今流行りの生成AIってどこまでできるの?――Adobe Fireflyを試してみた(2023年9月版)
2023年、生成AIが世の中を席巻
2022年の初冬、世の中に突如として現れ、注目を集めたChatGPT。これは言語モデルと呼ばれる生成AIの1つの形です。その後、多くの企業が生成AIを搭載したさまざまなプロダクトをリリースし、コンテンツ生成へ多大な影響を与えています。
生成AIは、人間が理解できる言葉(自然言語)で指示を出すことで、文章の作成や資料のまとめ、文章翻訳、画像生成などなど、「コンテンツ」と呼ばれるものをコンピュータを通じて生み出すことが可能です。
そこで、本noteのテーマである「デザイン・イラスト」の観点から、最新の生成AIの実力に迫ってみます。対象とするのは、AdobeがリリースしたFireflyです。
※本記事は、中の人(担当:ふ)がお届けします。
Adobe Fireflyとは?
Adobe Fireflyは、さまざまなデザインツールを開発する米国に本社を置くクリエイティブカンパニーAdobeが、2023年3月にリリースした生成AIのプロダクトです。
2023年9月1日時点では、ユーザのテキスト命令に応じた画像生成、画像の塗りつぶし、画像エフェクト、再配色、スケッチを元にした画像生成、3Dからの画像生成という機能が提供されています。
そして、2023年7月には、英語に加えて、日本語をはじめとした多言語対応が行われました。
2023年9月現在、ログイン後に無料でベータ版が使用できますので、本記事では、Adobe Fireflyの昨日の1つ「テキストで画像生成」を試してその実力に迫ります。
Adobe Fireflyを試してみる
まずはイメージしやすい結果を狙ってみる
では、さっそく試してみましょう。まずは世の中にある景色(写実イメージ)を生成させてみます。
Adobe Fireflyでは、入力ボックスに描きたいイメージの説明文を入力します。この説明文のことを「プロンプト」と呼びます。
今回の記事では2つのプロンプトを試してみました。
最初の結果は「渋谷の風景」、2つ目の結果は「冬の富士山」をプロンプトとして入力し、生成されたコンテンツです。いかがですか?
どちらの画像も、パッと見はそれっぽく見えるのではないでしょうか。このように、人間にとってわかりやすく、ある程度イメージがつかみやすいものは良い結果が出やすくなります。
とはいえ、とくに渋谷の風景に関しては細かく見てみると「都会」の風景であって、渋谷ではないことがわかるかと思います。
もっと固有で具体的な事例の場合、Adobe Fireflyはプロンプトをどのように理解し、コンテンツを生成するのか
続いて、以下の生成されたコンテンツをご覧ください。
これは「WBC2023の決勝戦、侍ジャパンが世界一になったシーン」というプロンプトを入力し、生成させたコンテンツです。
余談ですが筆者は野球が好きなので、この結果がどんなものになるのか、それこそ大谷翔平の最後に三振を取って世界一を決めたあのシーンはどう描かれるのか、楽しみに試してみました。
その結果がこれです苦笑
結果から推測できるのは「侍」という言葉のイメージが強すぎて、室町時代や江戸時代に活躍したであろう侍をモチーフとしたコンテンツが生成されたということです。
このように、先ほどの渋谷の富士山の景色の結果とは一転して、想定外、もっと言えば、ユーザが期待していた結果としては失格とも言えるコンテンツが生成されてしまいました。
たった3つのサンプルではありますが、Adobe Fireflyが生成するコンテンツの内容は、本当にさまざまです。
生成したコンテンツはフィードバックや編集でブラッシュアップされる
なお、生成したコンテンツについては、入力部分の横にある「更新」ボタンを押すと、さらにまた違った結果を出力してくれます。
また、Fireflyでは出力された4つの結果にそれぞれに対し、以下のように評価(Good / Bad)、報告、各種編集が行えるようになっております。
評価については、さらに以下のようなアンケートが表示され、今後のFireflyの品質向上に役立てられるようになっています。
実用途で使える?使えない?
以上、非常に簡単に試してみました。
繰り返しになりますが、現在のAdobe Fireflyはまさにベータ版で、それはつまり、生成されるコンテンツもベータ版です。今回紹介した3つの例のうち、最初の2つのようにそこそこ合格と言えるコンテンツが生成される場合もあれば、3つ目のようにまったくの想定外のコンテンツが生成される場合があるのも、2023年9月時点でのAdobe Fireflyの実力です。
ぶっちゃけ、そのままの状態で活用するにはまだまだ障壁がある
結論としては、まだ実用途で使うには色々と障壁がある、というのが筆者の率直な感想です。
ですから、完璧なコンテンツを生成するというよりは、プロトタイプとなるコンテンツを生成しながら、それをユーザ自身が修正したり、その生成コンテンツを参考に新たに作るためのモチーフとして活用するのが、便利な使い方の1つと考えておくのが良いのではないでしょうか。
また、Adobe Fireflyに限らず、執筆時点の生成AIの多くは再現性が弱い(同じプロンプトを入力しても同じ結果が出づらい)というものが多いです。
その点でも、今時点では、前述のようなプロトタイプコンテンツの生成とブラッシュアップ、あるいはユーザ自身の頭の中の整理のツールとして、生成AIを活用するのが良いのではないでしょうか。
※なお、そもそもとしてAdobe Fireflyの学習元データのサンプルに、想定した結果を創発する画像・写真が含まれていない場合、何度調整しても良い結果は生まれません。先ほどの3つ目の例で言えば、「侍ジャパン」をイメージした画像や写真が現段階で含まれていない可能性があります(2023年9月5日15:20追記)。
プロンプトエンジニアリングのスキルを上げることも大事
なお、Adobe Fireflyをたくさん使用すると、Adobe Fireflyのクセを覚えることができます。クセをわかったうえでユーザからAdobe Fireflyにプロンプトを送れば、ユーザ自身が求めているコンテンツの生成をしやすくなっていきます。
このように「プロンプト」スキルのことを、専門的には「プロンプトエンジニアリング」と呼び、Adobe Fireflyをはじめ、生成AIを最大限に活用するために必要なスキルセットとして、今、注目を集めています。
本記事をお読みいただいた方で、Adobe Fireflyや生成AIを有効活用したい方は、プロンプトエンジニアリングのスキルを高める意識を持ってみるのも良いでしょう。
※2023年10月の「Adobe Fireflyを試してみた」はこちら
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