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コーヒー豆ってひとり分何グラムですか、の誤解。

コーヒー豆を買いに来たお客様の質問で、意外と多いのは
「ひとり分って何グラムですか」
というものだ。

この質問の答えはシンプルで、
「それは器具によって違います」
というものだが、これでお客様の知りたいことにすべて答えたことにはならない。

この質問には、一般の人がコーヒーの抽出に対して知らずに抱えている誤解をいくつも内包していて、 その意味では、コーヒーの抽出の根幹に関わる重要な質問であるともいえる。

まず、前提として
「ではひとり分のコーヒーって何ccのことですか」
という質問を返さなくてはならない。
すると、それは使うカップによって違うでしょう?と思われるかもしれない。
まずここに誤解の第一歩がある。

コーヒーの世界で言うひとり分は「130cc」と決まっている。
多くのメーカーのコーヒーサーバーで、杯数の目盛は130ccをベースにしているはずだ。
しかし今どきそんな少量でコーヒーを飲む人は滅多にいないだろう。
だからもし、ひとり分は何グラムですよと答えたとすると、 かなりの方が、130cc分の粉で、200ccから220ccくらいのコーヒーを淹れてしまうことになる。
一度ぜひ自分が普段何ccのカップでコーヒーを飲んでいるのかを調べてみるといいと思う。

さらに、豆売り店でレギュラーコーヒーを買う人の多くがペーパードリップを使っていると思うが、一般的なメリタ・カリタ・KONO・ハリオでは、「ひとり分」のコーヒーを淹れることが出来ない、という事実がある。
ひとり分、という言葉が生み出す誤解がここにもある。

ドリップ式は透過法に分類される抽出法だが、これは「重力」の作用で生じる、お湯が下に向かっていく力を利用して、コーヒー豆の中に焼成された可溶成分をこそげ落として抽出する方法なのである。
したがって、重要なのは湯が通り落ちていく「道の長さ」である。
当然それはフィルタの中に入れた粉の「容積」に比例する。
それがひとり分ではどうにも充分にならないのである。
だから、ペーパードリップを使う際には、必ず「ふたり分(つまり260cc)から」で淹れて欲しい。
大きめのマグカップ1杯分が、ここで言う「ふたり分」なのだからややこしいが。

また、道の長さは容積に比例する、とは言ったが、舟型のメリタ・カリタと円すいのKONO・ハリオではその比例の具合が違う。
また、メリタは最下部に「溜まり」があり、浸漬法の要素を残している。
そのような事情で、メリタは「ひとり分」8gで、カリタは10g、KONO・ハリオは12gと必要量が異なっているのだ。
くれぐれも器具についてきたスクープ(計量スプーンのこと)を使って欲しい。


ただしドリップの場合は、経験上、量が少ない場合には物足りないコーヒーが出来るが、量が多い分には不都合がないようだ。
あんまり粉が多くなれば器具からあふれてしまいいい抽出が出来ないだろうから、加減は必要だが「少し多めに」粉を使うというのは有効なコツだと思う。


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