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巻き込まれてしまった…(第三者行為)

皆様、こんにちは。
現役鉄道員のKです。

ここでは、鉄道員の働く現場の日常はもちろんのこと、鉄道業界を取り巻く様々な問題について取り上げたり、鉄道業界への就職・転職に役立つようなお話も出来たらと思っています。

当面の記事のテーマですが、とりあえず現在勤務している駅業務について色々と語りながら、鉄道業界の現場の一面をお伝えできたらなと思います。
…とまあ、そんなことを考えていたところで、表題の通り、直近の勤務でとある「事件」に巻き込まれましたので、今回はそれについて語っていきたいとおもいます。



・「第三者行為」とは

 第三者行為とは、文字通り第三者から受ける行為のことを指すのですが、我々の業界においては、お客様から受ける様々なトラブルの中でも特に受傷、すなわち怪我などをしてしまう事象のことを指します。
ぶっちゃけて言えば「暴力行為」ですね。
 統計によると、日本の鉄道会社の主要37社局で2022年度に発生した暴力行為は543件となっています。大体毎日1~2件はどこかで暴力行為が起きている計算になりますね。
 この数字を「多い」と思われる方もいるかもしれませんが、これでも長期的に見ると、コロナ禍以降、飲み会などが減少したこともあって、件数で言えば減少傾向にあります。
 とはいえ、昨年から5類に移行したこともあって、飲み会なども再び増えていることから、今後は件数も増加傾向になるのではないでしょうか。
 私たちの仕事は、不特定多数の乗客の皆さんを相手にすることもあって、時に理不尽な目にも合いがちですが、第三者行為に関しては自分の身に直接危険が及ぶという点で、正直個人的には一番避けたい事象でもあります。そんな事象に巻き込まれてしまいましたので、次の項ではその詳細を紹介していきたいと思います。

・【ケース】 終電間際のホームにて…

 今回のケースは、終電間際の時間帯に発生しました。
 私がホーム上で監視業務に就いていた際に、背後で何やら揉めているような声が聞こえたため、後ろを振り返ると、若い男女4人連れのグループと、中年の男性が口論していました。
 とりあえず現場に赴いて事情を確認すると、男女グループがホームを歩いていた際に中年男性が、すれ違いざまにその内の女性の方に体当たりするようにぶつかったため、謝罪を求めたところ口論に発展したとのことでした。
 いずれにせよ、双方の言い分を冷静にお伺いしようとしたところ、中年男性の方が男女グループに突然殴りかかろうとしたため、とっさに間に入ったところ、
【中年男性(男性)】
「おめーはそっち(男女グループ)の肩を持つんか?」

と言われ、突き飛ばされてしまいました。
 
 突き飛ばされた瞬間は、一瞬何が起きたかわからなかったのですが、突き飛ばされたという現実がわかった瞬間に、こちらの頭も「臨戦」モードに切り替わります。

【私】お客様、今手を出されましたね?防犯カメラでも確認できますので、   
   警察を呼ばせていただきます。
【男性】はあ?呼べるもんなら呼んでみろよ!
     (以下、言葉にならない言葉を喚き散らす)
【私】わかりました。じゃあ、呼ばせていただきますね。

 こうして、私は駅事務室に警察をホームに呼んでもらうよう依頼をかけ、警察が来るのを待つことにしたのですが、男女グループに事情を聞いていた隙に中年男性が停車中の列車の中へと消えてしまいました。
 車内を見るとドアの近くに立っていたので、すかさず声を掛けます。

【私】お客様、警察を呼んだので一旦降りていただけますか?
【男性】はあ?俺はこれで帰るんだよ!お前にそんな権利あるのかよ?
【私】ほかのお客様に迷惑をかけていますし、係員に手を出している時点で 
   乗車を認める訳にはいきません!
【男性】お前、うるさいんだよ!何の権利があって俺が降りないといけない
    んだ?駅員の分際で生意気なんだよ!
 
 この時点でもそこそこに「キレていた」私でしたが、この台詞でさらにキレることになります。

【私】(大きめの声で)お客様がこちらの指示に従っていただけないのであ 
    れば、この電車も発車させるわけにはいきません。そうなると他の   
    お客様の迷惑になりますよ?
【男性】はあ?知るかよ!
【私】分かりました。あくまでも降りないということであれば、この電車は 
   発車させられませんし、そうなるとここにいる皆様ここに足止めとい
   うことになりますがよろしいですか?あなた一人の我儘で皆様の時間
   を奪うつもりですか?
(ちなみにこの時点で、車内のお客様は大体が「早く降ろせよ…」という目で私たちのやり取りを見ていました…)

 こうした押し問答をしているうちに警察官が数名到着したので、簡単に事情を話したうえで、警察官を車内に案内したところ、中年男性は警察官の言うことは素直に聞いたようで、ホームに降りました。
 と、同時に丁度列車の発車時刻となったため、すかさず私も車掌に対して発車合図を出し、列車を出発させました。それを見て中年男性は何か喚いていましたが、警察官に制止させられていました。
 その後、現場に駆け付けた上司も同席のもと、警察官に対して、状況の説明を行い、制止した際に突き飛ばされた旨も改めて申告しました。
 警察官の方からは「被害届はどうされますか?」と聞かれましたが、幸いにして怪我もしていなかったことと、諸手続きの煩雑さを考え、被害届は出さない代わりにお客様の精神状況を鑑みて、ご乗車いただくには危険なため、今日の乗車はお断りしたい旨を伝えました。
 その後、中年男性は警察官に連れられホームから姿を消し、私も男女グループにご迷惑をおかけしたことをお詫びして、元の業務へと戻りました。

・駅係員への「暴力行為」に対して思うこと

 今回の件では、私自身幸いにして大きなけがを負うことはありませんでしたし、他のお客様がけがをすることもありませんでしたが、一歩間違えれば大変危険な状況であったといえます。
 私自身、こうした不特定多数のお客様を相手にする中で日々感じるのは、いわゆる「クレーマー」と呼ばれる人達や、暴力行為を働く人たちというのは総じて、我々係員を「見下している」傾向があるということです。見下しているが故に、無茶苦茶な要求を通そうとしたり、時に暴力行為に走るのだろうと私は考えています。
 また別の機会に、いわゆるクレーマー客とのエピソードも書こうと思っていますが、はっきり言わせてもらうとこうした方々は「お客様」ではないと思って我々は対応しています。なので、あくまでも毅然とした対応で「できないことはできない」とはっきり言っています。
 何より、相手によって態度を変えてくるということ自体が私自身侮辱されているようでとてつもなく腹が立ちますし、対応後も心に傷として残ってしまったことも何度もあります。
 この国では「お客様は神様」という言葉が誤った意味合いで流用されてしまっているが故、我々も含めた接客業の方々は日々ご苦労されているかと思います。
 しかし、先日もJR東日本さんがカスハラ対応について、許容できない案件については接客をやめ、警察に通報するという方針を打ち出しました。これは非常に画期的なことであり、今後同業他社でも広がっていく流れだと思います。こうした流れが浸透し、カスハラを受ける者も、する者もいなくなる社会になることを切に願うばかりです。

☆私のページでは、こうした鉄道業界を巡る時事問題や、私の体験談といった鉄道業界の裏事情、さらには鉄道業界を目指す方向けのお話などを順次掲載したいと思っています。
 もし、「こんな話題を聞いてみたい!」というテーマがありましたら、ぜひコメント欄で教えてください!よろしくお願いいたします。

 

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