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悲しみのカフェ


仲良しの友だちと
新しいカフェへ行くと
奥に大きなコタツの
テーブル席があった
私はそこに座ろうと
言ったのに彼女は
カウンターの席に
サッと座り込んだ

彼女はブレンドを頼み
私は柚子のお茶を頼んだ
柚子茶はとてもぬるくて
すぐに冷めてしまった

カップの底には柚子の皮

久しぶりに会ったのに
彼女は私と話もせずに
マスターと楽しげに
おしゃべりしていた

せめて、幾つかの他の
テーブルにお客さんが
いて欲しかったけれど
私はオープンガラスの
向こうに降りしきる
雨粒をみつめるフリ
しか出来なくて

「もう、帰る」
とだけ、彼女に告げた
「えっ、いま来たばかりなのに?」
と、彼女は不思議そうな顔をした

どうしてこうなったのか、
わからなかった
でも、彼女とは
もう会えないな、
どこかで、そう
思ってしまった

出会ってからの十年なんて、
アッという間に過ぎたね
彼女はお土産にクッキーを
買ってくれて
車で送ってくれたけど
あとからメールが来た
「いいお店を見つけてくれて、ありがとう」

(もうあのお店には行きたくない)
とだけメールした私の返事に
彼女は、
「いつか、また話せる時が来るよ。またね」
と送ってきた

私は夫に、
「コレ、彼女からのおみやげ」
と、さっきのクッキーを渡した
メールの返事は出来ないまま、
明日はきっと大雪になるだろう

飛んでいった🦋は、どこへ?

#詩のようなもの
#友だち
#柚子茶
#また会う日まで  





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