承前)木立のざわめきは波の音となって瞼に映った。炎は消え、そこに歩いているのはぼくの影だ。おうい、おうい。ぼくよ、ぼくの影よ。叫んでも波の音に消される聲と知って心の中で呼びかけた。するとぼくの影はこちらを向き、砂地に映された影とひとつになって、砂の中へ消えてしまった。(了)
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