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春の夢を見た?ほんとうに?(#シロクマ文芸部 企画参加)

それは本当にほんとうの事?
春の夢を、きみは見てしまったの?

その夢は少し危険かもしれない。
それは解ってる?

理解した上で見てしまったなら、それはそれで仕方のない事だし、私がどうこう意見することも無いよね。

春の夢図書の何巻?
どの項目の夢だった?

私の精神の許容範囲を超えない程度の夢なら、話してほしい。
何ページのやつかな。

暖炉の薪が少なくなったようだね。
春とはいえ、朝晩は冷える日も有る。
特に夜中は真っ暗で、火の灯りが無いと体感温度も低く感じる。
心の方も少しばかりダメージを受けるよね。

きみが見た夢が、暖かく素敵な夢だと良いな。

わたしの夢の話を聞きたいの?
春の夢の話ね。

良いわ。

あまり、真剣に考えないで聞いてね。
所詮、夢の話よ。

わたしは水の無い、とても乾燥した惑星の住人なの。
星のクレーターを寝床にして、朝が来るのをじっと息を潜めて待っている。
右から左、左から右へと、幾千すじもの星が流れては消えていく。

それだけの夢よ。
春の夢図書の3巻目に有るわ。

私は暖炉から程遠い窓際に佇むきみを見ている。
春の夢の話をしたきみの横顔は、月明かりに照らされて、ほの青く浮かび上がる。

ココアを淹れるから、ここに来ないか。

私が誘うと、ふと振り向いて少し微笑んだ。
待っていたかのように。

この季節になると人々が見る夢が増えるから、春の夢図書は、現在一億七千巻を超えた所だという。

未来に期待するわくわくするような冒険の夢。

お腹いっぱい食事をして、何も考えることなく眠りを貪るだけの夢。

時にはこの星から抜け出して、見知らぬ惑星でひっそりと星を見ながら暗闇を過ごす夢。

全ては幸せそうでいて、じつは現実世界に抜け出られなくなる恐ろしい夢なのだ。

ここにおいで。
私と一緒にホットココアを飲みましょう。

さて、本日あなたが見る夢は、春の夢図書の何巻目に収録されるのでしょうか。

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