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自己複製RNAの出現方法がわかって、RNAワールド仮説が有力になってきた


はじめに

生命の起源仮説の1つである、RNAワールド仮説が有力になってきました。
以前から謎だった自己複製するRNAが実験室で自発的に出現したのです。
しかも、そのRNAはわずか20塩基の短いランダム配列のRNA(※)をある条件下に置くと出現したものです。
原始地球の環境でも存在し得るものです。
これは世界で初めての成果であり、生命の起源においてRNAがどのように自己複製する能力を持つようになったかの謎に迫るものです。
この論文執筆者は市橋教授水内良専任講師です。

英国の王立化学会のChemical Science誌
自己複製する最小のRNAを発見

※ ランダム配列のRNA
RNAの塩基はアデニン (A)、ウラシル (U)、グアニン (G)、シトシン (C) です。
原始地球ではこれらがランダムに繋がったRNAがあったと考えられます。

RNAワールド仮説

生命にはDNAと蛋白質が必須であり、互いが互いの合成に関わっています。
どちらが欠けても生命は成り立ちません。
しかし、両方が同時に生まれたとは考えにくいため、DNAが先か蛋白質が先か大きな謎になっていました。
RNAワールド仮説は、RNAが先、即ち自己複製RNAだという説です。
RNAは複製と触媒の両方の機能を持つため、「原始地球の環境下で、自己複製するRNAが進化して生命の起源になった」とするものです。
その自己複製RNAが進化し、原始生命が誕生したと考えられています。
その自己複製RNAがどうやってできたかが大きな課題でした。

プレバイオティック化学反応仮説

原始地球は、高温や放射線、雷などのエネルギー源にさらされていました。
これらのエネルギー源が、RNAの前駆体(リボヌクレオチド)を生成するプレバイオティック化学反応を促進します。
これらのリボヌクレオチドが集まり、ランダムなRNA配列が形成され、その中から自己複製するRNAが選択的に進化したとする仮説です。

鉱物表面での相互作用仮説

RNAは鉱物表面に吸着すると、触媒活性を発揮します。
鉱物表面上でのRNAの相互作用で自己複製RNAが出現し、進化のプロセスが始まったという仮説です。

研究の内容

20塩基の短いランダム配列のRNAをマグネシウムイオン濃度が高い環境に数日間さらすと、長いRNAができることがわかりました。
この長いRNAの中に自己複製RNAがありました。

Chemical Science Issue 28, 2023

この自己複製RNAは20塩基であり、構造は詳しく解明できています。
複製の仕組みは「自身に結合する2つの10塩基のRNAの連結を触媒することで自分と同じRNAを合成する」とわかっています。

Chemical Science Issue 28, 2023

水内研究室では、「生命がどのように誕生したのか?」をこのように説明しています。

早稲田大学 水内良専任講師の研究紹介

(a) 原始的な自己複製分子(RNA)を探究する
(b) 人工細胞 (生命のモデル)を試験管内で作る。
(c) 原始生命モデルを進化させる。

まとめ

原始地球でランダム配列RNAから自己複製RNA出現の条件がわかりました。
しかし、その自己複製RNAは持続的に複製ができません。
これができるようになれば、RNAワールド仮説が更に有力になります。
市橋先生と水内先生の研究を応援しています。


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