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エドワード・ヤンの恋愛時代(1994🇹🇼)4Kレストア版

原題: 獨立時代/A Confucian Confusion(1994、台湾、129分)
●監督:エドワード・ヤン
●出演:チェン・シァンチー、ニー・シューチュン、ワン・ウェイミン、ワン・ポーセン、リチー・リー、ダニー・ドン

台北に生きる若者たちの数日間の出来事を描く、というあらすじ。

まずは黒バックに孔子の言葉の引用から始まる。

映画は約3日間の濃密な時間の流れを間隔を空けたり回想を挟んだりせずに直線的かつ一定の速度で進むのだが、第〇話とつかないアイキャッチというか、中国語と英語(と日本語字幕)の小見出し的な字幕を入れた黒画面が合間合間に挿入され、映像の流れが切断されるという構成。

舞台での暗転に相当する演出とも言えるが、その間演技は続いていて俳優たちの台詞はそのまま流れる。

ある意味では中流・上流階級の若者たちの狭い交友関係を描いたトレンディドラマみたいな群像劇であるが、誰かひとりにフォーカスするのではなくどの人物にも感情移入できるよう、しっかり丁寧に作りこんでいて演出も見事。

例えばモーリーの姉の夫が終盤、チチに告白をする場面はやや唐突に感じたが、彼の部屋にはオードリー・ヘップバーンのポスターが飾ってあり、チチもオードリーと同じ髪形をしている。台詞では特に説明はないがヒントは込められている、といった作り。

映像的には一歩引いたような長回しとフィックスショットがベースになっていて、会話シーンもエレベーターとか車の中とか都会における密室という状況を意図的に設定して撮っているように見える。

登場人物は多いが、二人の人物が対話するというシーンが非常に多い。

そして影の使い方が絶妙。

夜のシーンが多いとはいえ、対話する人物の顔もほとんど見えないような影を当てたシーンの連発。

チチがモーリーの姉の夫(小説家)の部屋を訪れ、小説を読んで眠りについてしまった時の薄暗がりのシーンとか、早朝会議室でチチとモーリーが語らう曇り空の逆光シーンとか、通常の映画であれば暗すぎてNGになりそうなところ、むしろこの画を堂々と見せつけてくるわけだから凄い。

メインビジュアルにも使われている、モーリーとチチが夜中二人で煙草を吸うシーンは微かな光がゆらゆらと揺れてとても美しく撮られている。

人であふれる都市において、”二人”という状況を自然に作り出すためにも、先述のエレベーターや車内しかり、やはり夜という舞台設定はこの映画において必要だったのだろうと思う。

それか、映像的にこういう暗闇を強調したようなシーンを撮りたかったのでこのようなシナリオの映画にしたのだろうか、なんてことも思わせる。

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