《黒の舟唄2》嵯峨野小倉山荘色紙和歌異聞~六十の歌~
《黒の舟唄2》原作:小式部内侍
「一緒に死んであげる。」
十八歳の小式部は大きな瞳をクリクリさせた。
おでこを俺の額に押し当てて、「ウリウリ、うれしいやろ?」と言う。
さらさらの長い黒髪からシャンプーの香りがした。
俺、十九歳。仕事はあらへんし、酒びたりのオヤジはDV愛好者。
死にぞこないのばあさんはアルツハイマーでヨイヨイ。
母親は見たことない。
生きててもどないしようもあらへん。
この街過ぎて、あの山こえて、闇夜に船出して、二人で逝こうか。
その先は、わからへんけど……。