自尊心が注がれたコップは飲み干す前に注ぎ足すくらいの気持ちでいたい|読書記録「バカと無知」

こんにちは、夜枕ギリーです。

久々の読書レポ。橘怜さんの「バカと無知」という本を読みました。誰しもが薄っすらそうだと思ってはいるけど、なかなか表立っては言えないようなことをバンバン言葉にして、その根拠となる事実やそこからの推論を展開した、うっかり素手で触ると怪我をしてしまいそうな内容です。

この方は「言ってはいけない」という、暗黙の了解で言ってはいけないことになっている人種や性差、遺伝、知能、美醜などにまつわる不都合で不愉快な現実を科学的な知見から解き明かす、といった内容の本も出されています。「バカと無知」は、その中で特にタイトル通りの対象にフォーカスした感じですね。

とりわけ近年のインターネットにおける炎上やキャンセルカルチャー、それを執行するための「正義」が生まれる理由なんかにはがっつり触れていて、インターネットスラムを生き抜く我々にとっては知識としてその構造を知っておくだけでも身を守る助けになるんじゃないかなぁと思いました。

みんな大好きな認知バイアスについても多く取り上げられています。現代では不合理だと思われるようなバイアス(※)がなぜ生じるのかといった理由を、人類の歴史から紐解いていたりとなかなか面白いです。150人程度の群れで暮らしていた時代では生存のために合理的だった判断が、全世界と繋がり匿名でも発信できる現代にも引き継がれておかしなことになっているとか。

(※例えば小さな子どもは「自分の貰えるお菓子が2個、相手が3個」より「自分が1個、相手が0個」を選ぶといった、経済的な合理性より相対的有利を選ぶ実験など)


個人的に刺さったテーマだと、「自尊心を伸ばしても学業やキャリアにポジティブな効果は無い」というもの。自尊心の高さと学業の成績には明確な相関性があるので、褒めて自尊心を伸ばせば成績が上がるだろうという仮説が支持された時期があったけど、実験によると実際は「恵まれた環境で生まれ育った子どもは学校で上手くいくので自尊心が高くなる」という因果が逆だったというオチ。いわゆるワインを飲めば健康になるのではなく、ワインを飲む家庭は健康に投資できる余裕があるみたいな話。

さらに厳しい実験があって、成績の悪かった学生を対象に、試験前の勉強期間中に教授から「君ならできる」と褒めたグループと何もしなかったグループに分けて試験を受けさせるというもの。すると褒めたグループは成績を落としたそうです。自尊心の高まりは報酬なので、先に報酬を受けると頑張らなくなるのだとかなんとか。褒めて(誉められて)伸ばす教の信者である私にとってはなかなか耳が痛い結果。

ただまあVTuberの自分の体験として、思い当たる節が無いとは言えない。
過去動画が回ってる(報酬がある)ときはあんまり新作出す意欲は湧いてこないけど、止まっていると報酬を求めてそろそろ頑張るか~みたいな気持ちになる。

ところでVTuber界隈には、本の内容が真実だとするとあまり良いこととは言えなさそうな「褒め要求」のムーブが根付いてると思います。

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