最近

資格受験がひと段落し、趣味に全力を注ぐ一週間を過ごしてました。
GWが始まり、予定が多いものの読書や自己学習の時間を作っていきたい。

さて、自由な時間もできたので積読を消化しようと思っていたのだが「ぜひ読んでみて」と勧められた本を購入し先に読んでしまった。
とても良い本だったので紹介したい。

大手居酒屋チェーン「山背」に就職し、張り切っていたはずの健介が、命を絶った。異変に気づけなかった恋人の千秋は自分を責め、悲しみにくれながらも、彼の両親と協力し、健介の名誉を取り戻すべく大企業を相手に闘いを挑む。しかし「山背」側は、証拠隠滅を図ろうとするなど、卑劣極まりない――。小さな人間が闘う姿に胸が熱くなる感動長篇。

あらすじより

村山由佳さんの「風は西から」という本。
読むとすぐにわかるのだが、実在する某飲食店で実際に起きたことをモチーフ(?)にしている作品。読んでいてとても胸が痛み苦しくなって読み進める手を止めそうになった。しかし、これは現実でも起こりうることであり(実際に似たようなことは起きている)自分もこの本の登場人物のどれかになる可能性があると思うと途中で読むことをやめるということはできなかった。

この作品で出てくる遺族はとても強く、お互いに支え合いながら、目的を間違えることなく最後まで進んでいく。周りからの理解や協力もあり、金銭的にとてもひっ迫しているわけではなさそうであった。それのおかげで最終目標をしっかり成し遂げられたといっても過言ではないだろう。
実際、同じようなことを現実でしようとすると多くの問題にぶつかるはずである。それをこの小説の中の遺族のように乗り越えられるのだろうか。
SNSが発達しすぎているこの現代では、どんなにこちらに非がなかったとしても反感を買い、悪意をぶつけられることは少なからずある。そのなかで強く負けることなく戦えるのだろうか。

ありがたいことに私はとても恵まれていて、過労死とは無縁の職場である。残業はほぼなく、趣味のために早退することに理解がありすぎる上司もいる。そんな環境でずっと過ごしている私に「自殺」を選んでしまうほど追い詰められて働く人の辛さを理解することは難しい。実際読んでいてどうしてこんなことになる前に仕事を辞めないんだと何回も思った。主人公は決してダメな人間ではない、どちらかというと優しく情熱的で人望もありきっとどこでも優秀な人材になりうるようなほうだ。なのに、なぜともどかしく思う。しかし、そんな正常な判断ができないほど主人公は狂って、壊れてしまっていたのだ。周りの信頼している人間の言葉すら聞き入れられないくらいに追い詰められていたのだ。苦しい、苦しすぎる。

そんな壊れていく主人公の一番傍にいた恋人の視点で読んでも苦しくなる。
なぜSOSに気づけなかったのか、もっと強く仕事をやめろと伝えなかったのか、なぜあのときあんなことを言ってしまったのか、、、きっと考えたらきりがないのだろう。残された側はいつだってずっと後悔をし続けるのかもしれない。

この本の中で出てくる所謂ブラック企業の「山背」のような企業は現代でもまだあるのかもしれない。自分の周りの人がそういうところに勤めてゆるやかに壊されていっているのかもしれない。
そう考えると怖くて仕方なく、そんな企業に苛立ちを覚える。

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