だいぶ高評価。ストーリー重視のため。
でも「どっちが好き？」と聞かれたらアニメ版。

【良かった点】
・ストーリーの配分がより好みに
原作（アニメ版）を初めて見た（半年前）ときに、陸パートの尺の短さが気になった。
（原作80分のタイムラインざっくり:
27分エリック救助、45分足生える、64分ヴァネッサ登場、75分アースラ撃破、80分エンディング）
エリックとの陸での関わりは45分〜64分の約20分しかなかった。しかもこの中にセバスチャンとシェフ・ルイのパートもある。ほぼほぼKiss the girlしか陸でやっていない。
ここにがっつり手が加わっていた。（純粋に上映時間も伸びた）
やっぱりこれくらいアリエルとエリックに尺を使うべきだよ！！
今回のリトルマーメイドは陸編がとてもしっかりしていて良い。

・エリック王子関連
原作では『王子』というラベルだけの男だったが、思想と背景が付いた。
ざっくりまとめるとアリエルの『陸への憧れ』に対してエリックは『海への憧れ』で、共通しているのは未知への好奇心かな。
加えて『父親-娘』を描くアリエルに対して、『母親-息子』のエリック。
ここら辺の設定が具体的にシナリオを面白くするわけではないが、『アリエル』に対する『エリック』の構図がとっても綺麗になった。

リトルマーメイドは話の大筋がとても綺麗なので、不足していたパートの追加と、不足していたキャラクター設定の追加だけでとてもとても満足している。
ストーリーについては求めていたリトルマーメイドだよこれ！！！

【疑問点】
ストーリーは良し。問題はキャラクター。
大きく2つ。アリエルとセバスチャン。

・アリエル
これ何者だ？

前提として実写アリエルが原作アリエルと異なるのは全く構わない。演者が変われば感情の機微も配分も変わる。ここが変わったところで原作のアリエルに対する悪い影響もない。
なのでハリー・ベイリーが描く新しいアリエルが見たかったが……
このキャラクターがイマイチ掴めない。

なんか中途半端にアリエルに寄せた結果よくわからなくなっている印象。

まず設定年齢がおそらく異なる。原作アリエルは16歳で、年齢相応の幼さと危うさと元気があった。好奇心旺盛で、向こう見ずで、感情豊かで。
今作はもう少し大人びている。
原作ストーリーのメインエンジンだった好奇心による活動性が少し弱い。

ちょっと大人のアリエルを描くのはとても良い挑戦だと思うけれど、物語の原動力となる感情はどこにあったんだ？それこそ『大人のアリエル』がアースラと契約さえしてしまうような。

Part of your world。よくわからなかった。歌は上手いけど、歌が上手いだけで、感情の発現になっているとは思えない。
「Out of the sea. Wish I could be part of that world.」の歌詞が意味を為していない。
じゃあ歌う意味って何さ。抑えきれない感情が溢れないならば歌う必要がないのでは。

Under the sea。なんで歌った？Part of your worldを歌った口でUnder the seaを歌うのマジ？

・セバスチャン
お前、必要か？

原作では視聴者（アリエル）視点では「口うるさいわからずや」の印象が強く、少し「めんどくせぇなこいつ」と思いつつも、海底ではアリエルに振り回され、地上ではシェフ・ルイに追いかけ回される苦労人ポジション。
やがてアリエルに同情し協力していくセバスチャンを原作は丁寧に描いているが……

今作のセバスチャン、役割がよくわからないんだよな。アリエルに振り回されなければ、道化にもならない。それキャラとして不要じゃないか？

音楽家の設定も無くなってるからUnder the seaもKiss the girlも意味がわからん。あれらは音楽家のセバスチャンだからこそ選ぶ精一杯の手段だったろうに。

実写セバスチャンだからこそ持つオリジナルな強さも無いと思った。物語のノイズじゃない？

【個人的に悲しかったところ】
ここは読まなくて良い。
えっと、ジャンプっ子としてはアースラの誓約書が好きだったのね……。
『自らのサインを以て契約と為す』
『代償を以て願いを叶える』
『履行された契約は力を持つ』
『その契約は王の力ですら破棄できない』
という能力バトルオタク垂涎のファンタジック異能オブジェクトが『アースラの契約書』なのね。
『契約書』という実体を持っているのが大事なの！！！
無くなってて悲しかった。

【その他】
アースラへのとどめをアリエルが刺すのは現代的だなって思いました。
トリトンのことを考えたらエリックが刺した方が良いのでリトルマーメイドを大事にするなら駄目だと思うけれど、本作はそういう作品じゃないことを踏まえたら多分アリエルが刺すのが正解。悪手かもしれないけれどプレイングに一貫性があるのは良い。