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《夜をこめて》嵯峨野小倉山荘色紙和歌k異聞~六十二の歌~

《夜をこめて》原作:清少納言
少納言、わしの指で戯れてみたいやろ、悦楽が欲しくはないのんか?
……欲しい、か。今朝はえらく素直なおなごになりよったな。
いいや、恥ずかしいことあらへん、いじめてもおらん。
それ、これほどに逢坂の関は開いておるやないか、奥の泉の水もあふれておことの前庭はビショビショに濡れぼそっておる。わしの礼物を受け納めてみよ、わしはそなたの香しい秘水を飲み干してやるほどに。

<承前六十一の歌>
おのれの言葉でおのれを縛ってしまった定家はフッとため息をついて
背後に設えていた几帳の内に入った。そして、濡れた衣服を脱ぎ捨てた。几帳越しに式子の視線が感じられた。定家は裸体となった。
「夜をこめて とりの空音は はかるとも よに逢坂の 関はゆるさじ」
「何故、そのようにつれないお言葉を? それにその思いはおなごの為すもの。殿方はその開かずの関を開かせるお力をおもちなのでは、定家様。式子の逢坂の関はほれこのように開いておりまする」
定家はハッとして顔をあげた。
<後続六十三の歌>

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