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その1秒をけずりだせ

今回の東京オリンピックでは、男子の競歩と男子長距離種目で、東洋大学出身者が代表選手のなかでかなりの割合を占めていました。20km競歩の池田選手、50km競歩の川野選手、10000mの相澤選手、マラソンの服部選手です。

この事実からわかるように、東洋大学は男子長距離種目と競歩で非常にすばらしい育成を行えていると言えます。(ちなみに東洋大学は男子の短距離種目でも4×100mリレー代表の桐生選手を輩出しています)

そんな東洋大学の長距離部門の監督が、酒井俊幸監督です。競歩部門は、酒井監督の奥様が指導しているようです。

そんな酒井監督ですが、監督自身も東洋大学陸上部出身で、卒業後は名門実業団であるコニカミノルタに所属していました。酒井監督はコニカミノルタのニューイヤー駅伝初優勝時のメンバーでもあります。ちなみにその時私は中学生で、テレビにかじりついて観ていました。

コニカミノルタ退社後は、母校である学校法人石川高校の教員として、陸上部の監督を務められました。この高校教諭の頃の経験が、酒井監督の指導スタイルの基礎を作ったのだと思います。競技者として一流であることはもちろん、一高校生として学校生活も正しく送り、陸上だけになってしまわないよう、バランスのとれた指導を心がけていたとのことです。また、部での遠征のために、マイクロバスを運転できるよう中型免許を取得されたり、まさに指導者として大忙しの日々を送られていたとのことです。

ちなみにこの高校教諭時代に、後に山の神と言われ箱根駅伝で大活躍することになる柏原竜二選手に目をつけていたようです。

そんな酒井監督が、前任の川嶋監督の退任に伴い、新監督として東洋大学陸上部長距離部門の監督に着任しました。

酒井監督は、高校の指導をしていたときと同様に、競技も大事だが、同じように日常生活、学業も重視した指導を行いました。将来に役に立つ資格の取得(教員免許等)を推進し、駅伝前の合宿期間等は除き、講義のスケジュールを優先した練習を行っていました。

前任の川嶋監督が作られた基礎があってこそではありますが、酒井監督は就任一年目から箱根駅伝総合優勝という素晴らしい成績を残し、その後も安定して学生3大駅伝で上位の成績を残し続けています。

また、学生時代の成績だけでなく、今回のようにオリンピック代表を多数輩出しているように、卒業後に出身選手たちは素晴らしい成績を残しています。

酒井監督が就任3年目にチームは箱根駅伝の優勝を逃してしまいます。その差は200km以上の道のりを戦いながらわずか21秒差でした。その翌年度、酒井監督はチームのスローガンに「その1秒をけずりだせ」という言葉を掲げました。前年の箱根駅伝で、一人1秒をけずれていれば、優勝できたその悔しい気持ちを大切に、1秒を大切にする走りをしようということです。その年東洋大学は見事箱根駅伝総合優勝を奪回しました。

大学の指導だけでなく、高校での指導経験もあることから、年代ごとの選手の育成についても深い造詣があるのだと思います。

今年東洋大学には、高校時代に5000mでとんでもない高校記録を樹立した石田洸介選手が入学しました。年代に合わせた的確な指導のできる酒井監督ならきっと石田選手も素晴らしい選手になれると思います。

今後も東洋大学から世界に羽ばたく選手が輩出され続けることを切に願います。

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