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穏やかな時間

冷たい雨降りの1日だったが、夫と映画館に出かけた。
目的は「PERFECT DAYS」
以前は近くのシネコンまで車で出掛けていたのだが、
先日、車を手放したので電車で30分程の始めての映画館を訪れた。

上映時間の関係で、ランチを済ませてから家を出たのでは
間に合いそうもないので、簡単なランチを劇場のある複合施設で済ませようと早めに家を出る。あまり時間もないし、寒いので温かいものを・・
と探す。フードコートで長崎ちゃんぽんを注文。リーズナブルな上に、
なんと「麺少なめ」という選択肢があり、いつも外食で食べきれずに罪悪感を拭えなかった私としては、とても良い試みだと好感が持てた。
フードコートは若者の領域と思い、足を踏み入れなかったが
良い経験だった。

淡々と始まった映画は、初めのうちは単調に思えたが、画面が進むうちに
引き込まれていく。
律儀に毎日決まった行動を繰り返す主人公「平山」は無口で何も語らない。
折りに触れて見上げる木々とその木が作り出す木漏れ日に、癒やされ、
彼は優しい微笑みを作り出す。木の根元に芽生えたひこばえを大切に
持ち帰り、他の小さな木の鉢植えと共に毎日の水やりを欠かさない。
そんな毎日の中にも、生活を変化させる出来事はある。

それらの出来事は詳しくは語られないが、周りの人の行動に左右されて
生活の変化を余儀なくされることもある。しかし、柔らかくその変化を受け入れていく。
平山の前半生を想像させる出来事もあるが、詳しくは語られない。
詳しくは語られないところに、今の生活こそ一番大切なのだと、
今を心穏やかに暮らすことこそ大切だと伝わってくる。

そして、彼が車の運転中にかける古いカセットテープから流れる曲が、
音楽に弱い私でもとても気になる。
歌詞はほんの一部しか理解できなかったが、全部理解できたとすれば
この画像をもっと大きく膨らませられただろうと想像するに難くない。

映画が後半に向かうほど、「良い映画だわ〜」としみじみとした
気持ちになれた。

カンヌ映画祭、主演男優賞を受賞したというドイツ監督との合作映画は
役所広司の名演もあって多くある映画とは一線をかくした名画と思うが、
劇場の入りは、ほんのパラパラ、平日、寒い雨降りという悪条件はあったもののちょっと寂しい気持ちになった。




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