった。こう言うと同級生にはぎょっとされた。現代文好きは珍しいのかもしれない。確かに、あまりにも多くの生徒が寝ているので休憩時間を設ける先生や早めに授業を終える先生もいた。 個人的には絶対に読むことがなかったであろう作品に触れることができ、その内容まで解説してもらえる。だから私は現代文が好きだった。 高校生のとき、現代文の教科書に芥川龍之介の「枯野抄」が載っていた。松尾芭蕉の最期を看取るため方々から門人たちが集まるという話だ。 なじみがない古い